ひとりぼっちの街

むかしむかし、あるところに街がいました。
すこしのひとがすこしのたてものでひっそりとくらす、とてもさびしい街でした。
さびしい街のちかくには、ほかの街がありませんでした。
さびしい街は、ひとりぼっちでした。


あるとき、さびしい街にとおいとおいほかの街からたびびとがきていました。
そのたびびとたちはさびしい街のひとびとに、ほかの街のことをおしえました。
さびしい街は、ほかの街にちかづきたくなりました。


さびしい街は、おおきくなることにしました。
さびしい街のひとびとは、せっせとはたらくようになりました。
ひとがふえ、たてものがふえ、さびしい街はおおきな街になりました。


おおきな街は、おおきくなることでほかの街にちかづくことができました。
たがいの街のあいだで、たびびとがたくさんおうふくしました。
たびびとはたがいの街のしなもの、ぶんか、きもちをもっていき、もってかえりました。
おおきな街は、ひとりぼっちではなくなりました。


おおきな街のひとびとは、ほかの街からもってかえられたものがうらやましくなりました。
おおきな街のひとびとは、おおきな街がほかの街にまけないよう、よりはたらくようになりました。
おおきな街は、よりおおきくなりました。


おおきな街は、いつのまにかほかの街をのみこんでいきました。
のみこまれた街は、おおきな街のいちぶになりました。
おおきな街は、とてもおおきな街になりました。
とてもおおきな街は、またひとりぼっちだとおもいました。
しかし、とてもおおきな街からたびだったたくさんのひとびとは、このほしにあるたくさんの街のことを、とてもおおきな街につたえました。


とてもおおきな街は、いつしか国とよばれるようになっていました。
国のひとびとは、ほかの国にまけないくらいゆたかになるために、よりはたらくようになりました。
国はほかの国とであい、なかよくなり、ときにはけんかをしました。


ほしのすべてのじめんがどこかの国のものとなり、国はたくさんの国とかかわりをもつようになりました。
そのほしには、かぞえきれないほどの国がありました。
はたらきものの国、のんびりした国、かがくの国、いのりの国、りくの国、うみの国、ゆたかな国、やさしい国。
国は、もうひとりぼっちではありませんでした。


しかしいつからか、国とほかの国とのさかいがなくなっていきました。
あまりにおおくのものごとがたがいの国をいききするようになりました。
国たちは、ひとつになりました。
国は、星とよばれるようになりました。


星はひとりぼっちになりました。
でも、もうさびしくはありません。
もっともっとはたらいて、もっともっとおおきくなれば。
あるいは、たくさんのたびびとを星からおくりだせば。
きっとまただれかにあえるでしょう。


星は、それがたのしみなのです。


―― 「ひとりぼっちの街」

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