夏の調べ〜思わせぶりな幼馴染の先輩〜
なぁ、気づいとる?
“ ”な、今めっちゃドキドキしとんのやで?
‘ ’はいつになったら告白してくれんねや?
“ ”、待っとるで?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
昼過ぎ、某所にて
◯◯:ふぁあ〜〜、眠い…
午後の授業サボろっかな……?
保乃:◯◯おるーーーッッ!?
’クスクスッ‘
またきた…眠いのに…
◯◯:いまs
保乃:あ、おった!!お昼一緒に食べよっ
◯◯:田村先輩…声デカすぎるっす…
(コッチの想いも知らないで…いつもいつも…)
俺はこの先輩、田村先輩に惚れている。
保乃:ほらっ、早よ行こっ?保乃、お腹ペッコペコやわ 笑
まぁ、先輩はただの幼馴染と思っているんだろうけど 苦笑
保乃:なぁ、はよ行こやぁ…ちょっと恥ずかしいねん//
なら来るなよ…コッチはからかわれて大変なんだから
◯◯:いま行きまーすっ
保乃:ムゥ……
最近不機嫌になること多くない?
保乃:……ジーーッ
◯◯:屋上で……なんですか?
保乃:フンッ……
◯◯:えぇ〜……
自分で誘っといて置いて行くって…
保乃:なんで敬語なん?前はタメ語やったのに…それに…保乃って呼んで欲しいのに… ボソッ
……別にいいだろ、恥ずかしいんだよ。あと聞こえてるっつの
◯◯:ちょ、置いていかないでくださいよ
その後、無言で屋上まで行くがご飯を食べ始めると先輩の機嫌も治った
保乃:んまぁっ! やっぱり◯◯のママの卵焼きはうまいなぁ
卵焼きを食べられたけど…
◯◯:(卵焼き1切れで機嫌が治るなら儲けもんか…)
保乃:あ、◯◯?今週空いてる?
唐突に先輩が予定を聞いてくる。今週って何か……
◯◯:あぁ〜、アレっすか?
保乃:せや!花火大会、一緒に行こ?
◯◯:(ちょ、ズルいって!上目遣いもかわいすぎる…ッ!)
身長差はあまりないが、いかんせん先輩のスタイルが異次元すぎて座高だとそれなりの差ができる。そのため自然と上目遣いになるのだが…その破棄力は凄まじすぎる。
◯◯:…お誘いは嬉しいんすけど、あの人混みはちょっと
時期は少し早いのだが、かなり大きめの花火大会で屋台なども多く出ていかんせん混み方が尋常じゃない
◯◯:花火なら近くの神社からでも見れるk
断って少し高台にある近くの神社から見ないか提案しようとしたが…
保乃:ムゥッ!!!
頬をコレでもかと膨らませて怒ってらっしゃる…
保乃:ふぅ〜ん、そっかそっか…
いや、ちょっと怒り方尋常じゃなくない?毎年神社で一緒に見てるじゃん、今年もそれじゃダメなの?
保乃:せやったら別にええで! 他の人誘うだけだしっ
………なんて?
保乃:誰誘おっかなぁ〜、カフェの大園さんでもええしぃ、クラスの人…森田くんでもええなぁ…あ、◯◯のクラスメイトの山﨑くんもええやん!!
大園さん?森田先輩?山﨑?……ちょっとまてイケメン揃いじゃねぇか!大園さんはよく知らないが森田先輩と山﨑と一緒に出てくるってことはそういうことだろ?!
花火大会…花火が上がるのを2人で見ながら……
◯◯:………mす
保乃:ん?
◯◯:………kます
保乃:なんて?
◯◯:だから!!行きますっ!!
保乃:ニヒヒッ、じゃあ商店街の入り口に集合な?
うわ、してやられた…
◯◯:ハァ〜、わかりました
この人分かってて煽ってやがった…そんなんされたら勘違いしそうになるっての…
◯◯:時間、どうしますか?
保乃:そうやなぁ…花火が8時半からやから…屋台で色々食べたいし、ゆっくりしたいから…6時頃からどや?
◯◯:了解です…遅れないでくださいね?
先輩、冗談抜きでナンパとかされまくりそうだし
保乃:◯◯こそ遅刻せえへんようにな?
◯◯:しませんよ(今回は特に)
苦笑いしつつ返してその後は雑談で時間は過ぎていった
あれほどあった眠気は先輩と話したことでいつの間にか無くなっていた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
◯◯:(流石にちょっと冷えるから1枚羽織ってきたけどいらなかったかな?)
保乃:◯◯〜〜っ!!
カラカラと下駄を鳴らしながら、浴衣姿の先輩が現れた
◯◯:……(か、かわ…)
保乃:……ど、どうかな?
◯◯:………
保乃:何か言うてや…
◯◯:あ……か、かわいい、似合って、ます
先輩は白地に赤、薄桃の椿?牡丹?の花の柄の浴衣で紺の帯を締めていた
保乃:ホ、ホンマ?
◯◯:その……見惚れてしまって言葉が出ませんでした
保乃:ア、アホっ。いきなりそんなん言わんといてや…///
◯◯:す、すいません…///
夕陽以外の理由でお互いの頬を染めていた
にしても照れると元々の肌の白さとの対比で可愛さと綺麗さが際立っていた
………行かねーの?
◯◯:あの、行かないんすか?
保乃:……何も気付けへんの?
あり、さっきまでいい感じだったのに少し不機嫌?
◯◯:えぇっと…
保乃:……ム
ちょっと待って最近不機嫌になる率高すぎないか?
◯◯:(そういえばこの前…一か八か…)
誰かに聞かれるのが嫌だろうと気遣い、耳元で囁く
保乃:ちょ、ぇえ!?タ、タイミング早すぎひん!?
動揺するくらいなら言わせなきゃ良いのに
◯◯:全然わからないですよ、太ったなんて (ボソッ
保乃:ほにょっ!?……あ“?
あれ?さらに怒ってらっしゃる?
保乃:太ってへんし…なんやったら痩せたわ!このど阿呆!!
◯◯:痛ってぇぇええっっ!!!
後頭部は…後頭部はダメだって…致命傷になる……
保乃:髪切ったことに気付かんかい!バカ!!
言われてみたら確かに少しスッキリしている…?
◯◯:すいません…
とりあえず素直に謝っておく…確かにデリカシーなさすぎたけど…ほぼ毎日会ってたら気付けないよ トホホ
保乃:フンッ……今日は全部◯◯の奢りね?
◯◯:ウッス……
あぁ、さらば俺の諭吉さん……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
保乃:ングング やっぱ出店の食べ物は旨いなぁ
移動し始めてから俺の失態は流してくれたようで、いつものように接してくれて気まずい思いをせずに済んだ
◯◯:やっぱ雰囲気があると良いですよね
俺の財布は寂しくなったが…こうも美味しそうに食べている先輩が見れたのなら、逆に儲けものだ
保乃:次はなに食べよかなぁ…その前に喉渇いたなぁ
まぁ、味が濃いものをたくさん食べたから喉も渇くよな
◯◯:その、コレ、、飲みます…?
保乃:ほにょっ?
さっき買ったサイダーを先輩に差し出す……うるさいな、間接キスになるのは分かってるつーのっ
保乃:ええの?
◯◯:そうじゃなかったら言わないです
保乃:ありがとぉ
ほらっ、先輩は気付いてないっぽいしいいんd
保乃:ン……間接キス、やんな///
◯◯:ッッ?!?!ゴホッ、ゴホゴホッ///
気付いてたのになんでそんな躊躇なかったのっ!?
保乃:ちょ、大丈夫?
先輩が咳き込んでいる間背中をさすってくれた
◯◯:ハァハァ……あざす
◯◯:そろそろ良い時間ですし、場所取りに行きませんか?
保乃:せやな、じゃぁとっておきの場所に案内したる!
どうも先輩は良いところを見つけてくれていたようでそこに向かって移動する
◯◯:(手……繋いでも……)
屋台通りはやっぱり人が多く、これを言い訳に手を握ろうと何度か挑戦しているのだが……
保乃:めっちゃええ穴場見つけてん!
◯◯:ホントですか?笑
(無理、だぁ〜……)
想いがバレそうなのもあって握れず、結局ポケットに隠してしまう
保乃:疑っとるんや?ええ場所すぎて腰抜かしても知れへんで?笑
◯◯:ハイハイ、期待してまーす
他愛のない会話をしながら進んでいたが、急に何か引っ張られたような感覚がした
◯◯:先輩…?
保乃:な、なに?
その感覚を辿ってみると、先輩が服の裾を摘んでいた
保乃:い、いや人が多いから逸れたら大変やし…
そうならへんように、こうした方がええかなぁ、って///
◯◯:た、確かに逸れたら大変すもんね
そんなされたらますます勘違いしそうになるじゃん…先輩はただの幼馴染としか見てないんだ、勘違いしちゃダメだ
◯◯:じゃ、じゃあ案内お願いしますね
保乃:う、うん!ま、任せとき!
そこからは少し気まずさとぎこちなさとともに先輩のとっておきの場所に向かった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
保乃:どや?ええ場所やろっ?
◯◯:確かに…盲点でした…
先輩のとっておきの場所は、観覧スポットとして周知されている橋……の下の河川に降りる土手だった
◯◯:灯台下暗しと言いますけど…これは…
保乃:東大…?
いや、その東大じゃない
◯◯:「灯」火の置かれた「台」で「灯台」、よくドラマとかで海岸の端っこに出てくるでしょ?船が帰ってくる場所の目印とかにしている灯りの建物です
保乃:あぁ、その灯台な!
たまに天然だよな先輩って……たまにじゃなくてそこそこか
保乃:なんか失礼なこと考えてへん?
◯◯:まさか!
心読むのやめてもろても
保乃:ま、ええわ
保乃:みんな橋があるからあんま見えへん思うのか人が意外とおらんねん
◯◯:だけど実際は橋の上と負けず劣らずよく見える、と
先輩は俗に言う三角座りのようにして、俺は足を伸ばしてその場に腰を下ろした
ちょうどそのタイミングで花火が上がり始めた
保乃:フワァ………
色とりどりの花火の光に照らされた先輩はとても…
◯◯:綺麗、です……
保乃:やんな……
綺麗で、俺の視線は先輩に吸い寄せられていた
幸い、先輩は花火に夢中なようで、コッチの様子には気付いていないようだ
◯◯:(あぁ、やっぱり…好きだなぁ)
自分の想いを再確認する
先輩に気付かれる前に視線を花火に向ける…直前に先輩の左手の位置をチラ見する
◯◯:(少しくらい、いいよな)
姿勢を変えるフリをして少しだけ、ほんの少しだけ右手を先輩の左手に重ねる
心臓がありえないくらい早鐘を打っている
◯◯:(悟られるな、アクション起こすな、自然だ、自然な感じで気付いていないフリをするんだ…)
保乃:なぁ、◯◯?
◯◯:ヒャ、ヒャいっ!…はい///
あまりにも緊張しすぎて噛んでしまった…クッソばれるじゃねぇか!!
保乃:フフッ、なに今更緊張してるん?
◯◯:は、花火に夢中になってただけです///
恥ずかしすぎる…
保乃:そう?じゃあ、そうゆうことにしたる 笑
一瞬だけ先輩はコチラに視線を向けて、優しく笑った
保乃:◯◯はさ……保乃のこと、どう思てる?
◯◯:どう、とは?
思わぬ質問に、心臓がさっきよりもさらに早く鐘を突き始める
保乃:保乃のこと……好き?
先輩の声は大きくはなく、なんなら花火の音にかき消されそうなほと小さかったが、不思議と聴こえた
◯◯:……好き、かもですね? 苦笑
たぶん、先輩はすごく勇気を振り絞ってくれたのだろうけど、俺は今のこの心地良い関係を壊すのが嫌で、幼馴染という理由だけで隣にいれる権利を手放すのが怖くてはぐらかすような答えしか返せなかった
◯◯:少なくとも、嫌いな人とはこうやって一緒に花火を見には来ませんね
保乃:保乃はな…
そんな俺とは対照的に、答えを示してきた
保乃:これが、答え
俺が一方的に少しだけ重ねた右手。それに気付いていた先輩は俺の右手に、自分の左手の指を絡めて繋いできた
◯◯:………
だけど俺はやっぱり怖くて、ちゃんと答えを返すことができず、黙り込んで花火を見ることしかできなかった
◯◯:(あぁ、もうすぐ花火が終わる…このまま……このまま今この瞬間が止まってしまえば良いのに…)
そんな願いも虚しく、花火は終わってしまった
花火は終わってしまったが、繋がれた手は離れることなく、そのまま立ち上がり、帰り始める
◯◯:(このまま、帰りたくはないなぁ)
そんなことを思うものの、倫理観と臆病な自分が邪魔をしてまっすぐ先輩の家への道を辿る
そして、そのまま先輩の家に到着してしまった
◯◯:……今日、誘ってくれて有難うございました
保乃:ええよええよ、保乃こそ付き合うてくれてありがとぉ
名残惜しくて手を繋いだまま誘ってくれたお礼を言う
◯◯:(流石に…もう、離さないとおかしいよな…)
離したくはなかったが、これ以上繋いでいるのも不自然だと思い、手を離
保乃:◯◯!!
そうとした瞬間、先輩が手を引いてきた
保乃:さっきの返事、保乃、待っとるで!!
そう言うと先輩は不意に引かれてバランスを崩した俺の
保乃:チュッ///
◯◯:えっ…?!///
保乃:ほな、またなっ///
頬にキスをして自宅に帰っていった
Fin
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