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【Audible本の紹介34】深夜特急6南ヨーロッパ・ロンドン編(沢木耕太郎)

今回紹介する本は、1992年に初版が発行された、日本人青年のアジアからヨーロッパへの一人旅の記録と、その途中での思索を追った「深夜特急」の、最終第6巻のヨーロッパ編です。

第6巻では、沢木さんは南ヨーロッパのイタリア・フランス・スペイン・ポルトガルを旅しています。地中海地方なので、気候的には暖かく明るくも、若干けだるい雰囲気です。次に、ゴールに設定しているロンドンに向かえば、いよいよ旅が終わることになるので、出発を逡巡する感情が表されている記述もあります。

この第6巻をもって、ロンドンに到着し、深夜特急は完結しています。

なお、「深夜特急」は、第1巻から第6巻まで、全てをAudibleで聴くことができます。


あらすじ(1~6巻)

深夜特急は、1970年代(前半)、「インドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスで行く」と思いたった著者の沢木耕太郎さんが、香港を皮切りに、ユーラシア大陸横断の旅をした話です。
日本の若者が、身一つで世界を見に行く、貧乏旅行ブームの時代であり、その文学的なアイコンのような存在です。

第6巻(南ヨーロッパ・ロンドン編)について

この第6巻で特に印象に残った場面が、2つあります。

ひとつめは、リスボンの飲み屋。

ポルトガルの演歌ファドを聴かせてくれるバルの前を行ったり来たりしていると、飲み屋街の用心棒のような男の人にいろいろ親切にしてもらい、ビールをおごってもらう場面。
仕事を聞かれ「ナーダ(なにもない)」と答える。
ビールを頼むと、そのビールの名前がサグレスという。
サグレスはリスボンよりさらに西の果ての岬の名前だという。
そこに何があるのかと主人公が尋ねると「ナーダ」と返ってくる。
酒場での現地の人とのふれあい、という深夜特急によく出てくる場面ですが、なぜか、印象に残っています。

二つめは、そのサグレス。

ポルトガルの、ヨーロッパの西の端の町サグレス。
終点のバス停に降り立ったら、隣町への帰りのバスはもうなくって、泊まる場所がなかなか見つからない。
そんな中、偶然見つけた母と息子で運営するペンションに温かく迎えられ、翌朝、ホテルの部屋の窓を開け、大西洋が広がっていることを発見します。
このサグレスで、大西洋を望む岬に立って、長い旅の終わりを実感する、
という場面は、「深夜特急」全体を通じてもハイライトの一つです。

最後に、旅と外国語について。

著者は、訪れる国で、いくつかの現地の言葉を覚えることを習慣にしています。たとえば、こんにちは、ありがとう、とか、1から10の数字など。買い物や子どもたちとの会話に必要なものとして。

それ以外の大部分の会話は、英語です。
それほど流暢でなくても、言いたいことの30%くらいのことが言えれば、おおよその意味は通じて、相手の言いたいことも理解できて、それで十分だろうと感じました。
一方、もし言いたいことを100%、相手に英語で伝えられたら、旅はちがったものになったはずです。その方が良い作品が書けたか?と問われれば、なにか違う気がします。

最後にあらためてAudibleと文庫本の紹介を。

冒頭述べたように、Audibleでは1巻から6巻まで全てを聴くことができます。文庫本は2020年に新版が発行されていて、現在も手に入ります。

【これまでに書いたnoteの紹介】

https://note.com/ondakazuki/n/nf40b33c3fc2d

【Audibleと文庫の紹介】











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