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その火はまだ、燃え続けている/早瀬耕「未必のマクベス」

きのう訪れた書店で、ちょっと信じがたいものをみた。

2014年に出版され、2017年に文庫版が出た小説「未必のマクベス」。
その本が2024年のいま、札幌市内の大型書店でこのようにして販売されているのだ。

コーチャンフォー新川店にて

いや、積んどるやないかーい!

激推しポップつけとるやないかーい!


かくいう私もこの本に2021年に出会い、「好きな作品は」と問われればその名を挙げてきた。

早瀬耕さんは学生時代に卒論的な位置づけでデビュー小説「グリフォンズ・ガーデン」を上梓。
その後は一般企業に勤められ、22年たってようやく書いた2作目がこの「未必のマクベス」である。
未来SFとして趣の深い「グリフォンズ・ガーデン」は今読んでも色褪せることのない傑作。作品の舞台として描かれる北大植物園のほど近くに職場のある私にとっては、思い入れのある作品だ。
続編「プラネタリウムの外側」と、さらにその後日譚「12月の辞書」も味わい深く、私の中で早瀬耕さんは『特別な作家』に位置付けられている。

そんな早瀬耕さんの作品の中で、世界観にどっぷり浸ってほしいコンテンツ。それがこの「未必のマクベス」なのだ。

「未必」とは、『何事かが必然的に起こることを予期しているにも関わらず、それが起こってもかまわない』という状況判断のこと。私も記者時代には、刑事裁判の原稿で「未必の故意」というフレーズで使ったことはある。

この作品で作者は『運命的な何かを受け入れる諦観』という意味合いも「未必」というワードの中に含めているように思われる。
さてその「未必」が、なぜマクベスと結びつくのか。
……そこにこそ、痺れるほどにメランコリックな『物語の核』が埋め込まれている。

私の話がいまひとつ信じられないというアナタ。
試しに「未必」という言葉を検索してみてほしい。
予想ワードで「未必の故意」の次くらいに「未必のマクベス」が上がってくるはずだ。
そして、その後は……?

ご自身の選択にお任せしよう。


2年ほど前まで開設されていた早瀬さんのTwitterでは、道央圏の某所にお住まいらしいことが記載されていた。
もしかしたら私もどこかで早瀬さんとすれ違ったりしているのかもしれない。

そんな思いを抱きながら、彼の『最高傑作』である本作を、静かに推し続けていきたい。

いちファンにできることなんて、せいぜいそんなことしかないのだから。

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