『マチ中華』のサンタ/「絵から小説 クリスマステロ」参加作品
僕はクリスマスが嫌いだ。
街を歩けば目につく赤と緑のカラーリング。浮ついたカップルの、これみよがしな笑顔。『幸せ』という記号にまぶされた世界が、憂鬱で憂鬱でたまらないのだ。
そんな僕にとってのクリスマスの安全地帯。それが、近所の中華料理店『北京亭』だ。のれんをくぐったとたんに鼻をくすぐるゴマ油の香り。その油のせいでちょっぴりヌルヌルする床。色褪せた壁のお品書き。今年もあの店に行きさえすれば、きょうこの日、12月24日のブルーな気分を吹き飛ばしてくれるだろう。
・・・そう