終わらない夏、夕暮れと君
少し季節外れだが、まだ夏を終わらせたくない僕らは少し遠出をして、川に遊びにきた
理子:冷たーいっ
◯◯:日差しは暑いけど、流石に川の水は冷たいね
理子:あ!お魚だ!!
◯◯:だn
理子:えいっ
可愛いかけ声とは裏腹に、素早い動きで川魚を掴む理子
あまりの早技に空いた口が塞がらない
理子:◯◯〜、捕まえたよぉ〜、へへっ
◯◯:………
理子:◯◯?
思わず思考停止していたが、理子に呼ばれて復旧する
◯◯:いや、捕まえてどうするんだよ?
理子:捕まえられそうだったから思わず…
◯◯:とりあえず逃してあげなよ
理子:はぁ〜い…バイバーイ
優しく握っていたのか、川魚は離されると元気に泳いで逃げていった
理子:……くらえっ
その行方を目で追っていたら、理子が急に手で水をかけてきた
◯◯:わっぷ…なにすんだよ!
理子:水辺に遊びにきたんだよ?
理子:水かけしなきゃもったいないじゃん!!
◯◯:…先に仕掛けてきたのはそっちだからな、後悔するなよ?
理子:フフッ、そっくりそのまま返してあげる
そう言うやいなやすぐにしゃがんで水に手を浸ける理子
その隙にオレは足で水を蹴り上げてかける
◯◯:ウオラァッ!
フランクに楽しむには少々野太い声を上げたけど許してほしい、やるなら、全力で、勝つ
理子:キャァアーッ!
オレのひと蹴りの水量に、思わず身を縮めて固まる理子
その隙にオレはその場にしゃがみ、両手をできる限り早く回転させて、素早く水をかけ始める
理子:ちょ、ま、◯◯!、本、本気すぎっ
◯◯:言ったろ?後悔するなよ?って!!
理子:にしても、だよ!
しばらく水をかけ合って遊ぶ
理子:ハァ、ハァ、ハァ
◯◯:ゼェ、ゼェ、ゼェ
お互いに疲れて岸辺に座る
理子:……
◯◯:……
しばらく無言の時間が流れる
理子:…もう陽が沈み始めたね
気付けば空は茜色に染まり、夜が訪れようとしていた
少し前まで、この時間はまだ陽が存在を主張していたのに…
理子:………来年も、一緒に遊んでくれる?
◯◯:…その前にまず受験を越えなきゃだろ
理子:別にりーは大丈夫だし、模試も合格圏内だから
◯◯:オレもそうだけどさ
オレは…いや、オレの勘違いじゃなければ、オレ達はお互いのことが好きだ
◯◯:……まぁ、忙しくなかったら付き合ってやるよ
ただ、終わりゆくこの夏のように、心地の良い今の関係を壊したくないから告白していないだけ
理子:なんでそんな仕方なさそうな言い方するのっ!
理子:なんなら今日も◯◯の方が楽しんでたじゃんっ!
◯◯:うるせーよ、赤ちゃん
理子:赤ちゃんじゃないっ!
笑いながら揶揄うオレに噛み付く理子
◯◯:谷口や小島に散々可愛がられているのに?
理子:それは!愛季や凪ちゃんが勝手に…
幸い、互いに志望している大学は一緒だ
お互い、模試は合格圏だし油断しなければ受かるだろう
◯◯:なんなら後輩からも可愛がられてるじゃん
理子:それでも!りーは!赤ちゃんじゃない!
まぁ、受験が終わったら決着をつけるつもりだ
◯◯:お?もう一戦するか?
理子:くっ……しないっ
それまでは…この関係を続けようと思う
◯◯:え?もうそれ以上ビショビショにならないだろうし、別に良いだろ?
理子:うるさいっ!///
◯◯:ごめんごめん
ここからは、陽が沈むのと同じように慌ただしく過ぎるだろう
◯◯:陽が落ちきる前に、着替えて帰るか
理子:うん……
こうやって遊ぶのも難しくなるだろう
理子:…◯◯!!
◯◯:ん?
それでも、いつか青春だったと
理子:…本当に、来年も一緒に遊んでくれるよね?
言うであろう今を
◯◯:もちろん!…じゃないと今日も来てねーよ
精一杯、楽しみたい
_____Fin
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