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ツミデミック

一穂ミチ 2023年

・あらすじ

第171回直木賞受賞作(2024年7月)

大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中に話しかけてきた女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は――「違う羽の鳥」
調理師の職を失った恭一は、家に籠もりがち。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣に住む老人からもらったという。翌日、恭一は得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れると――「特別縁故者」
渦中の人間の有様を描き取った、心震える全6話。

ツミデミック 一穂ミチ | フィクション、文芸 | 光文社 2024年8月8日閲覧

・感想

コロナ禍を描いた作品でした。とはいっても、一括りにできるような内容ではありません。感染症本体はもちろん、コロナが巻き起こした弊害とそれに伴う人々が感じる圧迫感や閉塞感についてもしっかりと描かれておりました。

失業して転職したり、これからどう生きていこうかと悩んでいる姿、借金をそこから借りて何とかしようと試みるものの、返せないうちにどんどん膨れ上がっていき、働き詰めた結果入院することになってしまった。娘が同級生と関係を持った結果、妊娠してしまった。自殺を考える者の話など、本当に現代のリアルな日本の姿といった感じでした。

実際に、コロナ禍を境に生活困窮者が増えたことや、メンタル的な問題を抱えている人が、増えたと聞いたことがあります。こういったところを、普段生きている私たちの視点から描きつつも、客観的に綴っているように感じます。

誰かと話している時、「社会の汚さ」ということがよく話題に上がりますよね。私はコロナ禍以前よりも、社会は汚くなってしまったのではないかと感じます。日々生きている中で、そう感じることが増えたように思います。不必要に誰かを蔑んだり、逆に蔑む側に回ってしまったり、自分が勝手に作ったイメージで、特定の誰かを見下したり、否定したり。コロナ禍を経て、そういった風潮が世の中全体に広がっているのではないかと感じるところです。だからと言って、私が変えられる問題ではないけれども、誰かと会ったとき、そういった否定的な態度は少なくとも取りたくないなと思うばかりです。

この作品が直木賞に選ばる理由も何となくわかった気がします。現代の汚いところを鮮明に描いているからだと、読みながら感じました。

・書籍情報

初版刊行:2023年11月30日
刊行元:光文社
定価:1870円(税込)
ページ数:276p
ISBN 978-4-334-10139-8

備考
違う羽の鳥:「小説宝石」2021年11月号
ロマンス☆:「小説宝石」2022年4月号
憐光   :「小説宝石」2022年10月号
特別縁故者:「小説宝石」2023年3月号
祝福の歌 :「小説宝石」2023年5・6月号
さざなみドライブ:「小説宝石」2023年7月号


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