船で渡る集落と水牛で渡る島
日本の最西端に位置する八重山列島。石垣島をはじめとする大小様々な島によって構成されていますが、その中でも西表島は2021年に世界自然遺産に登録され、注目度が高まっています。
もっとも世界遺産登録前から、西表島はイリオモテヤマネコなどの貴重な野生動物が棲息していることで、一定以上の知名度はあったのではないでしょうか。他にも天然のジャングルクルーズが体験できる浦内川など、有名な観光スポットがある「南の島」でもあります。
そんな西表島には、まだまだ個性的なスポットが多数存在します。南の島で数日ほどのんびりしながら、そのおもしろさも味わい尽くしてみませんか?
〈船浮〉船でしか行けない集落の先には…
西表島は、二大玄関口である大原港と上原港を中心に、いくつかの集落が海沿いに点在しており、そのほぼ全ての集落を県道215号線が結んでいます。
「ほぼ全て」という表現をしたのは、西表島の中にありながら、唯一他の集落と陸路で繋がっておらず、いわゆる陸の孤島となっている集落があるからです。その集落に踏み入れるためには、県道215号線の西の果てにある白浜集落まで向かう必要があります。
白浜集落に辿り着くと、白浜港という小さな港が現れます。
日陰で待っていると、小さな船がやって来ます。屋根に書かれているのは「船浮ー白浜」。この船浮という集落が今回の目的地になります。この船に乗る以外に、船浮集落に行く手段はありません。
白浜港から船浮港までは、10分程度の短い船旅です。
船浮港に降り立つと、船浮集落の地図が描かれた手作り感満載の看板が立っています。手作りとはいえ、船浮集落の全てがちゃんと網羅されているので必見です。
船浮には小さなレストラン「ぶーの家」があり、猪料理を食べることができます。私はいのししそばを食べましたが、素朴な旨味が凝縮された逸品でした。
集落の奥には、森の中に続いている道があります。この道を10分ほど歩くと、最終目的地「イダの浜」に辿り着きます。
見てくださいこの景色。漂流物のない白い砂浜、透き通った青い海。この日は天気にも恵まれ、青い空と白い雲が理想的でした。
これだけ綺麗な海ですが、人はほとんどおらず静かなビーチでした。海水浴やシュノーケリングを楽しんでいる人がちらほらいる程度。海中には色鮮やかな魚やウミガメがいるそうです。
西表島のいちばん奥にあるものは、極楽と見紛うほどの清浄なビーチでした。船は1日5往復しているので、船浮に1時間ほど滞在して白浜に戻ることも可能です。陸の孤島・船浮、ぜひ訪れてみては?
船浮ー白浜フェリーの時刻表はこちら↓
〈由布島〉水牛で渡る島の楽園とは…
八重山列島に属する島々を移動するには、ほぼ全ての場合フェリーに乗る必要があります。「ほぼ全て」というのは、フェリー以外の移動手段も存在しているからです。その移動手段が「水牛」です。
水牛が交通手段となっているのは、西表島とその隣の小島・由布島。どうやって移動するのかというと、答えは「徒歩」です。二つの島は確かに海水で隔てられていますが、水深がとても浅いので、水牛なら楽々歩くことができます。
ちなみに西表島ー由布島間は人間が歩いて移動することも可能。膝下程度の水深なので、半ズボンとサンダルがあれば問題なく渡り切ることができます。水牛が歩いている姿を横から見たい方にもおすすめです。
由布島は一帯が亜熱帯植物園となっており、トロピカルな植物の宝庫。琉球固有の椰子・ヤエヤマヤシや色鮮やかなブーゲンビリアなど、見応え抜群です。
由布島の中で個人的にいちばんおすすめのスポットは「蝶々園」。ビニールハウスの中に入ると、その名の通りたくさんの蝶が舞い踊っています。水色、橙色、白と色とりどりで、眺めるだけで癒されます。
特に美しいのがリュウキュウアサギマダラ。おそらく琉球列島の固有種なのではないかと思います。黒い縁取りの中にある水色(浅葱色)の斑模様が特徴的で、まるで青空を溶かし込んだような鮮やかな色をしています。
ずっとこのビニールハウスの中にいると、ここが楽園なのではないかと勘違いしてしまいそうになるので、ご注意を。
〈浦内川〉ジャングルクルーズの果てには…
冒頭で少し触れた通り、西表島では天然のジャングルクルーズが大人気。ワニに襲われることはありませんが、両岸に広がるジャングルを船長の解説付きで眺めることができます。
今回は浦内川ジャングルクルーズに参加してきました。まるで演出のような一瞬のスコールにすら感動しました。
ジャングルクルーズは上流船着き場に着いたら終了です。しかしここで二つの選択肢が登場します。一つはそのまま船に乗り、上ってきた川を下る選択肢。もう一つは、「さらに奥へ進む」という選択肢です。
実は船着き場の先にはトレッキングコースが延びており、徒歩であればさらに先へと進むことができます。それでは鬱蒼としたジャングルを分け入ってみましょう。
蝉の鳴き声と亜熱帯の森を抜けた先には何があるのか。それは浦内川の上流に位置する「カンビレーの滝」です。
この辺りは川の横幅が広く水深も浅い場所が多いので、川の中に足を浸すことができます。上流船着き場からカンビレーの滝までは約1時間。少し冷たい川の水と絶え間ない滝の音が、歩き疲れた体を癒してくれます。
一休みしたら、すぐに来た道を戻ります。帰りの船の時間に遅れてはいけませんから。滝でゆっくりしたい方は、午前中の便に乗ることをおすすめします。
それにしても、もし最終便に遅れてしまったら…どうなっちゃうんでしょうね?
浦内川ジャングルクルーズの時刻表はこちら↓
まとめ・アクセスマップ
船で渡る集落・船浮集落や水牛で渡る島・由布島など、西表島にはユニークなスポットが目白押しです。石垣島から西表島まではフェリーで約45分、便数も1日4〜6便あるので、ぜひ訪れてみては?
ちなみに私は生のイリオモテヤマネコに遭遇することはありませんでしたが、ンママキーやまねこパークのイリオモテヤマネコ像(冒頭の写真)には会ってきました。実はあれ、地元の小学生が「公園にイリオモテヤマネコ像を作ってほしい!」と町に訴えた結果、可愛さよりもリアルさが重視された像が出来上がったんだとか。
本当はこの水牛のキャラクター(下の写真)みたいに、可愛いキャラクターが良かったよね…。缶の中には黒糖キャラメルが入っていて美味しいので、ぜひお土産にどうぞ。
本記事で取り上げた場所のマップはこちら↓
①ンママキーやまねこパーク
②ぶーの家(船浮集落)
③亜熱帯植物楽園 由布島
④カンビレー(カンピレー)の滝
※写真は全て筆者撮影