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美しい距離
山崎ナオコーラ 2016年
・あらすじ
死ぬなら、がんがいいな。芥川賞候補作
芥川賞候補作
島清恋愛文学賞受賞作
死ぬなら、がんがいいな。
がん大国日本で、医者との付き合い方を考える病院小説!
ある日、サンドウィッチ屋を営む妻が末期がんと診断された。
夫は仕事をしながら、看護のために病院へ通い詰めている。
病室を訪れるのは、妻の両親、仕事仲間、医療従事者たち。
医者が用意した人生ではなく、妻自身の人生をまっとうしてほしい――
がん患者が最期まで社会人でいられるのかを問う、新しい病院小説。
解説・豊﨑由美
・感想
ちょっと重い感じの小説を選びました。しかし、人生を考えるうえでとても重要なことのようにも感じます。
ある夫婦はそれまで幸せに暮らしていました。しかし、奥さんの方が、ある時がんに侵されてしまいます。発見時点でもう手の施しようがない状態でした。延命治療を施しながら、何とか生き延びさせようと医者たちは考えていたようですが、それには応じず日に日に、衰弱していくばかりでした。延命をすることが、必ずしも正しいというわけではないということをこの作品は伝えているように感じました。
自分の人生は自分が主人公であり、決定権も本来なら自分自身にあるはずです。こういった状況下では、医療の力を借りて、仮の姿で生き延びようとすることもできますが、苦痛続きだったりして大変だと聞いたことがあります。
「医療に頼らずに自然な形で最期を迎える」そんな自分の首を絞めるようなことをするのはありえないような感じもしますが、無理することもないというのも一つの生き方のように感じます。もう助からないことが、あらかじめわかっている状態で、意味のない延命をしたところで結果は変わらないのです。それなら、一層のこと終わりにしてしまった方が早いというのも納得がいく気がします。
もちろん、元気に暮らせている間は、もらった命を大切にしたいです。健康であること以外に素晴らしいことはないと思います。もらった命を大切にして、自分らしく生きていくということが必要でしょう。今の健康に暮らせている状態が当たり前と思わないこと、そして、思わぬ形で最期を迎える人がいることを忘れずに、これからも生きていきたいと思います。
・書籍情報
初版刊行:2016年7月10日
刊行元:文藝春秋
定価:1,485円(税込)
ページ数:168p
ISBN978-4-16-390481-8
備考
〈初出〉
「文學界」
2016年3月号