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男友達の結婚式①新郎のスピーチ

高校・大学の同級生である男友達(Rと呼ぶ)の結婚式に参列するため、地元に帰省した。

披露宴でRから新婦にサプライズがあった。大きなバラの花束と手紙だった。
手紙の中で、Rは「僕は自己中で無意識に人を傷つけてしまうようなどうしようもない性格だったけど、あなたと出会ってから変わりました。周りの人に穏やかになったね優しくなったねと言われるようになりました。時々あなたと出会っていなかったら僕の人生はどうなっていたか考えることがあります。何度生まれ変わってもあなたのような人には出会えません。いまこうして隣にいられることが本当に幸せです」と言っていた。泣いた。

実際、Rは空気を読むのがうまくて、その場その場をのらりくらりヘラヘラ笑ってうまくやるタイプだった。大学生になってモテはじめると、ひととおり女の子と遊んでいた。何にも執着せず関心を持っていないくせに、にこにこ優しくするから、それは色んな女の子にとって残酷だったと思う。
彼女(今の奥さん)と付き合ってからは、時間が経つにつれて、側から見ているだけでもわかるほど人が変わっていった。いままでは、心の底ではすべてどうでも良いんだろうなという感じだったけど、どんどんと「愛するその人以外のことは大抵どうでもいい」に変わったように感じた。
友達という立場からは少し寂しかったけど、二人を邪魔することはしたくなかった。なんとなく距離を置きながら、たまに誕生日を祝ったり、結婚の報告を受けてみんなでプレゼントを贈ったりした。

結婚について私はまだ未知だ。わからないことがたくさんある。制度として納得できない部分もある。それに、数十年と時間を重ねていくと、どうせ夫婦の愛情は冷めてしまってしまうだろう、きっとそれは避けられないものだろうと思っていた。
だったら結婚なんてしない方がいいんじゃないか。一方で猛烈に結婚したいと思う瞬間もあったり、自分の気持ちすらよくわからなかった。

でも、Rのスピーチを聞いて、考えが少し変わった。将来どうせ気持ちが変わってしまうなら結婚なんてする意味がないと思っていたけど、いまこの瞬間にRがRの奥さんと出会えて良かった、そして出会えたことで自分は変わることができたと思っているなら、それが「いまここにある/あった」というだけで意味があると思った。
例えばもしも、二人の気持ちが数年で変わってしまったとしても、その結果がすべてではない。いまこの瞬間にRのこのスピーチが存在したことは、もうそれはどんなマイナスな影響も受けない事実だ。何度生まれ変わっても出会えないと思える人。自分の性格までも変えてくれるような人。そんな人に出会えて結婚してみんなの前で報告して....、そんなことができたならもう一生分の幸せを前払いしてると言ってもいいくらい尊いことだと思う。
逆に、別に本人たちが自分で後から「あんなのもう忘れたい」と思うのも自由。ただ、周りが後発的な結果だけを見て勝手にジャッジするのはクソだしナンセンスだ。
最近はこんな風に思える出来事が続いている。周りにいるみんながそれぞれ人生の煌めく瞬間を体感させてくれているからだと思う。

長期的な視点で物事を考えるのが苦手で、でも友人の煌いている瞬間に素直に感動することはできる。そんな私にとっては、この考え方がもっともポジティブでしっくり来ている。

人生はいくらでも軌道修正できる、はず。思い描いていた道に軌道修正することが難しくても、また別の道を開拓することはできるだろう。
だからやっぱり、あまり不安になりすぎず、少しは目先の煌めきだけを信じて進んでも良いんじゃないかと思える。

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