Friday 〜 good morning 〜
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AM6:30
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Pipipi……Pipipi……
トッ…トッ…コン……カチッ
??:フワァ〜……
??:眠いなぁ……今日も乗っているかな?
“今日の天気はこの後から崩れて、終日雨模様となるでしょう。外に出かける方は、傘を忘れずに出た方が良いでしょう”
??:雨か…やだなぁ………
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“理子〜?遅刻するよぉ”
理子:はぁーい!
理子:(前髪……ヨシッ)
鏡で前髪を確認し、1つ息を吐く
理子:お、おはよっ
理子:(全然、変じゃないよね?大丈夫…大丈夫、大丈夫?)
“理子ぉー?”
理子:分かってるっ!
階下からの姉の呼び声に返事をし、荷物を持って1階へ降りる
姉:おはよ、理子
理子:おはよぉ、お姉ちゃん
理子:お母さんたちは?
姉:もう職場に向かったよ
姉:理子も早く食べちゃいな?洗い物はしといてあげるから
理子:洗い物くらいはして行くよ
姉:…時間、間に合うの?
理子:(時間…?)
時計を確認してみると7時半前だった
理子:っ?!?!、ヤバっ
姉:ね?ほら、チャチャっと食べなぁ〜
理子:お姉ちゃんありがとう!
焼き上がっていたパンに手早くジャムを塗り、よく噛まずに牛乳で流し込む
姉:こらっ、ちゃんと噛まないt
理子:ごめんなさーいっ
姉の注意を聞き流し、歯を磨いてすぐに家を出る
理子:行ってきまーすっ
姉:もぉ……気をつけてね?
理子:はーいっ!
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AM8:00
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理子:ハァッ、ハァッ
早歩きでも間に合わなかったため、小走りで待ち合わせ場所の駅のホームに
谷口:おはよぉ〜理子
そこには既に、クラスメイトの谷口愛季が待っていた
理子:おはよぉ愛季っ
谷口:ギリギリだったねぇ…はいっ、襟が曲がってたよ
理子:ありがとぉ
襟を整えてくれた谷口だったが
谷口:愛しの彼にだらしない、って思われるよぉ?
ニヤニヤとした笑みを浮かべ、爆弾を投下してきた
理子:ち、違うもんっ!///
谷口:本当かなぁ?
理子:うるさいっ///
他愛もないやり取りをしていたら、普段乗っている電車がきた
理子:(今日もいるかな…?)
谷口:あ、いたよお
理子:だからっ!///
再度揶揄ってきた愛季の肩を叩く理子
谷口:イタタタっ、ごめんって
理子:もぉ〜
両手を合わせているものの、言葉の割に表情からは反省している様子がうかがえない谷口に、渋々矛を収める理子
理子:(い、今言わないと)
程なくしてドアが開き、電車に乗り込む
理子:……“……っ”
目の前の男子に挨拶をしようとするも、男子は明後日の方を向いており、結局声をかけられずに少し離れた位置に立つ
理子:ハァ〜(今日“も”言えなかった)
谷口:……意気地なし
理子:ウッ…タ、タイミング逃しただけだからっ
件の少年が理子達と同じ時間の電車に乗るようになってから数ヶ月、理子が挨拶にトライしようと始めて1ヶ月程度経つ
その流れを知っている谷口にグサリと刺さることを言われ、言い訳をする
谷口:別に制服一緒だし、ついでにクラスも一緒なんだから意識せずにサラッと言えば良いのに
理子:だ、だからうるさい///
谷口:ハァ〜、ドラム叩く時は堂々としているのにどうしてこうなるんだか…
やれやれと言った様子で首を振る愛季
理子:し、仕方ないじゃんっ、緊張するんだもん…
谷口:(否定するくせにめちゃくちゃ意識してるじゃん)…ハァ〜
谷口:このままじゃ1年あっという間に過ぎちゃうよ?
理子:わ、わかってるよ…
理子達は現在高校2年生、来年は就職にしろ進学にしろ大事な1年になる
今以上に忙しくなることは分かりきっており、理子自身も早く関係を作りたいとは思ってはいるものの、なかなか言えずにいた
理子:(あしたこそはっ)
谷口の言葉にシュン、と凹んでいた理子だったが、気持ちを切り替える
理子:(きっと…おそらく…言える、はず……)
谷口:ハァ〜(これは当分言えないなぁ…)
その様子を見て、頭を抱えながら思う愛季だった
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AM8:20
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谷口:凪、おはよぉ〜
理子:おはよぉ…
あの後も(谷口が促したこともあり)何度か挨拶をしようとしてみたものの、結局言えずじまいだった理子は気落ちしたまま登校した
小島:おはよーっ!……今日も?
学校に到着すると、優等生でもう1人の友人の小島凪沙が挨拶をしてきた
谷口:いつもどーり
理子:そんな言い方しなくても良いじゃん…
谷口:だって本当のことじゃん
理子:そうだけどぉ〜…
小島:私の理子に彼氏なんていりません!
谷口:はいはい、そうですね〜
理子:ンギュッ
小島:りこちゃん今日もカァイイネェェエエッ!
理子:なぎちゃん、苦しぃ
小島:ンンンンンッ
谷口:また始まったよ…
3人は同級生だが、谷口と遠藤の2人は背が小さく、幼く見られるため私服でいる時は小島が2〜3つほど年上に見られる
小島:愛季も可愛いよっ、大好きっ!
谷口:はいはい、ありがと
また、小島のスキンシップが少々激しいこともその勘違いに拍車をかけている
小島:どうしよう、私2人を産んだ記憶がある…
谷口:だったら同い年なのはおかしいでしょ
………少々?
いつものように暴走気味の小島の様子に頭を抱える谷口
小島:ハッ、愛季もくる?!
谷口:遠慮しとく
谷口:理子が嫉妬してるみたいだし
理子:っ!?!?、してないよっ!!!!
小島:えっ?!?!りこちゃんが1番だよーーッッ!!
理子:フギュゥッ、あ、愛季ぃ
谷口:へへっ
クラスメイト達は、最初の頃は驚くなり引くなりしていたが、今ではすっかり慣れてしまい、仲睦まじい?いつも通りの様子にスルーなり微笑ましそうに見守るなりしていた
谷口:それより、今日はどうする?
理子:え?!しないの?!?!
小島:ほら、今日は使えない日じゃん
理子:あ、そっか
小島:大丈夫っ、ちゃんといつものとこ借りてるよ!
谷口:さすが凪!
3人はクラスメイトなだけでなく、軽音部に所属し、バンドを組んでいる
谷口はギター、小島がキーボード、遠藤がドラムを担当し、それだけでなく3人全員ボーカルも兼任する少々変則的なスリーピース編成でやっている
谷口:理子は持ってきてる?
理子:もちろんっ
小島:かわいいっ!!
理子:フギュッ
フフンッ、と自慢げに言う遠藤に再度暴走する小島
谷口:なら、放課後直接行けるね
谷口:じゃあ、愛季はギター置いてきまーす
理子:あ、愛季、助けてぇ
小島:リコチャンッ、リコチャンッ
谷口:フフッ、がんばれ〜
理子:愛季ぃい…
小島:カワイイネェエッッ!!
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AM7:55
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転校してきて数ヶ月、新しい学校にも慣れ、登校時の電車での定位置もできた
◯◯:(今日こそは言うぞ…)
出入り口真正面の座席に座り、次の駅で乗ってくる同級生に挨拶をする意志を固める
……2ヶ月ほどそうしているが、現実はいまだにできていない
◯◯:(髪は…大丈夫、特に崩れていない)
コンマバングに整えた髪型を通知を確認するフリしてスマホで確認する
“次は●●〜、次は●●〜”
◯◯:(ってもうかよ?!)
1駅なんてあっという間で、意志を固めきる前にやってくる
理子:__ッ!!!\\\
谷口:イタタタっ、ごめんって
◯◯:(ハァ〜、マジ可愛い…)
君は今日も友達と一緒で、笑顔で乗ってくる
◯◯:(よし、言うぞ、言うぞ)
◯◯:おh
声をかけようとした時
理子:………
◯◯:(目、合う…っ)
君がコッチを見てきて、言葉は引っ込み、思わず視線も逸らしてしまった
◯◯:(意気地なしすぎるだろ、俺…)
タイミングを逃してしまい、いそいそとイヤホンを取り出し、音楽を聴き始める
谷口:……
理子:ウッ…………っ\\\
◯◯:(何話しているんだろう?)
さり気なく2人の様子を伺う
相変わらず仲が良いようで、戯れあって?いる
理子:…………\\\
最初はたまたまクラスが一緒になっただけの他人だった
まぁ、可愛いな、くらいには思っていた
ただ、惹かれる程ではなく、中途半端な時期に転校してきたこと、元々そんなに誰とでも打ち解けられるほど陽キャでもないこともあり、関わりなく学生生活を終えるだろうと思っていた
そんなある日、なんとなく適当に歩き回っている時
理子:もう一回
谷口:オッケー
小島:どこから〜?
本当にたまたま、少しだけ開いていたドアから君たちの声が聞こえてきた
そこで
◯◯:(……………っ!?!?!?)
心臓が1つ大きく脈打つのが分かった
◯◯:(え?あの遠藤さん!?!?)
そこには、周りから愛でられている君からは想像もできないほどカッコよく、それでいて天真爛漫で楽しそうにドラムを叩く君がいた
それからなんとなく見流していた電車で、たまたま君が一緒に乗っていることを知り、クラスメイトだし挨拶くらいしても別に大丈夫だろうと思い、しようとしているのだが
◯◯:(今日もダメでした、と……)ハァ〜
友達と一緒にいる君を横目に先に電車を降りる
◯◯:(変に意識しすぎなのは分かっているんだけどなぁ〜)
こう、何かしらふとしたきっかけができないかな…そんなことを思いながら学校に向かった
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PM4:00
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理子:はやくはやくっ!!
掃除、ショートホームルームも終わり放課後、3人は軽音部の活動室が使えない時に通っているスタジオに向かっていた
谷口:そんなに急いでも予約している時間にならなきゃ入れないよ?
駅の近くで学校から歩いて10分程度なのだが、遠藤は早く行きたがっていた
小島:ちなみに予約はいつも通りの時間?
谷口:そ、16時15分から2時間
小島:じゃ、急いで行ったら待たないとだね
理子:いいじゃん!もしかしたらサービスで入れてくれるかもしれないしっ
谷口の保護者の知り合いが経営をしており、その伝手で普通に借りるより、安く使わせてもらっている
谷口:ダメだよ、タダでさえサービスしてもらっているんだから、これ以上は甘えられないよ
理子:ぶ〜っ
だからこそ、他の人よりも借りる上での注意点や時間などは守るように谷口は意識していた
小島:可愛いよりこーーっ
理子:わぁーーーっっ
谷口:ちょっ、2人とも待って!早く着いちゃうよっ!
結局暴走する小島から逃げる遠藤を追いかけたため、借りている時間よりも10分ほど早く到着してしまった
谷口:いつも有難うございます…
小・理:ありがとうございまぁ〜すっ
前に借りてる人もいなかったから、と遠藤の予想通り早めに入れてもらうことができた
谷口:もぉ〜、ホント!!なんで走るかな!?
小・理:ごめんなさぁ〜い
谷口:………ハァ〜、、準備して練習しよ
小島:今日はあれやるんだよね?!
理子:やろやろ!!早くやろ!!
谷口:ほん、と……っ
調子の良い2人に頭を抱える谷口だった
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AM6:30
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Pipipi……Pipipi……
ベットサイドを手探りで探し、スマホのアラームを止める
理子:フワァ〜……
理子:眠いなぁ……今日も乗っているかな?
そんなことを呟きながら1階へ降りると、TVには天気予報が映されていた
“今日の天気はこの後から崩れて、終日雨模様となるでしょう。外に出かける方は、傘を忘れずに出た方が良いでしょう”
理子:雨か…やだなぁ………
そんなことを呟き、準備を進める遠藤だった
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AM7:55
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谷口:今日は余裕だね〜
理子:流石に2日連続で寝坊はしないよ
昨日と違い、余裕を持って待ち合わせ場所の駅に到着する遠藤
その手には天気予報を聞いて持ってきた、花柄の可愛らしい傘が握られていた
谷口:で、今日は挨拶できるかな?
ニヤニヤとした笑みを浮かべ揶揄う谷口
理子:だから!うるさいっ!\\\
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AM7:55
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いつも通りに電車に乗った◯◯だったが、今日は普段座っている席に別人が座っており、手すりに身体を預けて立っていた
◯◯:ハァ〜(ついてねぇ…)
今にも雨が降り出しそうな外の景色を見つつ、ため息を吐きだす
◯◯:(そう言えば、天気予報で雨って言ってたっけ?)
家を出る前に少しだけ耳に入ったTVの音声によると、今日の天気は雨だったはず
だが、寝坊をしてギリギリの時間に出た◯◯にそれをしっかりと聞き、傘を持って出る余裕はなかった
◯◯:(まぁ、そんなに降らないだろうし、走ればどうにかなるだろ)
この楽観視が自身に良い結果をもたらすことになるとは、今の◯◯は思いもしていなかった
いつもの時間、いつもの場所に辿り着き、気になっているクラスメイトが乗ってくる
◯◯:あっ………
今日こそは、と覚悟を決めていたものの、次の一言が出てこない
理子:………ッ
友達と話していたが、不意にコチラを向き、目が合う
◯◯:ウッ………\\\
目を合わせるだけでなく、少し首を傾げる様子に思わず目線を逸らしてニヤけそうになる頬を必死に抑える
◯◯:(可愛い可愛い可愛い可愛い)
◯◯:(って、そうじゃねえっ!)お、おh
谷口:理子、そう言えば課題してきた?
理子:……え?
はっ、と我にかえったが時すでに遅く、友達に喋りかけられており、挨拶するタイミングを逃してしまった
◯◯:(またやらかした…情けねえ)
ドアのガラス越しに外を見てみると雨が降ってきて、まるで空にも笑われているような気になってくる
◯◯:(ツイてねぇ……)
理子:お願い!写させて!
谷口:もぉ〜、本当に今回で最後だからね?
理子:ありがと〜
谷口:……毎回こんなやりとりしてない?
理子:気のせいじゃない?ヘヘッ
まぁ、この可愛い笑顔見れたから最悪じゃ無いだろう
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◯◯:ハッハッハッ
駅に到着してすぐに◯◯は走って学校に向かい始めたが、
◯◯:(クッッソ、どんどん激しくなってるし)
雨足は酷くなるばかりでとうとう
◯◯:(やっぱ無理!)
学校までは大して距離はなかったが、走り出してすぐにびしょ濡れになったため、目の前にあったコンビニの軒先に避難する
◯◯:(まだ駅見えてるのにこんな濡れたのかよ)
◯◯はたった数十m走ったとは思えないほどに濡れていた
その頃…
理子:アッ……
◯◯がドアが開いてすぐに飛び出てるのを見送ることしかできなかった遠藤
谷口:どうしたの?って◯◯くんのことしかないか
理子:ち、ちがっ\\\
谷口:別に隠さなくて良いから
谷口:走って行っちゃったね
苦笑いしつつ会話を続ける谷口
谷口:土砂降りになる前に学校に到着したいんじゃない?
遠藤たちももちろんガラス越しに雨が降っていること、徐々に雨足が強まっていることは把握していた
理子:傘、忘れたのかな…?
谷口:そうなんじゃない?
2人とも◯◯のように傘の準備はしており、◯◯から遅れてしばらくしてからのんびり歩き始める
どことなくソワソワと落ち着かない遠藤の様子に見かねた谷口が声をかける
谷口:心配?
理子:えっ?
谷口:だから、◯◯くんが心配?
理子:えっと…………ウン
そんな話をしながらも進み、外に出ると◯◯がすぐ近くのコンビニの軒先にいるのを見つけた
谷口:◯◯くん、いるよ?
理子:うん………
谷口:……貸してきたら?
理子:え?
谷口:◯◯くんに傘、貸してあげたら?
谷口:愛季の傘にいれてあげるし、行ってきなよ
遠藤の煮え切らない様子に、谷口が背中を押すようにして声をかける
理子:で、でも……
谷口:もぉ〜、せっかくのチャンスなんだし、ほら!
声をかけるだけでなく、実際にも背中を押す
理子:愛季〜
谷口:がんば〜
言葉の緩さとは裏腹に拳をグッと握り、応援する谷口
理子:ウ〜〜……ウンッ
背中を押されて進んだ数歩から、しばらくその場に固まっていた遠藤だったが、1つ小さく頷き、気持ちを固めたのかコンビニに向かって歩き始める
理子:あ、あのっ
◯◯の目の前に行くと勇気を振り絞って声をかける
理子:(どうしよう、練習してないよっ!)
◯◯:ひゃっ……はいっ\\\
◯◯:(ちょっ、練習してないって、しかも噛んだし!)
◯◯は◯◯で意識している異性に急に声をかけられて動揺していた
理子:よ、よかったら、どうぞ…\\\
そう言い、可愛らしいピンク地に白玉の傘を差し出す
◯◯:あ、ありがとう…\\\
お互いに想定していなかった事態に声が震えていた
理子:じゃ、じゃあ…\\\
ペコリ、といった音が聞こえそうなお辞儀をして近くで待っていた谷口の元へ走っていく遠藤
谷口:頑張ったね
労いの声をかけながら傘に迎え入れる谷口
理子:緊張したぁ〜…
谷口:じゃ、はいっ
そう言うと鞄から折り畳み傘を取り出し遠藤に差し出す谷口
理子:………
谷口:どうした?
理子:………
谷口:理子…?
理子:愛季が……
谷口:??
理子:愛季が行けば良かったじゃんっ!!!
谷口:それじゃ理子は喋りかけないじゃん
理子:そうだけどっ!
谷口:ハイハイ、使わないの?
理子:使うっ!
谷口:もぉ〜、素直じゃ無いんだから
理子:うるさいっ\\\
一方、傘を受け取った◯◯はその様子をボーッと見ていた
◯◯:(傘、貸してくれた…)
今更ながらにその事実を正確に認識、話すことができた嬉しさと急な出来事への驚きが同時に襲ってくる
◯◯:(どうして?、ってかそもそも俺のことしっかり、いやでも…)
ただ、混乱していたがコレだけは
◯◯:(週明け、返さないと…ッ)
しないといけない、と覚悟を決めた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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AM7:00
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Grrrrrr,Grrrr
手探りでベットサイドに置いてある目覚まし時計を止める
◯◯:フワァ……っし!
いつも通りの時間に起きて、登校の準備をする
朝食、歯磨きを済ませて洗顔をする
◯◯:(今日は言うぞ今日は言うぞ今日は言うぞ)
毎朝と同じように、挨拶のイメージをしていく
ただ、普段と違うとしたら、今日は声をかける理由がある
◯◯:(改めてお礼を言わないと)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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AM6:30
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Pipipi……Pipipi……
いつもの時間にいつものようにアラームを止める
理子:…………\\\
先週末のことを思い出し、1人赤面する遠藤
だが、だからこそ遅れるわけにもいかないため、準備を進める
理子:…おはようっ
鏡の前で挨拶の練習をしてみる
姉:なにしてるの…?
理子:なっ、う、うるさいっ\\\
姉に見られるハプニングがあってその後は止めたが、家を出る時間が近づくにつれ、緊張する
姉:…今日なにかあったっけ?
理子:な、なにもないよっ
姉:じゃあ、なんで緊張しているの…?
理子:別に、お姉ちゃんには関係ないっ\\\
余計な詮索をされる前に家を出る
いつもの場所でいつものように谷口と落ち合い、電車を待つ
谷口:今日は逃げられないよぉ、ヒヒッ
理子:わ、わかってるよっ\\\
電車が見えてきたタイミングで谷口がからかってくる
ドアの正面の席、いつもの位置に彼は立っていた
お互い、練習やイメージ通りには程遠い震えた声だったが
◯・理:“お、おはようっ”
と、声をかけることができた
__________Fin
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