LIVING ON THE TRAIL【Izu trail journey 2024, 7時間48分】
どうもこんにちは。レース後の食欲爆発で食べることがやめられません。
さて、今年も伊豆の大運動会こと伊豆トレイルジャーニーに参加してきたので、レースレポートがてら記事を記載します。
最高の旅だった。
大会概要
知っている人も多いとは思いますが、簡単に大会概要を説明します。
伊豆トレイルジャーニーは静岡県の伊豆半島を舞台にした全長70kmのトレイルランニング大会です。スタート地点は松崎新港、ゴール地点は修善寺の伊豆総合会館で、獲得標高は約3000m。
上図は大会のコースレイアウトですが、実際には4つくらいのセクションに分割できるかと思います。
スタートから八瀬峠に至るまでの登り・こがね橋までの未舗装林道
八瀬峠までは13kmで約800mを緩やかに登ります。ここでオーバーペースにならないことが非常に重要。八瀬峠からは、くだり・のぼりかえし・くだりとなるが、ここも全て走れる林道。このセクションはまるでフルマラソンのようで、ずっと走りっぱなし。こがね橋A1から急登を経て仁科峠A2に至るトレイル
ITJのなかでは比較的登る区間があるが、10-20 %くらいなので走力がそれなりにあれば走れないこともない。急登をこなした後の二本杉峠からはかなりスピードが出せるシングルトラックで仁科峠まで。仁科峠A2からだるま山までのインターバルが続くアップダウン区間
100-200 mくらいの比較的すぐ終わる登りが4本あり、途中にエイド土肥駐車場A3。ここも足が残っていれば、ほぼほぼ全部走れる。だるま山まで登ってしまえばもう長い登りはない!だるま山からの下り区間
小さく登り返すところもあるが、ほとんどは下りで体力が残っていればスピードが出せる。
全体を通して走れない部分がほぼなく、それゆえ走れなければタイムがどんどん遅くなってしまう、と結構難しい大会だと思っています。
別の言い方をすれば、誤魔化せるセクションがほぼなく、実力・調整がそのままタイムに反映される大会でもあります。
自分とITJ
さて、そんな伊豆トレイルジャーニーですが、自分は2021年に初めて出場しました。この時は就職先の沼津近くで面白そうな大会やっているぞ、くらいの気分で参加しましたが、まるで野生動物にでもなったかのようなシングルトラックを疾走する感覚と、後半に長く続く稜線の景色の虜になりました。
はじめてこのレースに出たときの景色の感動は忘れられない。
その時のゴールタイムは9時間8分とそれなりにいい記録でした。フルマラソンは走ったことがなく、ハーフマラソンで90分も切れなかった頃だと考えるとかなり頑張ったものだな、と思います。
ただ、2021年優勝の上田瑠偉選手は5時間45分と凄まじいタイム。
同じものは見れなくても、彼が見ている世界に近づいてみたい、とマラソンや陸上競技についてより考えるようになっていったのでした。
けれども、そこからの経過はあまり良くなく。
2022年は不摂生による体調不良が原因で26km地点でリタイア。この時は仕事、将来への不安・不満で毎日のように飲酒を繰り返していたため、走れるわけもなく……。
2023年は8時間切りを目指して序盤からペースを上げて挑みましたが、実力が足りずオーバーペース。仁科峠以降はまったく走れず、後半の30kmはほぼ歩き通すという結果でした。
あまりにも不甲斐なくて、悔しくて、直後の1週間は何も考えられず。
帰りの新幹線のなかで嗚咽を漏らしながら泣いたことを覚えています。
正直なところ、今年はもう良いんじゃないかと、心のどこかで思っていたところもありました。
しかし、目の前のことから逃げずにちゃんとやり切りたいということで、2024年もエントリー。今回は「3度目の正直」として臨みました。
練習を十分に積むことができ、いい調子で挑む予定だったのですが……
2週間前のトラブル
大会2週間前に全身にボツボツが出てしまい、練習を中断せざるを得ませんでした。
熱が出たり関節が痛い訳ではないんですが、いかんせん初めてのトラブルで、走っていいかどうかも分からず。オフを余儀なくされました。今回も神に見放されるのかと絶望的な気持ちに。
それでも、ボツボツが落ち着いてきた大会直前1週間の走りの調子は良く、「もしかしたらいけるかもしれない」と懇願するような気持ちと、「やっぱりベストパフォーマンスじゃないし」と逃げようとする気持ちの中で揺れながら、慣性でなんとかスタートラインに立ちました。
ギアについて
さて、ロングトレイルレース恒例、ギアについて。
ウェア
一番大事なウェアの決定ですが、まずちゃんと天気予報を見ることから始めましょう。
上記から、伊豆山稜線歩道で走れなくなり低体温でDNFとなる可能性を考慮し、
上:Fine track ドライレイヤーベーシックノースリーブ
The north face ハイブリット ドライドットライトクルー
下:Herenessのsugar cane long pants
としていました。
気温二桁が予想される場合では、ベースレイヤーをFine trackの長袖とし、ミドルレイヤーはNorthのTシャツに、下についてはNorthの短パンとしていたと思います。
正直ここが決まれば基本的にはあとはあまり重要ではなく、大会要項に沿って荷物を詰めていく、というような感じです。
必携品
1.コースマップ 2.コンパス 3.携帯電話
→携帯電話およびGarmin enduro 2にGPX入れておけばOK
4.個⼈⽤のカップ
→Answer 4のカップを使用
5.1ℓ以上の⽔
→ポカリスエット
6.ライト2個
→PETZL(ペツル) e+LITE / Ledlenser MH6
7.サバイバルブランケット
→SOL(ソル) ポリエステル エマージェンシーブランケット
8.ホイッスル
→SalomonのADV SKIN 12にくっついている
9.テーピング⽤テープ
→NEW HALEのテープを使用。
10.携帯⾷料
→β-fuel (SIS), Mag-on, オレは摂取すなどを混ぜて9個ほど。足りなかった。
11.携帯トイレ
→救急トイレ(QQトイレ)迷彩柄
12.レインジャケット
→The north face ジーティエックストレイルエンデュランスジャケット
13.防寒着 →上記
14.シューズ →ASICS fuji lite 5
15.⼿袋→The north face Windstopper Etip Glove
16.ファーストエイドキット
17.保険証
18.装備品チェック後に配付するナンバーカード2枚、計測⽤ICチップ1個
19.顔写真付きの⾝分証明証
20.夜間⾛⾏時、後⽅の車両から視認できる⾃発光式でザック等に取り付けられるもの
→Salerno(サレルノ)LEDクリップライト
レース
結果
7時間48分5秒, 43位 (1528人出走)
結果は、目標としていた8時間切りを達成。更に7時間50分代も切ることが出来た!
直前に感じていた「調子がいいかもしれない」という感覚は間違っておらず、DNSせずに出場して本当に良かったです。
2021年から続く3年間の宿題をようやく終えることができて、大きな達成感を得られました。苦しい時期もありましたが、やめないでよかった。
1つの長い旅 (journey) が終わったような、そんな気持ちで居ます。
本当に、楽しい、いい大会だった。
レースプラン
さて、ここは細かい話。
運動強度のZoningにはいろんなモデルがあるが、実際の感覚に近いのはこのfive zone model、もしくはzone 2を強度の高い上半分と低い下半分、zone 1より下にrecovery zoneを追加したseven zone modelとでも呼べるものではないだろうか。
それぞれのzoneでどれくらい運動を継続できるか?は調整(ピーキング)の仕方と直前の練習具合(zone 2メインで練習していればそこの継続可能時間は伸びるはず、Z3/4もしかり)によって異なるけれど、肌感覚として、zone 2は6-10時間、zone 3はフルマラソン (3時間くらい)、zone 4は1時間くらい、というようなところ。
じゃあZ2でレースを進めていきましょうね、ということになる。該当する心拍が130-150くらいなので、なるべく出ないようにひたすら強度管理を行った。
スタート~宝蔵院・八瀬峠~こがね橋(A1)
タイム:59分 (宝蔵院) / 2時間34分 (こがね橋)
2023年にスピードを出し過ぎて潰れた経験があるので、本日は抑え気味。140-150くらいで運動強度を管理する。けれども、スピードは悪くなく宝蔵院到達が1時間を切る。調子は悪くない。
そのまま宝蔵院から八瀬峠までの登りも調子が良い。そのまま12 kmの林道マラソンに突入、一部区間でフォームが崩れてスピードが出ない区間もあったが無事修正でき、余裕をもってこがね橋にin。大体2時間30分。
こがね橋(A1)~仁科峠(A2)
タイム:1時間53分
A1エイドで女子のXiang Fuzhao選手が入ってきているのが見えたので慌てて出る。が、急登の区間でグイグイと背中に迫ってきており、彼女の登りの強さを感じる。
追いつかれたくないので、シングルトラックをそれなりに、でも自分のオーバーペースにならない速度でプッシュするが、全然離れない!強い……!(むこうはPI 800代、こっちは620代なのであたりまえである)
そのバトルも猫越岳手前の登り、斜度はキツくないが、道が悪く実力が反映される部分にて終わる。
この登りでプッシュすると、自分はZ3に入って沈むな、と直感。前から落ちてきた選手に追いついたところで横に避けて、Xiang選手にはまとめて二人分、先に行っていただく。
「Go!Fuzhao!Go!」
(どうでもいいけど、中国の方ってどっちが名前なんでしょう)
彼女はそのままペースを上げていき、7時間半切りのタイムでゴールしたよう。一瞬でも勝てるか、去年Ester選手と伴走したヒロ選手のようになれるんじゃないかと思ったのだが、まだまだ実力が足りなかった。
そして、いまさらながらだが、ここで僕自身はハンガーノックになりかけていたようで、ちゃんと食べていればもう少し付けたかもしれないが……。
ただ、仁科峠には4.5時間を切るペースで入れたのでOKOK。
仁科峠(A2)~土肥駐車場(A3)~ゴールまで
タイム:3時間21分
仁科峠~土肥駐車場
ここには友人のgr8distanceが居るので探すも見つからず。後から聞くとHIGHになって暴飲暴食してる僕を見て「近付かんとこ」となっていたらしい。笑
しこたまエイド食を食べて「食べ過ぎた」とか言ってふざけていると、女子の冨井選手が入ってくるのが見え、この展開はDeja vu。
冨井選手、フルマラソンは2時間40分に迫るレベルであり、めちゃくちゃ強いのは知っているけどここでは負けたくない。もちろん、女子は後半も強い。なので、後半粘り型のレースをやる僕は女子のトップ選手を意識することがある。今回はそういうレースらしい。
ここでメダリストのカフェイン200 mg冴をLoading。
味はなんとも言えない栄養ドリンクだが、グミのようにするするっと飲み込めるので特段問題にならない。魔法のようにその瞬間から走れる、ということはないが、10分程度でしっかりと疲労が抜けてきてまた走れるように。
ちょっとした小さな登りなら走りで押せる!
よし来た。そのままの勢いで土肥駐車場までの登りを走り切り、Red bullを貰う。
Inは5時間58分。
あと2時間あるぞ。だるま山レストハウスまで1時間、そこからの下りとロードを1時間で8時間が見えてくる……!
まさか出来ると思っていなかった8時間切りが現実のものとなろうとしていて、興奮が止まらない。
土肥駐車場~ゴールまで
ただ、A3でひとつ失敗をする。ちゃんと食べなかった。いくつかMANABARを貰ったから良いだろう、みたいに考えていたが、最後の方は疲れすぎて呼吸が荒く、まともに咀嚼できない!
翼を授かったおかげでエリート選手など含めて数人抜き、食べなくても何とかなるかな、と思っていたが、ガス欠症状がだるま山レストハウスからの下りで現れる。スピードが出ない!
だるま山からの無限木段地獄で一度抜いた酢谷選手に再度追いつかれ、どんどん距離が開いていく。追いかけられない。強い。続いていちど抜いたEliteの選手にも抜かれる。この林道をプッシュできる選手は強い。
持ってきたジェルはもうない、万事休すだ。けれど、完全なハンガーノックではないから、8時間切りは行けるはずだ……!まだ、まだ走れる……!
少しでも順位を保ちたい、AA28の選手に抜かれると思っていたけれど来ないのでこのまま先着したい。いろんなことを考えて、後ろをなんども振り返る。スピードを長くは出せないのでファルトレクのように10秒だけスピードを出す、ということを繰り返しながらゴールまで。
ああ、温泉街が見えてきた
ゴールはあのホテルの近くだったよな、あそこまで頑張ろう、と。
そして見えてきたゴール。どうやってゴールテープくぐればいいんだっけ?とか思いながら、この瞬間を自分の中で一番堪能できる方法でゴールした。
7時間48分。
最高の旅だった。
おわりに
人間はどれだけ辛い経験をしても、その翌日くらいにはその辛さを忘れているものらしい。次の目標は7時間切り。達成できればいよいよ本格的にトップ選手を名乗ってもいいレベルになりそうだ。
体のパフォーマンスを探求する旅 (journey) はまだまだ続く。
Acknowledgement
箇条書きになってしまうのですが、
練習したいと言って土日に山に篭り、平日もランニング練習ばかりであまり甲斐性がない僕と付き合ってくれる彼女
両親
筋骨格のトラブルで伺うと、良い感じに体のバランスを整えてくれる市ヶ谷RUNNING CLINICの宮川先生
職場の上司、同期
大会開催に関わる千葉さん始めとした運営、ボランティアの方々
に心から感謝したいと思います。
アマチュアという立場だからこそ、いろんな人の苦労があってチャレンジできているな、と感じます。
これからのチャレンジも、いろんな人への感謝を忘れずに取り組んでいきたいと思います。