【読む食事🍽️】島国DNA
打首獄門同好会というバンドをご存知だろうか。このいかつい名前から想像される通り、このバンドはラウドロックを主軸とした楽曲をリリースしている。
しかしそれはただのラウドロックではない。百聞は一見に如かず、とにかく打首(バンド略称)の代表曲を聴いてみよう。
ま・ぐ・ろ! ま・ぐ・ろ!
ま・ぐ・ろ・の・さ・し・み!
こんな三三七拍子から始まる『島国DNA』は、「我々日本人は魚好き」ということをひたすら歌い続ける、あまりにも共感性の高い楽曲である。このように打首は「生活密着型ラウドロック」というジャンルを標榜し、親近感と重低音の共生を実現している。
私は1年4か月にわたって日本一周をしたことがある。その道中、様々なグルメを味わってきたが、中でも魚介類には感動や衝撃を与えられることが多かった。
そんな私の島国DNAを再確認させてくれた魚や海産物について、今回はご紹介させていただきたい。
①大間のマグロ〈青森県大間町〉
大間のマグロはやはりレベルが違う。まず赤身の時点で旨味がぎっしり詰まっており、中トロかと疑うほど。中トロを口にすれば、さらに脂と旨味が増える。大トロに至っては口に運べばすぐに溶けてしまう。
本州最北端までわざわざ足を運ぶという旅情ポイントも高い。店の目の前は津軽海峡である。
②象潟(きさかた)の岩牡蠣〈秋田県にかほ市〉
牡蠣といえば、広島をはじめいくつかの名産地があるが、一般に秋田が牡蠣の名産というイメージはないと思われる。
実際のところ、秋田県南部にある象潟では天然の岩牡蠣が頂ける。しかもその旬は冬ではなく夏。レモン汁と醬油を少しかけて一気に頬張れば、口の中に牡蠣ならではの濃厚な旨味と幸福感が広がる。
この象潟の牡蠣は道の駅で1個から気軽に頂ける。牡蠣を味わったあと、道の駅の最上階にある温泉に浸かりながら、日本海を眺めるのもまた一興である。
③下田の金目鯛〈静岡県下田市〉
実は金目鯛の水揚げ量日本一を誇る下田港。この高級魚が下田の道の駅で気軽に頂ける。
今回頂いたのは金目鯛の棒寿司。あまりにもジューシーで、肉を食べているのではないかと勘違いしそうになるほど。厚みもあり食べ応えがあるが、もう一貫食べたくなってしまう。
もちろん他の海産物も粒揃い。あん肝も美味しかったし、(魚の)オジサンを頂くという貴重な経験もできた。
④呼子のイカ〈佐賀県唐津市〉
イカは基本的にどこで食べても美味しい。しかしあまり、メインディッシュに据えられるイメージはない。
ところが呼子のイカは堂々と主役を張れる。1匹まるまるの新鮮な活け造りを頂くことができ、歯応えがしっかりしていながらも柔らかいのが驚き。噛めば噛むほど甘味が滲み出てくる。脚は最後に天麩羅にしてもらえる。
今回は本土と呼子大橋で繋がれた加部島(かべしま)の店舗で呼子のイカを頂いた。呼子大橋は優雅な見た目の斜張橋であり、帰り際に一度下から仰ぎ見たい。
⑤関サバ・関アジ〈大分県大分市〉
関サバ・関アジの知名度は比較的高いが、聞きしに勝る衝撃の美味しさ。刺身は歯応えがしっかりしているのにとろとろ感も共存している。じっくり味わえば、上品な甘味が口の中に広がっていく。どちらかといえば関サバのほうが少し甘味が濃く感じた。
付け合わせの「りゅうきゅう」も絶品。魚を胡麻や醬油で和えたシンプルな郷土料理ながら、旨味がぐっと引き出されている。
レストランが空いていれば、窓際の席で食事をすることもできる。目の前は関サバ・関アジを育む豊後水道。視覚的にも味覚的にも豊かなひとときになる。
⑥宇和島鯛めし〈愛媛県宇和島市〉
鯛めしといえば、松山の鯛めしを想像する方が多いのではないだろうか。鯛の出汁をたっぷりと吸った釜飯、あれはなかなか堪らない。
しかし愛媛にはもう一つの鯛めし、「宇和島鯛めし」がある。こちらはご飯の上に刺身を乗せて頂くスタイル。出汁と生卵をよく混ぜたタレに刺身を潜らせ、ほかほかの白飯と一緒に頬張れば、卵、出汁、そして鯛そのものの旨味がそれぞれ引き立ち、素晴らしいコンビネーションを決めてくれる。
ちなみに真珠貝の貝柱も頂いたが、バター焼きにすることで上品な味わいとなる。真珠は眺めるだけではないことを知った機会でもあった。
⑦輪島のふぐ〈石川県輪島市〉
ふぐといえば下関のイメージが先行するが、実は天然フグの漁獲量が多いのは輪島港。何度も漁獲量日本一に輝いている。
輪島朝市にてふぐ丼を頂いたが、ぷりぷりの身がたっぷり乗っていてとても贅沢。特に驚いたのが白子で、とろとろで濃厚な食感には唸らざるを得ない。さらに輪島塗りの箸までついてきてとてもお得。
令和6年能登半島地震により、輪島朝市は跡形もなく壊滅してしまった。あまりにも無念すぎるため、せめて思い出としてここに記しておきたい。
⑧富山湾の白えび〈富山県富山市〉
富山湾は非常に豊かな漁場。ホタルイカや寒ぶりなど、海の幸が目白押しである。
中でも白えびは富山以外では見かけない貴重な食材。甘味ととろとろ感が抜群で、一口運ぶごとになくなっていくのが惜しい気持ちになる。ちなみに白えび丼についてくる白えびせんべいもなかなか侮れない逸品。
この白えびは富山駅内の「白えび亭」で頂ける。すぐ隣には富山ブラックラーメンの名店も並んでおり、富山に来たらどちらに行くか考え込んでしまいそう。
⑨札幌の回転寿司〈北海道札幌市〉
札幌に来たら迷わず回転寿司に入ろう。もちろん味噌ラーメンやスープカレーなど、とんでもない誘惑があるのもわかるので、もし迷ったら全部食べよう。
北海道の回転寿司はとにかくレベルが高い(道民も口を揃えて言うので間違いない)。迷ったらとりあえずホタテを食べてほしい。その分厚さ、新鮮さに度肝を抜かれる。
あとは本州以南ではなかなか見かけないネタも多い。私はとろにしんがとても気に入っている。他にもタコの子、南蛮えびなど、バリエーションも非常に豊富である。
⑩知床のトキシラズ〈北海道斜里町〉
知床にはヒグマがいる。ヒグマが好きな魚・鮭もいる。鮭は秋が旬と言われているが、春から初夏にかけて水揚げされることがあり、そうした鮭は「時鮭(トキシラズ)」という高級魚として扱われる。
トキシラズは脂がたっぷり。一切れ一切れが肉厚で満足感も高い。いくらも大粒で、噛むと濃厚な魚卵の味が弾ける。
この逸品が道の駅で頂けるのはとてもありがたい。併設の知床世界遺産センターで知床の自然について勉強したあと、その大自然の中へ繰り出そう。
今回紹介した海のグルメは、氷山の一角に過ぎない。まだまだ日本には、豊かな海の幸が溢れている。それに気づいてしまったあなたは、そろそろ内なる島国DNAが騒ぎ出す頃かもしれない…
でも魚を食べるなら、やっぱり白米も欲しくなりますよね。そんなあなたにぴったりの曲をお届けします。打首獄門同好会で、『日本の米は世界一』。
※写真は全て筆者撮影
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?