クスノキの番人
東野圭吾 2020年
・あらすじ
・感想
6月ぐらいから興味はあるものの、なかなか手を出さなかった『クスノキの番人』。時間が空いたのでついに買って読めました。
番人ということで、師匠と弟子のような描かれ方で、若い男、「玲斗」とその伯母が描かれていました。ファンタジーチックな内容かと思っていたのですが、少し異なりました。そういった面もありましたが、それと対比される形で現実的な日本の社会の様子が描かれていました。
番人としての描写は誰かの悩みを解決するために、クスノキにある不思議な力を使っていくという話でした。ただこれだけでは、生活ができないのかある企業に勤めていて、そのうちの伯母はかなり地位的にトップに近い人であるということが分かります。
今まで様々な事業を手掛けてきたようで、グループの基盤を作ったと言ってもよい重要な人物という位置づけでしたが、今の経営陣との相性が悪く、徐々に対立してクーデターに。伯母は引きずりおろされる可能性が出てきました。ただのクスノキの番人を任されているだけのろくでなしが、クスノキを使って伯母を助けたということに最終的になります。これには心温まります。
ファンタジーなちょっと不思議な面と現実的な日本社会。一見この二つは関係ないことのようでどのようにしたら近づくのか、ぱっと想像がつかないことでした。しかし、今回の作品はそういったことを見事に織り交ぜられて書かれているという印象でした。東野さんの作品は他にも読んだことがありますが、「こういったファンタジー的要素のある作品もあるのだなぁ」ととても面白かったです。今までにない新しい作風とも感じました。
ただド直球にファンタジー的な作品を描くのではなく、そこに現代社会の現実を描くことで、ファンタジー的な要素がより一層際立っているといった印象でした。その絶妙さは東野さんならではのものだと思います。これを考えるのも相当に苦労されたのではないかと読後に感じたところです。
去年文庫化されて、1000円足らずで買うことができます。特に日ごろのストレスで疲れている方にはそれなりに共感できる点が多いとも感じます。是非読んでみてくださいね。