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親友は私の…

”ハァ、ハァ、ハァ…ハァ…“

(もう、来てないよね…?)

“カッ、カッ、カッ…カッ…”

”〜〜〜ッッ!?!?“

(嘘っ!?ヤダヤダヤダ!!誰か…誰か助けてっ!!!)





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





“えっ!?それ大丈夫なの、和?”

私は井上和、この春から都内で1人暮らしを始めたんだけど、実は少し前からストーカー、されているみたいで…

井上:今のところはねぇ……都内怖いよぉ
助けてよアルノ〜

中西:もちろんだとも井上くんっ
それにしてもストーカーとかヤバすぎでしょ

この子は中西アルノちゃん
私が都内で物件探しをしている時に仲良くなって
大学に来て唯一できた友達、もはや親友。
ちなみにアルノの方が先輩ね?ドジだけど笑

井上:まだ家バレしてはないっぽいから良いけど
どぉしよぉ…?

中西:とにかく!なにかあったらすぐLINEして!
すぐに行くから!!

井上:ありがとぉ〜、神様仏様アルノ様ぁ〜

中西:……イジってるでしょ?

井上:いいや? 笑

それにしても…

井上:本当にヤバくなったら警察に言うよ 苦笑

中西:警察って意外と動かない、って言わない?
それに動いてくれても秒で来てくれるわけじゃないし…

井上:もちろんっ!!
そんな時はアルノさんに頼らせてもらいます 笑

中西:本当に連絡してね?

井上:もちろんですとも!
頼りにしてます、姉御 笑

1人は心許ないので全力でごますりしておく

中西:ふざけてるから本気に聞こえないんだよなぁ 苦笑

井上:そんなぁ…

中西:嘘ウソ 笑
お姉さんに任せなさい!

地元にはそれなりにいるけど、こっちに来てから本当に友達ができなくて、アルノには頼りっぱなしになってしまっている。

井上:ありがとっ

なかなか友達ができず、心細いなかアルノの存在は本当に私の支えになっていて、初めて遊びに行った後に貰ったお揃いのトカゲのぬいぐるみキーホルダーは、常に何かしらにつけている

中西:さっ、そろそろ3限始まるし戻ろ?

井上:えっ!?もうそんな時間!?嫌だよぉ〜…

授業は友達いないから息苦しいんだよなぁ

中西:ほらっ単位はちゃんとコツコツしないと取れないぞっ!!私が言っているんだ、間違いない…ッ

井上:取りきれてなくて年度末大変だったんだもんね? 笑

中西:言わなくてよろしい テイッ

井上:イテッ

中西:ふざけてないで行くよっ

井上:ヘヘヘッ はぁ〜い




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




井上:ハァ~

フルコマはやっぱり忙しいしシンドイよぉ…

“                                   ”

井上:(気のせいじゃ…ないよね…?)

大学を出てからずっと誰か尾いてきている気配を感じる

井上:(だけど…反射とか見ても誰か尾いてきている感じがしないんだよなぁ)

尾行することに慣れているのか、ガラスの反射だけじゃなくてさり気なく後ろを見て確認してみても、姿を見ることはできない…だけど確実に誰か尾いてきている……

“                                   ”

井上:(やっぱりいる!)

今日はバイトに直接向かう予定だったけど…
まずは撒かないと…って

井上:あれ?

バイト先の店長に連絡しようとスマホを取り出したが、尾けられている気配がいつの間にか消えていた

井上:(探っていることがバレた?
いや、そんなことで止めるわけがない
もしそうならとっくの前に解決していたはず)

疑問はあったものの、バイトに遅刻はできないため、脇に置いておいて向かうことにした

“……………今日はバイトだったの忘れてたわ”




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井上:疲れたぁぁ………

流石にフルコマ後のラストまでのバイトはキツすぎた…ん?LINEがきてる?

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中西「バイトお疲れ」
「ところで、大丈夫だった?」

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今日話したからかな?心配してくれて優しいなぁ

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井上「大丈夫だったよ!」
「ありがと(^ − ^)」


中西「そっか、良かったね(^ - ^)」
「じゃ、また明日ね」


井上「うん、明日ね〜」

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井上:よし、帰ろっ

疲れた身体に鞭打って帰宅して、コンビニなどに頼らずご飯を作って、諸々済ませてから寝ることにした

井上:今日も疲れたぁ……

“___今日もお疲れさま、和”

“___偉いね、疲れているのにちゃんと自炊して”




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




時折、尾けられている気配がある時には撒きつつ過ごしていたが、徐々に自宅がバレ始めているのか、先回りされることが出てきた。

中西:…変わらない感じ?

井上:……うん

アルノがいるからどうにかパニックにならずに過ごすことができているけど、正直もう………限界

中西:警察は?もう行ったの?

井上:行ったけど……

中西:……ロクに動いてくれない、と…?

井上:ウン……気のせい偶然だ、って………

中西:ハァッ!?ふざけんなっ!!何よそれ!!!

急な怒声に周囲の視線が集まる

井上:__ッッ?!?!
アルノ落ち着いて、怖い……

大学から尾けられていることも何度もあるから、この視線の中にストーカーがいるかもしれないと思い、身体が震える……

中西:__ッ!!…ごめん

アルノには逐一報告していたため、私の考えを察してくれたようでひとまず声量を落としてくれた。

井上:……とりあえず書類関係は受理してくれたし...
ただ、決定的な証拠がないとこれ以上は動きようがないんだって…

アルノがどんな想像をしたかは分からないけど、対応してくれた人は決して面倒くさがらずに、親身になってくれたし、動きようがないことに歯噛みしているようだった。

中西:そっか……その……大丈夫そう?
アレだったら、しばらくウチに泊まる?

正直、1人すごすのは限界だけど友達には……親友には、親友だからこそ、巻き込みたくない。

井上:ありがとう、でも大丈夫
最悪、しばらくは実家から通うことにするよ

中西:でも…

井上:流石に実家までは来ないだろうし大丈夫でしょっ
今までより早起きしなきゃいけないのは辛いけどねっ

これ以上心配、迷惑をかけたくないしそこまで甘えるわけにもいかないから、強がって笑ってみせる

中西:そっか……でも迷惑なんて思ってないから
何かあったら、遠慮なく頼ってねっ

そんな私の考えや強がりを見透かしつつも、尊重してくれるアルノには勝てないと感じる

井上:……うん“

中西:1つしか変わらないけど、
私の方がお姉さんなんだから、不必要なところで強がらずに頼ってね? 苦笑

井上:…う”ん“

中西:もぉ、泣かないの 苦笑
辛かったのによく頑張ったね ヨシヨシ

井上:ア”ル“ノ“ぉ”〜

学食で周りに人が沢山いたけど、頭を撫でられたのもあってか緊張の糸が解けて抱きついて泣いてしまった

“_____あと……ちょっと。もう一押し.か…”




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




私が学食でアルノに抱きついて大泣きしてからしばらく経つが、アレから尾けられることがピタリと止まって穏やかな日々を過ごすことができていた。

井上:怯えずに過ごせるのって本当に楽だぁあーッ!!

言い換えれば、あの場にストーカー、それかその人の仲間?がいて、よりバレないように尾けている可能性もあるけど…ポジティブな方に考えないと滅入ってしまうから考えない!

それにしても

井上:(それにしても、どうして私だったんだろう?)

尾けられなくなったからといって警戒しないようになったわけじゃない

井上:(ってそんなこと考えてm)

だけど

“                                         ”

井上:ゾクゾクッッ  ?!?!

しばらくなかったから、もう無いだろう、止めたのだろう、と気が抜けていなかったとは……言えない

井上:(嘘っ、なんで!?)

気が抜けていたとはいえ…いや、気が抜けていたからこそ、前回と同じ、それ以上の恐怖が心を、身体を支配し、思考を縛ってくる

井上:(そうだっ!アルノ!!アルノは!?)

だが、そんな中でも…そんな中だからこそ、現実逃避かもしれないけど、直前まで遊んでいた親友が心配になった

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井上「アルノ!!大丈夫!?」

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“                                 ‘    ’                 ”

井上:(お願い!アルノは、アルノだけは大丈夫でいて!!)

そんな私の願いは叶っていたようで

“                                                       ”

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中西「どうしたの、急に?笑」


中西「もしかしてまた!?」
「和こそ大丈夫なの?!」


井上「良かった、アルノには行ってないんだね」


中西「私はいいから!!」
「和は?!捕まってない!?」


井上「捕まってたらLINEなんてできないよ笑」


中西「そっか…」
「ってそんなことよりも!!」
「今から行くから!!そこで待ってて!!」

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”    ‘       ’        ‘     ’       ‘    ’             “

井上:(行く、って場所も分からないのにどうするの笑)
(大丈夫、帰ったら連絡する、っと…)

“                                 ‘    ’                 ”

井上:(これでヨシっ、あとは…逃げるだけ)

アルノが無事と分かって少し落ち着いたかな、これなら大丈夫。弓道をしていたし、今もダイエットのために運動しているから逃げ切れる!!……はず

井上:ハァッ、ハァッ、ハァッ

“                              ”

井上:        ッ!!…ハァッ、ハァッ



井上:ハァッ、ハァッ(よし、撒けt)

だった

”                  ハッ    ハッ                “

井上:ッ!?   クッ!!   ハァッ、ハァッ
(嘘っ!?なんでっ!?)

“                              ”

井上:        ッ!!…ハァッ、ハァッ



井上:(今度こそっ!!)

だけど

”                  ハッ    ハッ                “

井上:ッ!?

いくら逃げても

”                  ハッ    ハッ                “

井上:ッ!?

逃げても

”                  ハッ    ハッ                “

井上:ッ!?(なんでっ!?!?)

逃げても

”                  ハッ    ハッ                “

井上:ッ!?(なんでっ!?いるの!?)

逃げた先に現れる

井上:ハァ、ハァ、ハァ…ハァ…クッ!!
(流石にもう……来てないよね…?)

そんな私の淡い希望も虚しく

“カッ、カッ、カッ…カッ…”

井上:〜〜〜ッッ!?!?
(嘘っ!?ヤダヤダヤダ!!誰か…誰か助けてっ!!!)

”                  ッ“

井上:(あぁ、もう……d)

中西:和っ!!

井上:アル、ノ…?

捕まると思い、絶望しかけた時、そこに現れたのは

中西:ハッ、ハッ…良かったぁ ハァァ

井上:ア“ル”ノ“ぉ”〜”

アルノだった

中西:ハイハイ、和の頼れるお姉さん、アルノだよぉ ヘヘッ

LINEのやり取りをしてから急いで走ってきたのだろうアルノは、息を切らしながらも、そう言って笑いかけてくれた

井上:こ“わ”か“っ”た“よ”ぉ“お”

中西:ヨシヨシ 怖かったね、もう大丈夫だよぉ

井上:ぁ“ぁ”ぁ“あ”あ“あ”

中西:とりあえず、私の家が近いし、行こっ?
……いいよね?

井上:て“も“ぉ”…

中西:たぶん、大丈夫だから…ね?

井上:う”ん“…

どうしようもなく恐怖を感じていた私はそのままアルノの家に行くことにした…少しの違和感を感じつつもそこに蓋をして。

いつの間にかストーカーの気配は消えていて、アルノの家に向かう道中は平穏だった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




中西:ようこそぉ〜

井上:ただいまぁ

中西:フフッ おかえり?

アルノの家には何度か遊びに来たことはあったため、安心感を感じて思わず言ってしまった。

井上:ッッ!?!?違っ!!///

中西:良いよ良いよ別に 笑
それだけ気を許してくれてるんでしょ?

井上:………ウン///

思わず言ってしまった言葉と、アルノの言葉にますます頬に熱が籠る。

中西:ヒヒッ 重畳重畳。アルノさんは嬉しいよっ
まぁ、適当にかけといて?ちょっと着替えてくるから
…飲み物、温かいので良い?

井上:あ、お気遣いなく…

中西:今更じゃんっ 笑
ゆっくりしといて?

井上:うん…

そう言ってケトルの電源を入れ、お湯の準備をしてからアルノは以前寝室と言っていた部屋に入っていった。

井上:(そういえば…あの帽子結局被ってなかったな…なんでだろう、なんか…)

すぐにアルノは戻ってきて飲み物の準備をしてくれた

中西:はいっ、どーぞ?

井上:青い…紅茶?

中西:そっ、珍しいよねぇ。
色を出すのにコツがいるんだけど…上手くいったよ
バタフライピー、って言うんだよ。綺麗でしょ?

良い香りのする珍しい色の紅茶を一口飲んでみる

中西:ニオイはあんまりしないから
レモンと蜂蜜でアレンジしたんだけど…どう?

井上:ホッ ……落ち着く

中西:フフッ 良かったっ

井上:“あ、あれ…ふ、震えが、止まんない”

レモンのスッキリとした香りで緊張の糸が千切れて、蜂蜜の優しい甘さに安堵したのか、身体が震え始めると共に涙が溢れ出てくる

中西:………よく耐えたね、偉いよ、和は ヨシヨシ

井上:ふぇっ…?

中西:ここまで1人でよく耐えたよ、偉いエライ

そう言うとアルノは私を優しく抱きしめてくれた

中西:もう大丈夫だから、気を張らなくて大丈夫だから

そんなアルノに身を任せようとしたけど…たまたま寝室のドアが閉じ切ってなくて……

井上:……えっ?

中西:ん?……アチャァ、見られちゃったか

見えてしまった……
恐らく盗撮と思われる、大量の私の写真が………

中西:もう少し時間かけるつもりだったんだけどなぁ

井上:なん、で……?

私はアルノを突き飛ばそうとしたが、上手く身体に力が入らず、抱きしめられたまま、だけでなくあろうことか強烈な眠気に襲われて、眠りそうになってしまっていた

中西:ん?一目惚れだったから

井上:一目、惚れ?

中西:そ、私の好みドストライクだったんだよ?
最初は我慢してたんだけど、ねぇ…

思えば…なんで私の居場所が分かったのだろう?
なんでアルノが来たらストーカーはいなくなったの?

中西:関わるうちに益々惹かれちゃって…
和が魅力的すぎるのが悪いんだよ?

それだけじゃない、ストーカーの気配がある時は必ずアルノがいない時だったし、あの帽子…

中西:しっかりしているようで意外とドジっ娘で、抜けていて、隙があって…そんな姿が

ストーカーの気配がする時はあの帽子を被った女性が必ずいた。それにストーカーが始まったのは、アルノからお揃いのキーホルダーをもらった後くらいだった……

中西:その可愛い笑顔が…私以外の人間に向けられるのが…我慢ならなかった

芋づる式に違和感が出てきて、その全てがこの結果を肯定していた。

井上:ど、うし、て?

中西:あ、居場所が分かったのはね、コレっ

そう言うとアルノは私のバックにつけていたトカゲのキーホルダーを手に取り

中西:コレにGPS仕込んどいたんだぁ
ち・な・み・にっ!!私のにも仕込んでいるから、和が望めばいつでもどこにいるか分かるよ? ヒヒッ

井上:ヒッ

最初から…だった、の……?
親友と思っていたのは…わたし、だけ………?

中西:私も親友と思っているよ?
それだけじゃなかったけどねっ 笑
大丈夫、手荒なことはしないから、安心して?

井上:信じ、らr………

そこで私の意識は途切れた




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〜数日後〜

中西:マジダルいよねぇ

“ヴヴ”

中西:ん?……フフッ ちょっとごめん 笑

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井上「今日も行っていい?」

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中西:(もぉ、可愛いなぁ 笑)

“最近ご機嫌だね?アルノ”

中西:えぇ〜?そんなことないけどぉ? 笑

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中西「当たり前じゃん笑」
「今日遅いから合鍵で先に待っといてっ」


井上「分かったっ!!」
「その……」


中西「分かってるけど…」
「直接おねだりされたいなっ笑」


井上「うん、分かった///」


中西「可愛いっ( ^-^ )」


井上「うるさいっ///」

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Fin

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