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仕事終わりの癒やし

◯◯
「ただいまぁ…」



仕事終わり、できる限り物音を立てないようにしてドアを開ける



◯◯
「だよなぁ…」



一人暮らしとしては少し広い2DKの我が家、ダイニングの入り口から苦笑いしつつ見つめる先には、ソファーに小さく丸まった影が1つ



◯◯
「遅くなってごめんね、理子」



最近染めた茶色の髪に指を通すようにして義妹の頭を撫でる


ぬいぐるみを抱えて眠る表情は穏やかで、先ほどまで感じていた疲労感が消えていく


理子と暮らすようになってそろそろ1年が経つ



◯◯
「あんなに人見知りされていたのに気付いたらなぁ」



大学進学を機に、家に転がり込んできた時のことを思い出し感慨深く思う


理子は俺が中学生くらいの時に父さんが再婚してできた義妹で血は繋がっていない


最初は人見知りされてなかなか打ち解けられなかったけど、気付いたらこんなに懐かれていた



理子
「おにぃ、ちゃん…?」



昔を思い出して頭を撫で続けていたら、起こしてしまったようだ



◯◯
「ゴメン、起こしちゃったね」


理子
「んーん、だいじょーぶ…」



まだ眠いのだろう、いまいち呂律が回っていない口調で話す理子。そんな姿に更に癒される



理子
「あ、ご飯温めるね?」


◯◯
「いや、自分でするよ。理子は寝な?」



そろそろ日を跨ぐ時間帯、さっきまで寝ていたためそう言うも



理子
「やだ、お義兄ちゃんとお話ししたいもんっ」



そんなワガママを言って聞かない


…正直義兄とはいえこんなことを言われたら嬉しい



◯◯
「明日も早いんでしょ?早く寝なさい」



だが、可愛い義妹だからこそ言い聞かせる



理子
「ヤダっ!お義兄ちゃん最近いっつも帰りが遅いんだもん…」


◯◯
「うっ……」



年度末にさしかかり、残業続きなのは事実なので思わず答えに詰まってしまう


見た目の割に大人びた言動の理子が、珍しく子供っぽいと思ったらだいぶ寂しい思いをさせてしまっていたようだ



◯◯
「それでも!だ」


理子
「い・や・だ・っ!」


◯◯
「ハァ〜…次の休み、一緒に出かけよ?それで許して」


理子
「………分かった」



こうなると頑固な理子がひとまず納得してくれたようで、内心胸を撫で下ろす



理子
「でも!温めまではりーがする!」


◯◯
「分かったよ、それじゃ着替えてくるね?」


理子
「うんっ」



着替えに行く前に、感謝も込めて再度頭をひと撫でする



理子
「へへっ」



ご機嫌なようで足取り軽くキッチンに向かう理子とすれ違うように着替えをとる



部屋着に着替えたついでに明日の準備をしていると



理子
「お義兄ちゃん、できたよっ」



そう声をかけられる



◯◯
「じゃ、約束通り…」


理子
「分かってるよ…おやすみなさい…」



あからさまに元気がなく、しょんぼりした様子につい甘やかしたくなるが、ここは心を鬼にして見送る



◯◯
「オヤスミ」


理子
「おでかけっ、絶っっ対だよ!」


◯◯
「ちゃんと守るから、早く寝なさい」


理子
「はーい…」



寝室に入る理子を見送りながら、頑張って作ってくれたであろうハンバーグを口に入れる



◯◯
「うん、美味いっ」



可愛い可愛い義妹のためにも、早く帰れるように頑張ろうと改めて思った◯◯だった



__________Fin

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