結城一縷

ゆうきいちる

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最近の記事

琵琶湖に浮かぶ国宝の島〈竹生島の記録〉

日本最大の湖・琵琶湖。この湖には、船で上陸できる島が三つあります。一つ目は、琵琶湖唯一の有人島・沖島。二つ目は、島全体が御神体とされる多景島。そして三つ目が竹生島です。 竹生島は琵琶湖の北側にぽつりと浮かんでおり、湖畔から眺める限り何の変哲もない小島です。しかし、竹生島の真の姿は「宝島」。なぜならそこには、国宝・重要文化財の指定を受けた建築物が集中しているからです。 あの小さな島に、そもそも建築物が立ち並んでいるのか? その建築物がなぜ国宝となっているのか? その真実を確か

    • 北限の離島に咲くエーデルワイス〈礼文島の記録〉

      日本最北の街・稚内。稚内といえば、やっぱり日本本土最北端の宗谷岬でしょう。最近は近くに延びる「白い道」も有名です。 あとは日本最北端の駅・稚内駅に寄って、ポテラーナや流氷まんじゅうなどのお土産を買い集めたいところ。ホタテラーメンやソフトクリームも食べて… 1泊2日の旅程だとすると、これらを楽しんでいるうちに時間切れになってしまいます。特に稚内市街ー宗谷岬間は往復約1時間はかかるので、他の場所に立ち寄る余裕はあまりないかもしれません。 では、2泊以上稚内に滞在できるとしたら

      • 日本一人口の少ない村は東京都にありました〈青ヶ島の記録〉

        「日本一人口の多い都道府県は東京都ですが、日本一人口の少ない都道府県はどこでしょう?」 このクイズの答えは鳥取県。ちなみに2番目に少ないのは島根県です。 「では、日本一人口の少ない村がある都道府県はどこでしょう?」 じゃあこれも鳥取か島根かな、と思うかもしれませんが、そうではありません。答えは、日本一人口の多い都道府県・東京です。 その村とは、東京都青ヶ島村。青ヶ島という小さな島に、たった166人の住民が暮らしています。では、青ヶ島とはいったいどんな場所なのでしょうか? その

        • 八角形の塔と善光寺の秘密

          長野県長野市に位置する善光寺。信州観光において外せない場所の一つであり、その立派な本堂は国宝に指定されています。特定の宗派に属さず、参拝者の性別や身分も問わなかったため、江戸時代には「一生に一度は善光寺参り」と言われるほど、民衆から広く信仰された寺院でした。 しかし実は、善光寺に参拝しただけでは「片参り」になってしまうのをご存知でしょうか? 善光寺のご本尊は、ある寺院のご本尊と対をなしており、両方参拝することで現世でも浄土でも幸せが訪れるというのです。 その寺院があるのは、

          島根の西側には何がある?

          島根観光といえば、みなさんは何が思い浮かびますか? 真っ先に思いつくのは、やっぱり出雲大社ではないでしょうか。あとは松江城も有名ですよね。 他にも玉造温泉や宍道湖の夕日…、いろいろありますが、これらは全て島根県の東側、かつて出雲国と呼ばれていた地域に集中しています。 一方で島根県の西側、かつて石見国と呼ばれていた地域にはどんな観光スポットがあるでしょう? 「石見」と聞いて、世界遺産マニアならピンと来るのは石見銀山。間歩(坑道)の中を見学できたり、江戸時代の街並みを散策でき

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          船で渡る集落と水牛で渡る島

          日本の最西端に位置する八重山列島。石垣島をはじめとする大小様々な島によって構成されていますが、その中でも西表島は2021年に世界自然遺産に登録され、注目度が高まっています。 もっとも世界遺産登録前から、西表島はイリオモテヤマネコなどの貴重な野生動物が棲息していることで、一定以上の知名度はあったのではないでしょうか。他にも天然のジャングルクルーズが体験できる浦内川など、有名な観光スポットがある「南の島」でもあります。 そんな西表島には、まだまだ個性的なスポットが多数存在します

          船で渡る集落と水牛で渡る島

          本州最北の半島には何がある?

          本州最北の町・大間町。この町は津軽海峡に面した小さな港町ですが、その規模の割に知名度は高いでしょう。その理由は何と言っても「大間のマグロ」ブランドです。 この大間町が位置する下北半島は、青森市中心部からですら車で約3時間かかり、なかなか気軽に行ける場所ではありません。しかしそういういわゆる「行きづらい場所」にこそ、とんでもない体験は待ち受けています。 今回は私が下北半島を巡った中で、特に心を惹かれた場所を紹介していきます。 〈恐山〉境内の温泉 下北半島の中央部に位置する

          本州最北の半島には何がある?

          初盆と幻

           棺桶の窓から覗く随分と萎んだ顔。  黒い額縁の中で図太そうな笑みを浮かべる白髪の老人。  父の弔辞。故人にとっては息子の弔辞。  僧侶に合わせて参列者が呟くように読み上げるお経。  厳かに煙る焼香。  火葬炉前で待つ親戚一同の静寂。  箸から箸へと渡される大小様々な遺骨。  昨年の夏、祖父が亡くなった。 ◆  仙台駅の東北新幹線中央改札前は、お盆の只中にもかかわらず大して混雑していない。私は両親と共に改札を眺めていると、リュックサックを背負った弟が向こうからやって来た

          梅雨と二十九

           蛙の鳴き声がカーテン越しに聞こえる。少し湿度の高い七月の夜、小さな部屋で聞くその声は、私にとってはちっとも騒音ではない。むしろ少年時代を思い起こさせるような、ノスタルジックな歌声である。  あの頃の私は臆病だった。知らない世界が怖くて、知らない未来が怖かった。三つ子の魂百まで、と言われるように、今も昔も私の本質は変わっていないのだろうけれど。  それから数十年の時が流れた。まもなく三十歳の私は、小さな会社の社長を務めながら、実家で母と暮らしている。 ◆  四歳から十八歳

          梅雨と二十九

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈後編〉

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈中編〉はこちら↓ (17)富士山-信仰の対象と芸術の源泉[2013年記載] 種別…文化遺産 構成資産 ・富士山域〈山梨県富士河口湖町など〉◎ ・富士山本宮浅間大社〈静岡県富士宮市〉 ・山宮浅間神社〈静岡県富士宮市〉 ・村山浅間神社〈静岡県富士宮市〉 ・須山浅間神社〈静岡県裾野市〉 ・冨士浅間神社〈静岡県小山町〉 ・河口浅間神社〈山梨県富士河口湖町〉 ・冨士御室浅間神社〈山梨県富士河口湖町〉 ・御師住宅(旧外川家住宅)〈山

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈後編〉

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈中編〉

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈前編〉はこちら↓ (9)古都奈良の文化財[1998年記載] 種別…文化遺産 構成遺産 ・東大寺〈奈良県奈良市〉◎ ・興福寺〈奈良県奈良市〉 ・春日大社〈奈良県奈良市〉◎ ・春日山原始林〈奈良県奈良市〉 ・元興寺〈奈良県奈良市〉 ・薬師寺〈奈良県奈良市〉◎ ・唐招提寺〈奈良県奈良市〉◎ ・平城宮跡〈奈良県奈良市〉◎ 日本の古都といえば京都が取り沙汰されがちな分、奈良は思ったより巡りやすいうえに、さらなる歴史の重みを感じる

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈中編〉

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈前編〉

          現在、世界遺産は全部で何件登録されているかご存知だろうか。その総数は1,199件に上り、今後も世界遺産登録に向けた取り組みは全世界各地で行われていくと思われる。 そのうち、日本の世界遺産は25件。これだけ見ると少ないように思えるが、登録件数ランキングで日本は11位に位置しており、アジアでは中国、インド、イランに次いで4番目の件数となっている。 私は1年4か月にわたって日本一周をしたことがある。その旅路を振り返ってみれば、全25件のうち23件、92%の世界遺産を網羅していた。

          【読む旅路👣】日本の世界遺産(ほぼ)踏破してみた!〈前編〉

          【読む旅路👣】すみっコさがし

          昨年2023年、北海道最北端の稚内を観光していた際にこんなキャンペーンのポスターを見かけた。 \すみっコと一緒にまちを盛り上げたい/ すみっこまちコラボ すみっコとは「すみっコぐらし」のキャラクターである。「すみっこにいるとなぜかおちつくということがありませんか?」というコンセプトのもと、「しろくま」「とんかつ」「ぺんぎん?」など、様々な可愛らしい(少し卑屈な)キャラクターが揃っている。 こうしたポップなキャラクターをすみっこまちのプロモーションに起用するのは、なかなか興

          【読む旅路👣】すみっコさがし

          【読む食事🍽️】島国DNA

          打首獄門同好会というバンドをご存知だろうか。このいかつい名前から想像される通り、このバンドはラウドロックを主軸とした楽曲をリリースしている。 しかしそれはただのラウドロックではない。百聞は一見に如かず、とにかく打首(バンド略称)の代表曲を聴いてみよう。 ま・ぐ・ろ! ま・ぐ・ろ! ま・ぐ・ろ・の・さ・し・み! こんな三三七拍子から始まる『島国DNA』は、「我々日本人は魚好き」ということをひたすら歌い続ける、あまりにも共感性の高い楽曲である。このように打首は「生活密着型ラウ

          【読む食事🍽️】島国DNA

          【読む湯治♨️】ユニーク湯に行く

          温泉に求めるものとは何だろうか。それは一般的には「癒し」だと思う。喧騒から解放され、ゆったりする時間は何にも代え難い。この場合想像されがちなのは、温泉宿に宿泊し、一日の終わりに湯船に浸かるひとときだろう。 一方で、温泉に「刺激」を求めるという選択肢はあまり思い浮かべられないのではないだろうか。しかし実は、自然と戯れるアクティビティやアトラクションで楽しむテーマパークに匹敵するほどのポテンシャルが、温泉にはある。そこでは唯一無二の体験ができる「ユニーク湯」が待っている。 私は1

          【読む湯治♨️】ユニーク湯に行く