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法務のRawData - 定量化を考える -

みなさま、こんにちは!
こちらは裏・法務系アドベントカレンダー2020のエントリーになります!
法務のいいださんからバトンを受け取りました!昨日のエントリーは法務キャリアオンリーの方は、特に必見だと思いました!

さて、自分はプロ野球を好んで見るのですが、特に今年はコロナによって実入りが明らかに減ったプロ野球において、選手の年俸の査定方法にどういった影響があるのか、興味を持って見ていました。
今のところそこまでトラブルがなく、プロ野球界では定量化とそれに基づく「合理的な」査定が定着しつつあるように見えます…と書こうと思ったら、私の贔屓チームのドラゴンズでは、ちょいとすったもんだがあったようでした…笑

その一方で、(企業)法務の世界においては、業務の定量化が難しく、どう目標を立てて、評価していくかがいつも議論になるところです。
しかも、目標や評価といっても、メンバー一人一人の目標と評価もあれば、一定規模の法務組織であれば、そのチームとしての目標やその達成状況も管理が必要になってきます。

個人的に興味があったこのテーマについて、2020年末の時点での考え(含む妄想)をまとめていきます!

1. 私の法務時代

自分が法務だった頃は、その多くの期間が「一人法務」だったので、「法務組織の評価=個人の評価」でした。

会社として目標管理制度があったものの、法務として定量的な評価基準を出すことまで私も頭が回らず、当初は業務への頑張りや意欲を中心とした「情意評価」が中心になっていたと思われます。当初はそれなりに評価して頂いていたものの、年次が進むにつれて、「この人、このくらいは普通にできるよね」と能力評価的な側面が強くなり、思ったほど評価が伸びないといった状況になりました(そりゃそうですね)。

なるほど、もっとアピール材料も必要だなと思うようになり、年間の契約書依頼件数事業部門からの法務の業務に対するアンケート結果を添付したりして、少しだけ定量的エビデンスも加えることにしました。当時エクセル一本で契約業務管理をしていた自分には、これが精一杯でした…

2. 法務業務の定量化は難しいのか?不要なのか?

巷でよく言われるのは、「法務業務は定量化が難しい」ということです。
ただ、実際にお話を伺ってきた限りで、私が受けた印象としては、法務業務の定量化が難しいということよりも、

①法務業務は定量的評価をすべき性質のものではないと考えている。
②定量評価するためのベースとなるデータがないため、評価しようがない。

という表現の方が適切だと感じられました。

上記の①に関して、確かに法務の業務の内容は複雑です。
契約書の審査や法律相談などのルーティン業務に加え、突発的なトラブルへの対処やプロジェクトへの参画などもあり、その難易度もさまざまです。単純に数値化しそれのみで一律に法務業務を評価するのは危険なのだとは思います(定量化が進んだプロ野球の世界でも、ムードメーカーなど数字に現れない貢献度を上積みするケースは今もあるようですし)。

とはいえ、じゃあこのまま法務業務の定量化を放棄し続けて良いのかというとその答えは"No"だと思います。

というのも、法務もあくまで会社組織の一つの機能にすぎず、その存在価値は会社が決めます。残念ながら法務の皆様が決めることではありません。この前提に立った時に、法務の存在価値を伝える手段を多く持っておくことに越したことはないですよね。

3. 法務業務定量化のメリット

法務業務を定量化することができれば、こういったメリットがあります。

明瞭な比較ができるようになる
業務の評価は、多くの場合「比較の視点がないとできません。定量化してデータを積み上げることで、その比較のタネが得られます。
「昨年度は〇〇でしたが、今年度は□□になりました」と、数字を持って語れるようになるということですね。

評価の公平性と納得感が増す
評価の場面では、公平性とそこから生まれる納得感が重要で、定量的な分析はその手段の一つです。定量化できる部分は定量化してきちんと評価に納得感を伴うようにすることが組織内にほどよい緊張感を生みます
こうした環境を作ることができれば、組織としての強化に繋がり、適切な新陳代謝を促すものと思います。

組織としての水準感を作れる
「普通、A4で10ページの取引基本契約書って、どれくらいの時間でレビューしているか」といった情報が取れたら、これを集めて組織の平均的な水準を持つことができるようになります。特に若手法務パーソンにとってはわかりやすいベンチマークができるということになります。

4.では、どんなデータをとるべきなのか

前提としてデータをとる場所を見極める
業務の定量化や効率化などの場合に「業務の棚卸し」が定石中の定石とされます。まずは自分たちの業務プロセスを把握しないと、そもそもデータもとりようがありません。この点については、多くの書籍や記事が発表されていますので、詳細は割愛させてください。

とはいえ、おそらく直感的に「契約に関する業務」イメージした方が多いと思います。業務割合が大きく、またデータが取りやすいという共通認識があるからでしょうか。
個人的にも、まずこれが第一ステップだと考えていますので、地に足をつけて考えやすい、契約業務にフォーカスして、以下書いていきます。

では例えばどんなデータが役に立つのか
ここで初めて、評価の前提となるデータの取得について考えていきます。
もちろんデータは、闇雲に取れば良いものではなく、必要となるデータは、組織によってどのプロセスに重きを置くか、つまり「法務組織のビジョンや価値基準に大きく左右されます

とはいえ、個人の評価のためには、例えば

各担当者における契約種別の案件処理数
法務担当者が最初の回答(レビュー)までにかかった日数

が比較的わかりやすく、またエクセルやワークフローシステムを活用して取得もしやすいデータなので、既に取得している企業も多い印象です。
更に、私が存じ上げる範囲では、業務スピードを意識する観点から

契約書ごとのファーストレビューにかける時間

を、毎回各担当者が測定して記録している企業様もありました。これは非常にダイレクトなアプローチですね(緊張感すごそうです…)。

少し切り口を変えて、例えば法務部門として「他部門とのコラボレーションを重視する場合には、

事業部とのやりとり(ラリー)の件数

をデータとして持つことも一案かもしれません(もちろん評価の仕方は色々あると思います)。こうしたコラボレーションの定量化については、マイクロソフト社がOffice365のダッシュボード機能として提供し、ある程度は実現しているようです。

更に、他のメンバーからどれくらい感謝され(るような貢献をし)たか、を可視化できるサービスもありますので、これを使ってデータをとるというのも一案かもしれません。

一方で、組織としての成果を把握するには、上記のデータに加えて、

年間の契約相談件数の合計
部署別契約依頼件数の推移
進行中案件数の推移

などが有用かと思います。こういったデータは、場合によっては人員増強を会社に訴えるための説得材料にもなるでしょう。
やや取り扱いが難しくなりますが、事業部も巻き込んで考えるとしたら、

締結した契約のうちの自社雛形を使った割合
・契約種別の案件依頼から締結までにかかる平均的期間

というデータも面白そうですね。契約は常に相手方のある話になりますので、制御可能な部分とそうでない部分が存在することを前提にデータをとる必要がありますが…。

更に、今回は敢えて外していますが、より組織としてのレビューの中身に踏み込んでいく場合には、契約書アナリティクスの視点からデータを取得していく必要もあるでしょう(とても重要なのですが、終わらないので完全に割愛します…)

5. 実際どうやったらデータが取れるのか?

ここまで色々書いてきたものの、実際にデータをとることが難しかったり、そこそこ手間がかかるのが、2020年時点での状況です。

しかしながら、確実に言えるのは、リーガルテックがこれからそのデータ取得のキーになるということです。
これまでリーガルテックは、主に作業の効率化を図るためのツールとして開発が進み、また利用されてきました。そこから一歩進んで、リーガルテックを日常的に使う中で溜め込まれたデータが価値あるものとして個人や組織のパフォーマンスの分析に使えるようになる日は近いと思われます。

むしろ、こうしたデータをとるためにリーガルテックを採用するという意思決定も今後増えてくるのではないでしょうか。各種リーガルテックと(主に契約)業務の定量化は非常に相性が良い、ということが今日最もお伝えしたかった点でした。

おまけ - リーガルオペレーション- 】
データの取得を近く各種リーガルテックに委ねることができたとしても、実際に評価制度に結びつける必要があるため、企業としては、年単位で遂行する大きなプロジェクトになると予想されます。
こうしたリーガルテック導入なども含めた法務組織の戦略策定や運営改善活動の企画は、米国を中心に一定の専門的業務として認識されてきているようです。「リーガルオペレーション」のことですね。
日本でこの職種が出てくるのはまだ先、というか、仕組み作りに外部コンサルを起用する企業はあれ、一部の充実した法務リソースがある企業を除いては、これまで通り法務のメンバーが兼任してリーガルオペレーション的な役割を一時的に果たす」ということが現実ではないかと思われます。

6. 最後に

話が戻るようですが、この手のお話では必ず「法務はリスク管理をする部門だから、定量化することで雑な仕事を煽ったり、評価されるためだけに歪んだ仕事の仕方をする人が出るようになることは防ぐべきだ」というご指摘が出ます。その通りです。

ただ、これは定量化が原因で起こることではなくデータに基づく評価制度の歪みが原因で起こることです。数字が全てではないので、情意評価や能力評価も組み合わせて、バランスの良い制度構築が必須だと思います。
その土台になる要素として、法務と言えども定量化の観点は、今後外せなくなるのではないかと思われるのでした。
正直なところ、私よりも日々法務としての評価に向き合っている(特に)法務のマネージャーの皆様の方がよっぽど頭を悩ませている点かと思いますので、ぜひ今後情報交換もさせて頂ければと思います!

師走のお忙しい中、こんなゆるゆるな文章を最後までお読み頂き、ありがとうございました!
明日は、Shogo Matsumuraさんです!!

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(画像提供:freepik)


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