【仕様大解剖】キノコ伝説に300万円課金したゲーム&マーケ会社の社長が教える、キノコ伝説ヒットの理由
株式会社ワンエーカーの折茂です。
弊社では今自社でオリジナルのソシャゲを開発しているのですが、
ゲームをこの令和の時代にヒットさせるに当たって外せないタイトルが、「キノコ伝説」かなと。台湾のゲーム会社からリリースされているゲームで、
といった爆発的なヒットをかましたタイトルになっています。
今後、オリジナルでゲームを開発していくに当たってヒットを生み出していくにはこの「キノコ伝説」のラーニングは欠かせないだろうと思いゲームを始めました。
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注意:かなり詳細までガチで深ぼったnoteになるので1万文字近くあります。5〜10分くらい時間があるお手隙の時にお読みください。
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結論から言うと
『ゲーム内外含めてかなりヒットの要素で溢れているな』
と感じました。
私自身もこの「キノコ伝説」に300万円以上(400万近いかも)課金をしてリサーチし、並大抵の強さではなくなっているので、マーケ屋さんのキノコ伝説雑まとめ、ではなく
・トップユーザとして、
・そしてゲーム/広告代理店の会社の社長として、
・そしてクリエイターとして
のさまざまな目線からのヒットの秘訣を皆さんにお届けしていこうと思います。
キノコ伝説の戦闘力は今68000Kちょい、超域順位戦は百錬王者です(わかる人にはわかる結構やり込んでる感)
このnoteを読んで、折茂に興味を持っていただいた人はこちらもどうぞ。
【はじめに】 なんでキノコ伝説がすごいのか
あたり前で恐縮ですが、エンタメの基本として、やはり作って広げて稼ぐ と言うのがあると思います。
キノコ伝説はこの『作る』『広げる』『稼ぐ』がかなり妙だなと思っており、それがヒットの要因につながっていると思います。本noteでは、それを
<⑴ゲーム外施策>
『広げる(トラフィック)』
→ゲーム外の施策、マーケハック
<⑵ゲーム内施策>
『稼ぐ(マネタイズ)』
『作る(コミュニティ)』
→ゲーム内に留めるシステムやゲーム内のマネタイズモデル
+⑶おまけ
で住み分けして「キノコ伝説ヒットの理由」として分解、解説していこうと思います。
また、広げて稼ぐの間にはユーザを引き止めるという過程が入ると思うのですが、こういった中華系のゲームはかなりマーケハックされており、
プロトタイプ版で1Day RR(リテンションレート) 50%クリアしないとスクラップアンドビルドするという通説があるくらいRRへの施策が強いです。ここら辺のHowもおまけなどでも解説していきます。
キノコ伝説徹底解説⑴ゲーム外の話
・キノコ伝説徹底解説⑴-1 コミュニケーションを生ませる仕様がすごい
最近はMMO、ソシャゲの中でもヒットする作品がコミュニケーションに回帰していると感じます。
理由は簡単で、
結局のところ人間の課金欲求は「ガチャを回したいから」ではなく、
「コレクションをしたいから」、ひいては「それを誰かに見せたいから」
と言うところに欲求が帰着しているからかなと思っています。
これを僕たちは「英雄感」と読んでいますが、
現実世界だと味わえない英雄的感覚を
・ギルド VS ギルドの試合でエース的な活躍をし讃えられる
・みんなが手に入れられないものを手に入れられる、身につけられる
みたいなことが数万円で簡単に手に入れられてしまう(現実でこの体験を味わうにはもっと努力したり、何かを成し遂げたり...みたいな労力が必要になる)のがソシャゲの課金の妙であり英雄感だと思っています。
私がキノコ伝説のギルドマスター(キノコ伝説内では族長と読んでいます)になってみて面白いなと思ったのは、
みたいな会話が頻繁に行われており、「コミュニティ」的な価値が「ARPPU(有料ユーザー1人あたりの平均収益」やLTVにつながっているなと思っています。(むしろつながっているどころの騒ぎではない)
ただし、これは今に始まったことではなく、
私が中学生の時に泣けなしの1万円を握りしめてドリランド(GREEさんから出ていたガラケー時代の伝説のソシャゲ)のガチャを回しに行った時から存在する概念ではあると思っています。
いろいろなAAA(トリプルエー)タイトルや、いろんなゲーム性のゲームをあっちこっち行ってファッションのように行き着いた2週目の解なものではないかなと。(コミュニティ is 強い)
ただ、なぜなのか?(なぜコミュニケーション、コミュニティが生まれるのか?)
それは仕様の積み木の積み上げ方の違いにあるなと思っています。
キノ伝は、面白いインゲーム(ひっぱりハンティング!のようなおもしろ仕様) からゲームを作ってソーシャルを足すっていう発想ではなく、
ソーシャルさせるためにどんなゲームを作るかという発想でゲーム作りしているみたいなところをひしひしと各仕様から感じます。
キノコ伝説のディベロッパーがどこまで考えてあの仕様にしたのかは謎に包まれていますが、
特に放置ゲーとソーシャルの相性がかなりいいなというのも合わせて感じました。
待ち時間が多くて, ログインしてやることない時間にソーシャルしちゃう感覚。
これは自分がキノコ伝説をプレイしている一ユーザとしてもかなり感じている感覚です。
また、コミュニケーションが生まれる前提でPvPやSvS,GvGの仕様を組んでいるのでかなりコミュニケーション(チャット欄)が盛り上がります。
特に、ゲーム性に比べてチャットだと少し物足りないと感じるくらいの仕様になっており、コミュニケーションがとりたくなるので、
勝手に各ギルドのDiscordが立ち上がり、ゲームをプレイしているのも驚きました。(ギルドで飲み会とかしててまじかと思いました。)
▼コミュニケーションがとりたくなる仕様の例
①福袋
定期的に、ワールド(サーバー内全て)や同ギルド内に配れる福袋が配れる。
福袋を不特定多数の人に配ることができることによってチャットが活性化する。
②競技場/超越競技場 (PvP)
1週間ごとに同じサーバ内の人と順位を競うレート戦。同じサーバの人たちとの戦いに空き始めたタイミングで、クロスサーバーのPvPが始まる。
③菌族乱闘(GvG)
ギルドVsギルドのGvG戦。みんながチャットに集まり、イケイケ!みたいに応援する様子が見られる。
最初は同じサーバ内のGvGから始まるが、こちらも飽きてきた頃にクロスサーバのGvGが始まる。
④超越(本鯖)駐騎場(SvS)
最初はサーバ内の人たちと自分の乗り物を駐車するいわゆる駐車場の車上荒らしをし合うというPvP。最初は狭い駐車場をサーバ内で取り合うが、こちらも飽きてきた頃に今までGvGしてきた人たちも含めて、サーバー対抗でSvSでのバトル/交流が始まる。
・キノコ伝説徹底解説⑴-2 広げるパワーがすごい
流行しているものが流行するという世の中では、面白いものを出すこと以上に流行させるということが大事。ということはキノコ伝説のヒットの背景含め、今の令和時代のゲーム作りに対するキーワードかなと思っています。
キノコ伝説といえば広告!というイメージが強いと思います。TwitterやYouTube, TikTokなどを中心に大量のキノコ伝説の広告を目の当たりにした人もいるのではないでしょうか。
近年、台湾系列のゲームで日本でヒットしているアプリゲームの共通点として、リリースする前〜リリースする日までのめっちゃマーケ頑張る!というのがあると思います。
私は個人的に、おもしろ「そう」なエンタメで大量に溢れる世の中で、流行しているものが流行するという定説がより進行しつつあるなと思ってます。
ものづくり屋さんとしては悔しい話ですが、
=============
①開発費3億、めちゃめちゃインゲームやアウトゲームが面白くてマーケ予算1000万円のゲーム
と
②開発費1000万、クオリティ低いけど、なんかやっちゃうゲームでマーケ予算3億のゲーム
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だったら後者②が当たるイメージありますよね...極端ですが。
でもそういったスケールのすこし違う話が世の中で起きてるなあと感じます。
マーケ予算の分配の中でも、特に直近で出ているキノコ伝説やタマモンワールドがマーケ予算をローンチ前〜事前登録期間に寄せているのは一番この流行感を産むための「地熱温めマーケティング」をしやすいからかなと思っています。
結果的に同じ10万アクティブユーザでも、1万人×10ヶ月と、10万人初速だったら後者の方が流行しているように見える= 広告のCPIも下がり自然とオーガニックも増えるイメージが湧くかなと。
とはいえ、ただ事前登録期間に大量出稿しててスゲーという話ではなく、
この地熱を温める期間での施策の手数と、絶対にどんな手を使ってでも話題化するぞという覇気がスゲーというのもポイントかなと思います。
▼絶対にどんな手を使ってでも話題化するぞという覇気がスゲーの例
①全ゲームのセグメントにとりあえず事前登録させる
3D,2D、ローグライク、RPG風、原神風など、ある種 嘘に近い色々なゲームの広告を出してユーザを事前登録期間に獲得。まずはインストールさせる。
中華ゲーあるあるの「なんやこれw」とコメントさせたら勝ちな謎MV
②炎上してくれたら1impでしょ?みたいな考え
③乳見せマーケティング
④無料XX連インフレ
うちから出す次のゲームは、5000連かな….ww
キノコ伝説徹底解説⑵ ゲーム内の話
上記で、いかにキノコ伝説が広告の妙とコミュニティの妙でトラフィックとRRを担保したかみたいな話をさせていただきましたが、
キノコ伝説、私も本当にリサーチで300万を使ったかというと、半分本当ですが半分ホンマに楽しんでます。めちゃめちゃ面白いです。
とはいえ、分析ノートなので、キノコ伝説になぜ人は湯水のごとく課金してしまうのかを分析しました。
ズバリキーワードは『脳汁』、『競争感』そして『無駄にならない』です。
キノコ伝説、ゲーム性はまあ普通です。放置ゲー。
逆にいうと普通に面白くてゲーム性に関してはマイナスがあまりない。のはシンプルにポイントです。
一方で、課金に直結するポイントとしての
『脳汁』、『競争感』、『無駄にならない』はかなり妙だなと思います。
・キノコ伝説徹底解説⑵-1 脳汁ぶしゃぶしゃ仕様
TikTokのおすすめ欄をスワイプしている時と、キノコ伝説に課金している時は感覚が近いです。
基本的に他のソシャゲと一緒で受動的にあらゆるイベントをこなしていくんですが、ゲームをプレイしている全員に対していろいろな昨日やイベントが順次解放されていくわけではなく、サーバーごとに1日目、2日目....のようにイベントが開放されていきます。
基本的に毎日新しいものに触れるので、味の濃いラーメンを毎日食べられるみたいな体験が1ヶ月ほど続きます。
※この情報量の多さに胃もたれしてしまうライトゲーマー層も多いのではないかなと思います。結果的に結構他のソシャゲをやってた人や、準ゲーマー層などがプレイヤーには多いイメージです。そういう人は抜ける前提でなおRRが良いのだろうなーと。
キノコ伝説のマーケハック的な作り方を考えると、1DayRR(リテンションレート), 7Day RR, 30DayRRを追い求めた結果この仕様になったんじゃないかなと考察しています。
このどんどん味の濃いものが出てきて、美味しい!うめえ!みたいな仕様を私は脳汁ぶしゃぶしゃ仕様と呼んでいますがRRには繋がってるなという確信があります。
また、最近ではソシャゲでもハイブリット型(フリーミアムベースで広告と課金モデルを組み合わせたマネタイズ手法)が主流になってきていますが、
キノコ伝説もハイブリット型を踏襲しつつ、ハイパーカジュアルゲームのNoAdsみたいな手法がとられています。
それまで、もう一回だけガチャを引くために!もう少しだけ強化するために!みたいなところで広告を見ていたのが、1600円でもう一生見なくていいですよ!広告なしですぐ脳汁をお届け!みたいなメニューがちょーどいいタイミングで出てきます。(これの課金欲求すごい)
他にも、Day1〜2のところで、ちょっと壁がきたところに、今まで持っていた10倍以上の強さの武器を160円で買わせたり、
もはやアイテムを買っているのではなく僕は脳汁を買っているのでは?と勘違いするほどでした。この少しの課金が重課金への入り口になっています。(ゲートウェイドラッグ)
・キノコ伝説徹底解説⑵-2 Ready Goでマラソンさせられ、「英雄感」「競争感」がめっちゃ刺激される
キノコ伝説においてARPPUを底上げしている大きな要因の2つ目はNoAdsや脳汁以外にももう一つあります。それは競争感です。常にこのゲームではランキングが走っており、短期的なマラソンが行われています。
ん?他のゲームも一緒ではないか?と思う方もいると思いますが、このゲームの競争感を産む仕組みで優れている点は「サーバの分け方」と「突破仕様」にあります。
▼サーバの分け方
このゲームでは、上述した通り、ゲーム全体の進行に関わらずサーバーごとにゲームを始めたタイミングでReady Goさせられます。なので、ゲームを始めた初日から受験勉強ばりに横を見ながらゲームをプレイさせられます。
なので、常にNo1〜No3の人が注目され、そのトップしか獲得できない乗り物を獲得できたりします。
また、サーバー1位になったらやることねえなーと思い始めた瞬間に、GvGが始まったり、SvSが始まったり、するのでやることは増えていく一方です。
▼突破仕様
特に面白くて妙な仕様だなと思うのは「突破イベント」です。
突破イベントはサーバがReady Goした時から絶え間なく使用したアイテムの量や進んだステージの数を3日や1週間などの期間内で競わせる仕様です。
この仕様が妙なのは、
有料課金勢が有利なのは変わらないが、アイテムを溜め込んだ無課金勢も1つの突破にベットすれば突破で1位を取れる可能性があるということです。
一般的に有料課金勢は常に強くなることを意識しているので獲得したアイテムをバンバン使ってしまうのですが、
無課金勢は息を潜めてアイテムを溜めています。この差分をお金で埋めるには数万円かかる(強さではなくアイテムの使用量で競わせるから)ので、突破イベントごとに有料課金勢からすると突破イベントオークションが開催される感覚でお金をばんばん使ってしまいます。湯水...
・キノコ伝説徹底解説⑵-3 お金を払って失敗したな、という体験が一つもない
このゲームで1番と行っていいほど私の課金欲求を後押ししたのはこの「お金払って失敗したな、という体験が一つもない。」ということです。
一般的なソシャゲだと、『一番強いキャラ』と言われているキャラが出るとそこに課金が集中し、その半年後に『一番強いキャラより少し強いキャラ』が登場してインフレしていく。というのがありますが、
このゲームはそれぞれのキャラ、技能(スキル)、仲間、など、獲得物に全て「所持効果」というものがついており、「持っていれば持っているほどよい」ので、『一番強いキャラより少し強いキャラ』が登場しても『一個前の一番強いキャラ』が無駄にならないのです。(正確にいうと無駄にならないと感じてしまう)
また、初期のガチャってどうしてもザコいキャラが出るのですが、キノコ伝説の技能ガチャや仲間ガチャは「ガチャが育つ」ので、どうせ後で回しても今回してもあまりタイミング的には変わりません。
なので、あまり課金アイテムやダイヤを残しておく意味が突破イベント意外には発生せず、従来のソシャゲでいう「フェス待ち」や「買い控え」が起こりにくいなと感じています。
キノコ伝説徹底解説⑶ おまけ
・キノコ伝説徹底解説⑶ -1 MBTIがプロフィール掲載事項な件
プロフィールに「男」「女」を入れたりするのは従来のソシャゲからありましたが、MBTIを入力するUIがあり、それから会話が生まれる。みたいなのはすごい現代ブラッシュアップだなと思いました。
(MBTIを判定する使用自体は内部にない。全員自分のMBTIを把握している前提。TikTokとか見ていると今のZではそれが当たり前。)
・キノコ伝説徹底解説⑶ -2 グローバルのローカライズがすごい話
キノコ伝説はリリース国
の対応言語が繁体字のバージョン(菇勇者傳說(繁体字))
リリース国
の対応言語が英語のバージョン(Legend of Mushroom(英語))
リリース国
の버섯커 키우기(韓国語)
リリース国
のきのこ伝説(日本語)
リリース国
の東南アジア版
があり、それぞれがただ言語ローカライズしているわけではなく、最初のステージのルックや、ランプの女神のデザインが違うなど、超細かいローカライズがされています。
ここまでやるということはこれも各国での7Day RRや30DayRRなどに繋がっていると思うとすごいローカライズ体力だなと思います。
世界のゲームマーケをハックしながら、ワンエーカーもオリジナルでゲーム、作ってます。
ワンエーカーという会社では、
「1 Acre =4000平方メートル」の人、すなわち僕たちのプロダクトを遊んでくれた人、クライアント、協業先の皆さん、ワンエーカーのメンバー、そういった両肩の人たちを絶対に幸せにする!ワクワクさせる!
というワクワクハックマインドでお仕事をしています。
自社での開発やリスクをとったチャレンジはもちろん、
自分達のコストで本気で取り組んでいると結構知識やナレッジが貯まるものです。
なので、私たちと
・一緒にものづくりしたい人、会社さん
・今の会社の状況上、AAAタイトルなどは作っているがミッドカジュアルなどに手を出せていないゲーム会社さん
・ゲーム以外でも飲食、商品などマーケにお困りの会社さん
協業や、マーケティングの相談、事業へのプロジェクトファイナンスまで
さまざまなご相談をお待ちしておりますのでぜひ会社HPもしくは折茂のTwitter(X)からお声がけください!ご飯行きましょう!
弊社に興味を持っていただいた、メディア様も大歓迎です!
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