発見!落語「推し聴き」のススメ/落語好きの独り言
表題の写真はある日の池袋演芸場、昼の部の香盤です。
皆さんにとってどう見えるかはわかりませんが、私にとってこのラインナップは「パ・リーグのオールスターの打順」並みの魅力があります(※話の流れの都合上、噺家さんにだけ触れますね)
鉄平師匠がいるから「楽天イーグルス」のイメージでパ・リーグ、というわけではありませんw
ご承知の通り「人気のセ」、「実力のパ」と古くから言われていますが、この日のラインナップは落語好きにとっては、そしてしん平師匠に思い入れのある身としては激アツの布陣でした。
志ん朝師匠のお弟子さんだった志ん陽師匠と、同年に真打昇進した文菊師匠を同じ日に聞けるのがまずすごい。お二人ともこれから天下を目指す『ライジング噺家』として大注目!
一之輔師匠・三三師匠・白酒師匠という、いまの落語ブームの中心にいる人気噺家さんを立て続けに聞けるのも嬉しい。
志ん輔師匠の洒脱な芸は、イチローの打席のよう。どんな客にも対応してヒットを打てる年季を感じます。
そしてトリがなんと林家しん平師匠。
しん平師匠はかつて北海道のラジオ局で「アタックヤング」という深夜番組のパーソナリティーとして人気を博しました。かくいう私も中高生のころ、毎週火曜深夜0時からの番組を受験勉強の友として(結果として勉強は手につかないのですが)聞いていたのです。
なんてエロ楽しいトークをする人なのだろう。ああ、俺もいつかはラジオのDJになってこんな風にしゃべってみたい!
北海道中の思春期男子が憧れたあの人が、目の前で今も元気に語っている。周囲に笑い声が響く中、私だけマスクの下をつたう涙を静かに拭っていたのでした(一部脚色アリ)。
・・・と長々書いてきたここまでが実はマクラでございます。では本ネタに入らせていただきますw
去年開催された「NHK新人落語大賞」で桂二葉さんという女性噺家さんが大賞を受賞されました。女性としては初の大賞でネットでも大きく取り上げられました。
実はこの新人落語大賞の決勝にはに二葉さんのほかに「林家つる子」さんというもう一人の女性噺家さんが出場されていました。明るく朗らかな語り口で『皿屋敷』を熱演していました。決勝に残った6人のうち、2人が女性噺家。
正直私はこれまで心のどこかに『女性の噺家さんは男性より格下』という保守的な偏見を抱いていたように思います。ですが、つる子さんと二葉さんの、競技に臨むアスリートのような姿を見て、目が覚めました。
前時代的な考えにとらわれていては、置いて行かれる。これまでしっかり向き合ってこなかった女性噺家さんたちの現在、未来に目を向ける時が来ているのではないか!?
そう思うようになったのです。
そんな時、noteでの不思議な繋がりで「林家あんこ」さんの存在を知りました。なんと、あんこさんは憧れのしん平師匠のお弟子さんだというのです。まずはオンラインの有料配信を拝聴。
うん、声がいい。姉御肌の雰囲気もあるのかも。そしてすごく真面目でいい人そう(^^♪
なるほど、これはやはり、生で聴いてみたい!
そう、マクラで書かせていただいた豪華ラインナップの中でも、私のお目当ては「林家あんこ」さんだったのです。(話の流れ上、ぼたん師匠に触れられなくてゴメンナサイ)
この先伸びてくるであろう人に目をつけ、『私、この人を応援してます!』と宣言しながら聴く。これぞ『推し聴き』!
池袋演芸場を訪ねた当日、私はやたらとドキドキしながら席につきました。
そう!『推し』の気持ちを持っているが故に、ワクワク感が通常の3倍(当社比)まで高まっていたのです!これまでこの楽しみ方を味わえていなかったとは、何たる不覚!
しん平師匠の映画製作のお手伝い話をマクラに、ネタは「都都逸親子」。あんこさんは親子が絡むネタが合うなあ、とほっこりしながら満喫いたしました。
様々な偶然が私の目を最終的に、二葉さんでもつる子さんでもなく、また他の女性噺家さんでもなく、あんこさんに向けさせました。まさにご縁。
私は思うのです。
この人は遠くない将来、これぞ!というネタをモノにする。
小器用なタイプには見えないが、大器晩成の気風がある。
時が来て、晴れの舞台で円熟の芸を披露し、万雷の拍手が鳴り響く。
その群衆の中に私もいられたら、どんなに楽しいことだろう。
本日はここでお時間。
落語『推し聴き』のススメ、半ばでございます。