ショートショート「鬼百合と刀」/おせっかいな寓話
深山幽谷。一人の浪人者が無心に剣を振るっていた。
物心ついたころから道場に通いつめ、若くして師範代を任されるほどの腕を誇っていた男であったが、急な病で藩主が死亡。跡取りがいなかったことから藩は取り潰しとなり、一族郎党、家臣らは散り散りとなった。
「自分の剣の腕があれば、仕官の道などいくらでもある」
男は新たな主を求めて他流の道場を破り、他藩の剣術指南役を打ち倒しては自慢の腕を示した。だが、なぜか仕官にはつながらなかった。むしろ煙たがられ、わずかな金子を持たされては厄介払