二極の二人

A：最高に美味いアイスコーヒー飲む？
B：最低に不味くて熱いお茶飲んでるからいいわ。サンキュ。
A：何でそんなの飲んでんだよ。
B：よく行くケーキ屋でもらったから。
A：まあ、女子に冷えは禁物だからな。
B：急に何の話だよ。
A：珍しいじゃん。何やってんの。
B：Switch。
A：Switchやってるって言うかなフツー。
B：やってんだもん。
A：見たらわかるから。何のゲームやってるか聞いてんだよ。
B：『パワーウォッシュシミュレーター』。おもろ。
A：あー、ちょうどいまトライアルやってるやつね。
B：知ってんだ。ならぜひお前もやってみてほしい。
A：いいよ、俺まだスプラやるから。
B：まだやってんの。いい加減塗るのは止めて、汚れを落とす方にジョブチェンジしなって。
A：ほっとけ。てかやったことあるし。
B：あそう。
A：ちょっと前に友達んとこのVRでね。
B：ほーん。
A：それよりドラクエ買ってくれよ。
B：やだよ。原作もリメイクやったし。
A：俺やったことないもん。
B：知らん知らん。ロマサガだったらいいけど。
A：えー、ちょっと考えさせて。
B：へいへい。
A：最近はゲーム好きの女子も増えてるからね。
B：そうなん。別にどうでもいいわ。
A：今度友達とUSJ行こうって話しててさ。
B：あー、マリオとかあるやつ。
A：そうそう。
B：へー。
A：絶対行かないでしょ。
B：まー、ねー。
A：完全インドア人間じゃん。
B：やっぱコロナがねえ。
A：まだ言ってんのかよ。もう大丈夫だろ。
B：あら、たくましい。
A：そんなんで俺最近、めっきりアウトドア派になってきたから。
B：ふーん。
A：てことでちょっと、お金がさー。
B：むりむりむりむり。
A：えー、そこを何とか。
B：やだよ。
A：料理とか片付けとかいろいろ手伝うからさー。
B：いつも手伝え。
A：あれ、最近ちょっとお肌きれいになったんじゃない？
B：最近疲れて老け気味だわ。そんなんでお金あげるわけないだろ。
A：けち。
B：はいはい。早く好きなゲームを自由に買えるぐらい稼げるようになってくだちゃいねー。
A：うざー。もういいよ。クソバ……
B：はいでたー。すぐそうやって口わるくなる。
A：うるせーうるせー。
B：うっせえわ、てか。
A：ふっる。やば。何その古典ギャグ。
B：古典なの？
A：たりめーだろ。時代についてこいよ。
B：別に取り残されてる感もないけどね。
A：もういい、もういい。全然合わないじゃん。
B：何がよ。
A：考えというか価値観というか。
B：そりゃそうでしょ。みんな違ってみんないいってね。
A：それも古いからね。
B：こういうのに古いとかなくない？
A：関係ないから。
B：そんなの？
A：いちいちうるせーな。
B：たのしー方がいいじゃん。
A：つまんねーんだよ。
B：あらま。
A：つーか俺らってほんと正反対だよな。
B：んなわけないでしょ。
A：ほらもう逆だし。
B：あらま。
A：何もかも真逆。好きなもの。考えること。そして、それそれの立場。
B：うん。
A：だからさ。
B：え……
A：わかるだろ。
B：……
A：……
B：……
A：俺、まだそっちに行く気ねーから。
B：……
A：さっと成仏してくれよ。
B：……
A：……
B：勝手に殺すな。
A：おいー。
B：しかも最初っから、それとなく女と解釈できそうな設定にしてやがって。
A：うへ、ばれてた。
B：当然だろ。お前の考えることなんて全部お見通しだからな。
A：いい感じで終わらせたかったんだよう。
B：ざけんな。てかもう何時だと思ってんだ。子供は早く寝なさい。
A：はーい。
B：おやすみ。
A：おやすみなさい。バカ親父。
B：……
A：……
B：こいつ天才かよ。