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「小説」と「心」

淡いオレンジ色の光が窓から差し込む図書室に一人の少年がいました。

少年は、席があるにもかかわらず隅っこに一人で、ぽつんと地べたに座り、本を読んでいました。

「なぜ、席に座らず、そんなところで本を読んでいるの?」

と声をかけても、見向きもせずに黙々と本を読んでいます。


なんの本を読んでいるのか気になって、覗いてみると、それは題名のない本でした。

ますます、気になって少年の方に触れて、聞いてみようとした瞬間、目の前が光に包まれました。

目を開けると、そこは、無数の映像が流れているシアタールームでした。


「ここはどこだろう」と疑問に思っていると、後ろから声がしました。


「ここは、僕の心の中だよ」

そういわれて、振り返ると、先ほどの少年が立っていました。

「僕に興味を持ってくれた君に、特別に僕の精神の部屋に招待したよ。ここでは、僕が経験したいくつもある物語を見ることができる。君には、この物語を見てほしいんだ。」

と言われて、一つの画面に案内されました。

そこには、こんな物語が流れていました。

少年が、人から罵倒され、暴行を受け、傷ついた心を小説を読むことで癒し、そして、題名のない本に何かを書いていました。

「君は、なにを書いているんだい?」

「これはね、僕の物語を書いているんだよ。言葉によって傷つけられた心は、言葉でしか癒されることができない。だからこそ、もし、僕と同じ経験をした人が、僕の言葉で癒されるように、本を書いているんだ。」

はっとしました。

そうです。初めに少年が隅っこで読んでいた本、それは、その少年自身の心だったのです。


言葉で傷つけられた心は、言葉でしか癒すことができません。


人の言葉は目に見えない刃物であり、簡単に人の心を壊します。


気軽に発した言葉は、簡単に人を殺します。


だからこそ、この少年が伝えたかったことは、「小説」の持つ力と、言葉の大切さだったのかもしれません。


ではまた。

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