「数学ギョウザ」/#ショートショートnote杯
「武道館前には高橋リポーターがいます。高橋さん!」
「はい、国民的アイドル『数原キョウコ』さんの引退ライブの開演まであと1時間。熱気と緊張感でピリピリとした空気が広がっています。何人かに今の気持ちを伺ってみましょう」
列に並ぶファンに近寄る高橋リポーター。
「数原さんにはなんと声をかけたいですか」
中肉中背、メガネの男性にマイクを差し向ける。
「ゴーゴーレッツゴー!レッツゴーキョウコ!ウゥー、ワッホーイ!」
「・・・ありがとう、君には感謝しかないよ、ということですね。ではもう一方」
高橋リポーターはその後ろのガタイのいい外国人男性に声をかける。
「きょうはどちらから?」
「ブラジールからキョウコに会いに来たよ!ね、ね、コレ見てよ!」
男性はTシャツをたくし上げ、カメラに向けて、胸に入ったタトゥーを見せつけた。刻まれた文字は
『数学ギョウザ 愛してる』
「・・・愛が伝わってきますね。いったんスタジオにお返しします!」