SOSへの反応

 古代のインドの医学によると、人間の心の質には「純質」「激質」「惰質」の三つがあるという。激したり怠惰になったりするより、純粋でありたいところだが、其の為には牛乳を口にするのがいいとされた。心を落ち着かせる等の作用が有るからだ。
 但し乳を絞った後4時間以内に飲まなければならない。そうでないと激質が強まり、苛立ってしまうという(ヴェルテン著『ミルクの歴史』)。新鮮なうちにという戒めは痛み易さ故だろうか。
 冷蔵庫が普及した現代でも牛乳の扱い難さに変わりはない。コロナで外食需要が落ち込む中、学校給食も無くなる年末年始に生乳が大量に余ってしまう。乳業団体がそんなSOSを出していた。廃棄をさけるため普段より多めに飲んだり、料理に使ったりして欲しいと。
 呼びかけには反応があった。ローソンがホットミルクを半額とし、売れ行きが大きく伸びたと昨日の経済面にあった。スーパーでもよく売れているのだろうか、牛乳が少なくなっている気がする。今のところは大量廃棄を見ずに進んでいる様だ。
 キャベツでも何でも、豊作になった農作物が捨てられるニュースに触れると悲しくなる。必要なところに必要なものを配分するのが市場の役割だが、其処には限界もある。時には今回の様な呼びかけで食品ロスを減らす事が出来れば。
 受験などを控え、気持ちが落ち着かずに眠れない時には、温かいミルクがいいと聞いた事がある。熱燗ではなく。

ISBN978-4-562-07175-3のページ15-16から

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