その拳を追いかける4

??:最初の動き、見てなかったの?

意識がトび、リーダー格の男は聞こえないが、そう疑問を口にしつつ残心をする少年

??:ねぇ

モブ1:あ“?

リーダー格が確実にないことを確認した少年は最初、股間に膝蹴りをしたモブその1に声をかける

??:2人が起きたら伝えといて、オレに2度と関わるな、って

モブ1:んで、俺が…

??:それとも、まだやるの?

??:もう……加減しないよ?

モブ1:わ、わかった…

股間を蹴られた痛みはいまだ引いておらず、この状態で追撃を受けたら、と考えて血の気が引いたモブ1は少年の提案を受け入れた

??:あ、それと

モブ1:ま、まだなにか?

??:対して実力もないのにオラついて、挙げ句の果てに女子を複数で囲むなんてダサいよ?やめた方が良いよ?

モブ1:(助ける気あったじゃねーかっ!!)

と思いつつ、藪を突く必要はないだろうと頷くモブ1だった

そして少年はそれを伝えると、まるで何事もなかったかのように落としたリュックを背負いなおし、もとの予定通りフェンスを

正源司:ねえっ！

乗り越えられなかった

??:……なに?

数瞬、間が空いたが返事をする少年

正源司:ありがとう

少年の申告だと今朝も今も助ける気はなかったようだが事実は事実、助けてもらったことにお礼を伝える正源司

正源司:今朝も今も、助けてくれてありがとう

なぜお礼を言われるのか分からないと言った様子でまばたきをしたあと

??:はぁ

軽く首をすくめるようにして会釈をしながら返事をする少年

かと思ったら、返事をするとすぐにイヤホンをつけフェンスを乗り越えてしまった

予想以上に薄い返答に呆然と乗り越えるのを見ていた正源司だったが、少年が着地した音で我に返り、動き出す

正源司:ちょ、待ってよ！

慌てて少年の後を追ってフェンスを登り始める

??:……下着、見られますよ?

正源司:なっ、ちゃんと短パン履いていますっ!!///





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





正源司:ってことがあってさ〜、ありえなくない!?

翌日、午前の授業も終わり、昼休みとなって昼食を食べながら平尾にことの顛末を話す正源司

平尾:私はそれよりもよーこの運の悪さに驚いてるよ

結局助かりはしたが、前日のことはどちらとも正源司自身も怪我などする可能性があり、1日の内に2度もそんな目にあった正源司の運の悪さに平尾は驚いていた

平尾:よく何事もなく済んだね

正源司:それは自分でもそう思う…でもっ！

平尾:はいはい、分かったから、ありえないね〜…で、部活何に入る?

正源司:……流してない?

平尾:ないない…やっぱりブラス?

正源司:…ジーッ

平尾:実際に言う人初めて見た

正源司:流してるっ!

平尾:ごめんごめん

しばらくじゃれ合う2人

正源司:…一応、ブラスのつもりだよ

平尾:んじゃ、一緒だね

正源司:ダンス部も気になってはいるんだけどねぇ…この後次第かな?

平尾:午後は通しで部活動紹介だっけ?

ご飯も食べ終わり、午後のことについて話し始める

正源司:別に大体決まっているからしなくても良いのにね

平尾:まぁ、授業よりはマシじゃない?

正源司:それはそうっ

気怠げだった正源司だったが、平尾の言葉には強く、同意していた

その後は他愛もないことを話して時間を潰す2人だった





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





2人が通う高校は豊富な部活動があり、前半は口頭での説明で大体終わる部活動から紹介していった

平尾:スポーツ系は内輪ウケのネタを紹介に挟むなよ面白くない

正源司:毒出てるよひらほー

平尾:だって面白くないじゃん！

正源司:それはそうだけど

平尾:内輪ネタは内輪だから盛り上がるんだよっ、部外者に同じノリ求めんなっ！

正源司:どうどう、落ち着いて

まだまだ熱が冷めない平尾だったがひとまず矛をおさめる

前半が終わり、休憩兼後半の準備の時間になる

体育館ステージとその前方のある程度のスペースが紹介の場で1年生達はそれぞれが見たい場所から部活動紹介を聞いて、見ていた

正源司と平尾は2階のステージ正面、入り口の上にある小スペースの最前で紹介を見ていた

今は次に発表するであろう武道系の部活だろうか、道着を着た上級生が畳を並べてスペースを作っていた

その頃、体育館に隣接している武道場に備え付けられている更衣室でとある男子2人が話していた

??1:昨日のグループLINE既読ついてたよな?

??2:大量にきてて一瞬開いて既読だけつけといた

??1:ハハッ、◯◯らしっ

既に道着、グローブ、レガースを着用した男子が着替えている男子の答えに笑う

◯◯:出るつもりなかったし

??1:いやいやお前が出ないとかないだろ、フルコンメインは唯一じゃん

◯◯:だからだよ、1人しかいないんだからわざわざ説明する必要ないだろ…

◯◯:今日はそのまま行くつもりだったから持ってきてたけど

◯◯、と呼ばれた男子はブツブツ文句を言いつつも手早く着替え、帯を締める

??1:あれ、白帯?

◯◯:黒もあるよ

??1:最初から黒締めときゃいいのに

◯◯:嫌なんだよ、伝統派の方は試験とか受けた訳じゃないから

??1:変なとこ真面目だよな、◯◯って

◯◯:やるにしても組手だけで良いのに…日向は組手だけ?

日向:そ、しかもフルコン紹介の

日向、と呼ばれた男子は手にヘッドギアも持っていた

日向:つまりは生贄、ホント嫌になるわ

やれやれ、といった様子で肩をすくめる日向

◯◯:1番日向がマシだし仕方ないだろ……グローブ外してやれよ?あってもなくても変わんないから

日向:ケッ、余裕綽々ですかいそうですかい、既に10年近くしている人は違いますねぇ

実際、それ位実力差があることは重々承知している日向はワザとイヤミっぽく言う

◯◯:だいたい、なんで形まで…

そんな日向の言葉は聞こえていないようで、◯◯はまた、ブツブツと文句を言っていた

日向:……グローブ外せって、冗談だよな?

_______to be continued