『傲慢と善良』が映画化されました。
さぶかるの森 第4号 2024年10月30日
・はじめに
辻村深月さんの恋愛小説『傲慢と善良』
皆さんも一度は聞いたことがある作品なのではないでしょうか。
このアカウントでは2年前の10月に紹介しました。読んだ当時、すごく深く切ない作品だと思ったのを覚えています。
そんな『傲慢と善良』は刊行から5年の時を経て、先月27日に映画化されました。ずっと前から映画化されてほしい作品だと思っていたので、とても楽しみにしておりました。
・この作品について
婚活で躓き、婚期を逃しかけていた「西澤架」はマッチングアプリを通して、「坂庭真実」という女性と出会う。二人は落ち合い、幸せそうで順風満帆な日々を共にするが…。ある日突然、真実がいなくなった。架は行方を追うために彼女の過去に迫る。
・感想
あらすじを読んでいただけると分かるのですが、この作品最初のところだけだと、ごく普通の幸せそうな恋人の関係に見えるかと思います。文句なしの順風満帆な間柄というか、すごいお互いを信頼し合って、愛し合っているように見えるのです。でも、失踪してしまうんです。そこには思わぬ落とし穴がありました。
ことの発端は架が真実を「70%愛してる」といったところから始まります。その時、本人はいなくて、職場の同僚とこの話をしていたようですが…。この発言、私はどこがどう悪いのか最初は分かりませんでした。「100%愛してる」だと嘘っぽく聞こえてしまうし、だからと言って低いパーセンテージを言っても、それはそれでひどい。だからこれが妥当な気がしていました。
でも、中途半端でよくわからない状態になっていることが、進むにつれて分かりました。そこに逃げというか、都合の良さが感じられてきたんです。自分は何の悪気もなく、ただ点数を付けただけ。でも相手側に立ってみたときに、「そんなものか、それしか愛してなかったんだ」と絶望的になるのは当たり前のことなのだと。やみくもに、人に点数や良し悪しを決めて付けてしまうのは良くないことだと分かりました。
傲慢なのはもちろん悪いイメージがあります。プライドが高い、マウントを取っているなど、形は様々ですが、好まれないことに変わりないですよね。でも、善良さも場合によっては好まれないというのは意外でした。確かにやりすぎると「余計なお世話だ」と思われることも多かったりしますよね。別に悪気はないけど、相手から見たらすごく受け入れがたいことだったり。「良かれと思って」がすべてにおいて通じるわけではないということを感じました。
映画を観て思ったこととして、3つあります。
まず、傲慢で善良なのは架だけじゃないということです。真実の繊細さと必死さが際立っていました。これは原作ではあまり分からなかったところです。作中のあれこれを見ていると、認めてもらうためにあそこまでのことをしたということで、そこがすごく面白かったです。こうしてみると、巧妙な駆け引きといった感じでしたね。まさに傲慢さそのものといった感じです。
次に、真実の失踪先が全然違う場所になっていたというところです。最初全く分かりませんでしたが、何かが違うような気もしていました。原作は仙台なのに対し、映画だと佐賀になっていました。随分変わったなぁと思いました。ちなみに原作だと、別作品に登場する主人公も出てきて、えーっここでつながってるのー!みたいになって面白かったです。
後は、役者さんの方々の演技と、この作品のマッチングが絶妙だったということです。といってしまうと、ありきたりなことを言ってしまっているかもしれませんが。二人の優柔不断さとすれ違いの連続を描いた作品ですので、一人で何度も悩んだり、藻がいたり、泣いたり、怒ったり。こういうことの繰り返しでした。波が激しいなあとも思いましたね。例えば、架は彼女のインスタを何度も見たり、電話したり、一方の真実はボランティア中はすごい楽しそうなのに、架からメールとかが来たりすると途端に重くなったりとか。原作でも十分伝わるように感じますが、映画だとそれがより明確に分かりますね。
傲慢さと善良さ。意識していないだけで誰もが持っているものなのかなと感じました。「人に認めてもらいたいから、こうしよう。でも、これは嫌だ」情けないことに、私だってそんな側面があるように感じます。自分が都合のいいように片付けようとする。もうこれは人間の本質なのかもしれないですね。難しいことかもしれないですが、そこを気を付けていけたらまた見え方が変わったりするのかなと思ったりしました。
今回は映画『傲慢と善良』を観に行ってみたということで、お話しさせていただきました。この作品とても人気みたいで、一回チケット取ろうとしたら完売していました。何とか頑張って取ることはできたので良かったですが。劇場によって状況も違うかと思いますが、見たい方はお早めに!
・ご案内
映画『傲慢と善良』は2024年9月27日から全国で公開中!
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