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元彼の遺言状

新川帆立 2021年

・あらすじ

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と三ヶ月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家主催の「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を獲得すべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走するが――

・感想

前々からSNSで紹介している方が多くて気になっていました。先日図書館に行ったときに、ちょうどこれがあったので、せっかくなので読んでみることにしました。今回初めて知ったのですが、2021年に「このミステリーがすごい!大賞」で大賞を受賞した作品とのことです。

元彼が奇妙な死に方をしました。話によればインフルエンザが原因なのではないか、誰かに意図的に移されて殺されたのではないかというような、話が有力視されていましたが、調べていくうちにそうでもないということが分かってきたようです。

読後感はとてもドロドロとした印象のある作品でした。インフルエンザで死ぬということは医療が発達した現代においても残念ながら起こりうることです。しかし、ただ誰かに移されたのではなく、何かしらで彼に恨みがあった人に、インフルを移されて殺されたということだったので、とても奥が深いなあと感じました。普通に誰かを殺したとしたら、殺人の容疑で逮捕されますので、そういったところで自然な流れになるようにしたというところにも、犯人の計算高さが伺えるところです。

しかし、前者の説は調査が進むにつれて違うのではないかと言われ始めます。どうやら、ある製薬会社が開発した新薬が原因なのではないかと言われ始めます。その裏には経営が一時期行き詰っていた製薬会社の経営陣の思惑もあるように私には感じられ、これはこれで奥が深いなと思いました。

人間の汚さというところを静謐に描いている作品といえます。人は自分がしたいと思うことがあれば、何でもありになってしまうというところがあるように私も感じます。そのためには、「他人はどうでも良い」みたいなところもあるように感じます。こういったところの哀れさを描いているように感じて、また新しい側面から人の本質を見ることができたのではないかと感じます。

・書籍情報

元彼の遺言状 新川帆立
初版刊行:2021年1月22日
刊行元:宝島社
定価:1,540円(税込)
ページ数:336p
ISBN978-4-299-01236-4

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