サンショウウオの四十九日
朝比奈秋 2024年
・あらすじ
・感想
7月に発表された、今年上半期の芥川賞の作品です。ようやくお金に余裕が出てきて、8月の初めごろに購入しました。
一つの体を有しながら二つの人格を持つ人のお話で、普通の人のように生きれない苦しみや、葛藤が描かれていました。そこは去年上半期の芥川賞『ハンチバック』に大きく似ているように感じました。
人並みの生活が送れない。人と違う状態だからこそ、周りと同じような生き方をしたいと葛藤する姿は本当に苦しさそのもので、読み手である私にもよく伝わってくるものでした。本人たちにとって、周りと同じになりたいという考えは、叶えることのできない高みであり、どうしようもないことです。しかし、何とかしたい、何とかして人並みの生活、生き方をしたいというところに、もどかしさを感じました。
特殊な体ゆえに、どっちかが調子を悪くしたときに片方も死んだような感覚になる。中途半端に分かれている体に人と同じことができないなど、本当に可哀そうに思うところがいくつもありました。
この作品が芥川賞に選ばれた理由として、人への配慮がまだまだ欠けている社会への訴えかけなのではないかと考えております。障がい者や、病気を患う人に対して、配慮しましょうという世の中の動きは、昔以上に強まっていると思います。しかし、まだまだ配慮に欠けたような態度や発言はあるように体感的に見て感じます。普通でない状態に置かれた人を陰で悪口をいうことや、その人を前にしたときの態度など、まだ不完全なところが多いとも感じます。私を含めて、人はそういったことを自覚せずに発言したり、行動したりしているように感じます。私も他人ごとではないように感じておりますので、気を付けていきたいと思うところです。