【Audible本の紹介35】深夜特急2マレー半島・シンガポール編(沢木耕太郎)
今回紹介する本は、1992年に初版が発行された、日本人青年のアジアからヨーロッパへの一人旅の記録と、その途中での思索を追った「深夜特急」の、第2巻のマレー半島・シンガポール編です。この前、最終の第6巻に関する記事を書いたんですが、第2巻について書いてなかったことに気が付いたので、あらためて書いてみます。
第2巻では、沢木さんはタイ(バンコク)、マレーシアと陸路で移動し、シンガポールに到着します。
旅にだんだん慣れてきて、現地の人とのふれあい方もいろいろな形になります。子どもとのやりとりに印象的なものが多いかな、という印象があります。同じように旅しているヨーロッパの若者とのやりとりも多くあります。
ずいぶん長居して熱気を感じていた香港との違いを感じつつ、東南アジアのいろいろな都市を訪れるたびに、沢木さんの心の変化が感じられるのが第2巻の特徴です。
なお、現在、「深夜特急」は、第1巻から第6巻まで、全てをAudibleで聴くことができます。
あらすじ(1~6巻)
深夜特急は、1970年代(前半)、「インドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスで行く」と思いたった著者の沢木耕太郎さんが、香港を皮切りに、ユーラシア大陸横断の旅をした話です。
日本の若者が、身一つで世界を見に行く、貧乏旅行ブームの時代であり、その文学的なアイコンのような存在です。
第2巻(マレー半島・シンガポール編)について
第2巻はバンコクから。微笑みの国のタイであるにも関わらず、微笑みの奥の表情が分からず苦労している様子や、街をぶらつくと異常に日本人を紹介してもらいたがる人と遭ったり、学生たちに言語を教えてもらう場面などが、印象に残っています。
マレー半島を鉄道で南下し、途中ペナンで長逗留することにするあたりは、行き当たりばったり感が出ていて楽しそうです。ペナンで泊まった娼婦の館のオーナーと売春婦とヒモと過ごした数週間は、もし自分なら、そこまで濃いつきあい方はできないな、と思い、沢木さんのすごさを感じます。
第2巻の旅では、多くの子どもたちと知り合います。子どもたちの持つ、ものがなしさや素直さが印象的です。たとえば、精神を病んだ娼婦であるお母さんと過ごす少女、店を手伝っているけどチップの受け取りは拒否する男の子、列車に向かって無心に手を振る子どもたち。
様々な場面で、子どもたちの姿に胸を打たれます。
沢木さんにとってシンガポールは街も人もつまらなくて、微妙な印象だったようです。いかに沢木さんが香港に魅力を感じていたかが窺えるとともに、いよいよ次の目的のインドカルカッタに向かって旅を進める決心する「きっかけ」になったとしたら皮肉な話ですが、こういうことも旅の一面だと感じました。
最後にあらためてAudibleと文庫本の紹介を。
冒頭述べたように、Audibleでは1巻から6巻まで全てを聴くことができます。文庫本は2020年に新版が発行されていて、現在も手に入ります。