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その拳を追いかける5

“ありがとうございました!!”

休憩終わりはまず、柔道部が乱取りと共に紹介をした

平尾:やっぱ生で見ると迫力があるね

正源司:この距離でも振動が…

平尾:よーこは慣れてるんじゃないの?

正源司:全然別だから!!

正源司は、小学生時代に空手をしており、そのことを知っている平尾だったが

正源司:それに、自分がやっている時は気にしてなんていられないし

別物であると否定する

“次は空手道部です”

“”押忍ッ!!“”

そんなことを話していると、次の部活動紹介が始まった

正源司:あっ!?!?

なんとなしに見ていた正源司だったが、とある人物の姿が目に入り思わず大きめの声を上げた

平尾:?!、どうした?

正源司:あの人!あの!端にいる白帯の!

平尾:…あぁ、さっき話してた人?

正源司:そう!

そこには、昨日たまたま助けてもらう形になった少年がいた

部長:空手道部です!よろしくお願いします!

“”押忍!“”

まず、並んで挨拶をしたと思うと、件の少年が1人畳の中央やや後ろに進み出て、他の部員は畳から降り、ステージ付近に下がった

件の少年、◯◯はどうやら1人で演舞をするようで、一つお辞儀をした

…その後ろで何故か紹介をしていた部長が軽く頭を抱えていたが

◯◯:スゥ…鷺碑(ローハイ)ッッ!!!!

後ろにいる部長が頭を抱えていることにも気づかず、◯◯は呼吸を軽く整え、演舞を始める

部長:まずは形(かた)を見ていただこうと思います

部長:今、披露しt〜〜〜〜

正源司:……なんで?

平尾:どうしたの?

空手道部の部長が説明をしているが、正源司の耳には入っていないようで、◯◯から一切目を離さず呟く

正源司:おかしいの

平尾:おかしい?

平尾は◯◯の動きを改めて見る

平尾:……どこが?

◯◯の動きは素人目にも、鍛錬を積んできたであろうことをうかがわせ、どんな目的の動きなのか分からなくても、迫力、美しさを感じさせるものだった

正源司:全部…

平尾:……え?

正源司の言葉に思わず◯◯から目を離して正源司を見る平尾

正源司:下手くそ、汚い、ってことじゃない

正源司:私よりレベル高いやつをしているし、ものにしている

その視線を感じて疑問に答える正源司

正源司:それが、おかしいの

平尾:そうなの?

通常、帯でその人がどの程度やってきたのか、実力なのかがわかるが、白帯はその中でも最低値、初めて締める帯となる

実際、ステージ前に下がった部員は、よくイメージのされる白や黒だけでなく、茶色や水色など色とりどりの帯を締めている

正源司:私より下の帯を締めてるのに、あのレベルの形(かた)をしているのがおかしいの

平尾:そうなの?

正源司:道場とかで違うところはあるだろうけど…普通は帯、実力に見合った形(かた)を覚えて稽古していくから

平尾:つまり、本来ならあの先輩ができるカタ?じゃないってこと?

正源司:うん

正源司:白ならせいぜい平安だもん

正源司:なのに、明らかに帯に見合わないのに高レベル、練度だから…おかしい

◯◯:押忍

そんな話をしていると、◯◯の形(かた)は終わり、挨拶をして下がっていく

部長:続いt〜〜〜

すぐにその謎は解けるのだが、今は疑問に思いつつ、そのまま紹介を見ていく

正源司:(いや、昨日の感じだったら黒…とは言わなくても限りなく近いはず)

正源司:(それにこの難度、練度の形(かた)をしているんだもん、帯を忘れた?)

あまり集中はできていないようだが

部長:以上が形(かた)でした

部長:続いて組手を見ていただきます

部長:ところで皆さん、空手は2種類あることをご存知でしょうか?

部長:1つは高校部活で主流の伝統派空手

部長:もう1つは極真が有名な、フルコンタクト空手です

部長:形(かた)はどちらも似たようなものなのですが、組手は大きく違います

部長:うちの選手はどちらかをしているので、皆さんにはどちらも見ていただこうと思います

部長:うちのエースが、ハイレベルな組手を見せてくれると思います

周囲の期待を煽る部長だったが

◯◯:(説明ダル…)

日向:(やめてくれよ、ボコられるだけなのに…)

◯◯と日向には重荷となっていた

部長:まずは、伝統派空手の組手をご覧ください

その言葉と共に、審判役生徒、防具をつけた黒帯の生徒

平尾:おっ、あの先輩するみたいだね

正源司:え?

そして白帯の◯◯が出てきて、黒帯の生徒と並ぶ

白帯 対 黒帯の構図に正源司だけでなく、他の生徒もザワザワとし始める

審判:正面に、礼!

エース:押忍!

◯◯:…押忍

正面、審判と挨拶をし、最後に向かい合って挨拶をする

一旦ここで部長の説明が入った

部長:伝統派空手の競技は、流派により細かな違いがあるのですが、今回は競技としてポピュラーなルールの1つ、全空連ルールでやります

部長:高総体でもこのルールでやることになります

部長:ポイントが取れる技など色々あるのですが、大雑把に言うと、有効打を確実に決め切れるタイミングで出し、当てきることをせずに残心をとるとポイントを取れます

部長:3分間、ポイントの取り合いをして、8ポイント差がつくか、ポイント差がつかなかった時は多くポイントをとったほうが勝ちとなります

部長:ただ、今回は時間もあまりないのでポイントを先取した方が勝ちとします

審判:構えてっ……

その声で、◯◯とエースと言われている生徒が構える

黒帯の生徒がオーソドックスな構えをとる中、◯◯は若干腰高く足幅も狭めに構える

◯◯:(よりによってこの人が相手なのがなぁ…)

エース:(絶対に!、恥をかかせる!!)

審判:始めッ!!

◯◯:ッ!?(いっ、きなりかよっ)

開始の合図とともに、黒帯の生徒が

エース:ェエエイッ!

いきなり、顔面への突きを出してきた

◯◯は面食らいつつも、バックステップをして冷静に間合いを外す

その後はお互い(と言いつつほとんど黒帯の生徒がほぼ一方的に)フェイントなど仕掛けて様子を見るこう着状態となる

平尾:どう?

ルールはよく知らない平尾は、経験者の正源司に尋ねる

正源司:どう、って言われても…黒帯の人が当たり前に強い

平尾:やっぱり?

平尾:白帯の人、素人目に見ても全然攻めてないもんね

エースの生徒の突きや蹴りの動きに、その技がくるであろう位置に手を動かし反応する◯◯

正源司:だけど…

平尾:だけど?

正源司:白帯の人も凄い

正源司:動きに遅れないだけじゃなくて、動き出す前に防いでいる時もある

平尾:そうなの?

エースの前手の突きを、同じく前手で体の外側に逸らし、その突きに隠された本命の逆突きも捌く

正源司:正直、天と地の差があっておかしくないからね、帯で言うなら

正源司:今ので決まってもおかしくなかったし…

正源司:反応が良すぎる

平尾:そうなんだぁ

息も詰まるような緊張感の中、平尾の質問に答えつつも2人から目を離さない正源司

◯◯:(派手技狙いなのは分かるけど…かといって俺の勝機はほとんどないしなぁ)

一方、実際に組手をしている◯◯は、反応は素早いが思考自体はのんびりとしていた

実際、躱し捌く分には余裕なのだが、伝統派でしてきたわけではないため、カウンターまでする余裕はない

◯◯:(…この後もあるし、博打うつか)

思案するのは長かったが、覚悟自体はすぐに固め、実行に移す

相手の一挙手一投足の間合いに踏み入れる

◯◯:(ウワッ…相変わらずすっげぇ圧)

その瞬間にエースからの圧が一気に増す

◯◯:(けど、ここからじゃ、、ないとっ!)

だが、覚悟を決めた◯◯はその圧力を意に介さず仕掛ける

ほとんどしていなかったステップを細かく踏み始め、間合いの縁ギリギリと一足分内側を行き来する

もちろん、エースもステップのリズムを上げ、即座に対応する

エースがほんの僅かに間合いを離した時に◯◯が動く

前手の突きを囮に後ろ足を相手に気付かれないよう少しだけ寄せる

エースは突きに反応し、前手で塞ぎつつさらに少しだけ離れる

◯◯はそこで追わず一瞬溜めを作る

今度は逆にエースが前手の突きをフェイントに大きく踏み込んでくる

◯◯: (釣れたっ!!)

だが、それは◯◯の狙い通りで予定通り前足だけ後ろ足に寄せつつ下がる

そこにエースは踏み込んだ勢いでもう一歩刻みつつ、逆手の中段突きを打つ

◯◯:(ちょい近かったっ)

◯◯はそこまで読んだ上で、若干読み外れた間合いを修正しつつ、引いた前足で上段への裏回し蹴りを出す

◯◯:ゼェエエッ

正源司:あっ!?

平尾:な、なになに!?

正源司:投げられる

その通り

エース:(見え見えなんだよッッ!!)

エースは◯◯の狙いを読み、敢えて釣られたフリをしていた

◯◯の裏回し蹴りに合わせさらに踏み込み、蹴り足は自身の手で抑えつつ、後ろ足で◯◯の軸足に足払いを仕掛ける

正源司:ヤバイッ!!

エース:(もらった……ッッ!!!!)

_______to be continued

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