【ネタバレビュー】北斎づくしに行った話。
だれかのすっとぼけた顔というのは、いつどこで見たって面白い。目の前の友達のおとぼけ顔も、紙に描かれたおとぼけ顔も、みんな一律に面白い。
そしてそういったものは、見る状況が真面目であればあるほど面白いのだ。
そんなわけで、六本木の東京ミッドタウン・ホールで開催中の「北斎づくし」に行ってきました。
以下、ネタバレだらけのネタバレビュー。
行きたいけど、時間やお金、六本木の街を出歩けるような服がないよって人は、是非これを読んで雰囲気だけでも楽しんでいってください。
【開催概要】
20歳で浮世絵師としてデビューしてから90歳で没するまでの70年間、常に挑戦を続けて森羅万象を描き抜こうとした画狂の絵師・葛飾北斎。
その生誕260年を記念し、代表作である『北斎漫画』、「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の全頁(ページ)・全点・全図が一堂に会する前代未聞の特別展が2021年7月、東京・六本木に出現します。(※公式HPから引用)
「葛飾北斎??……知ってる〜(名前だけは)^_^!」っていう仲間がいたら共有なんですけど、葛飾北斎は江戸時代の後半に生きてた人らしいです。
そういえば、展示会のHPには「90歳没」って書いてあったけど、Wikipediaには「88歳没」って書いてあったな……どっちなんだろ。まぁどっちでもいいか。とりあえず長寿。
1.入り口あたり
・まず会場の壁、床、天井、どこをみても北斎の絵があって、何故か不思議の国のアリスを思い出した。トランプじゃなく浮世絵にのみ込まれる世界観。
床がふっかふかで足音もしない、静かな環境の中でお客さん達が一生懸命覗き込んでいたのはこんな絵達です。
・お坊さんがにこにこしててかわいいなぁ。そんなに微笑まれちゃったらこっちだって( ᷇࿀ ᷆ )だよ。
・シンプル「あり」「いたち」。「きたきつね」は最後の「ね」を「♡」に空目して「この時代にハートってあったんだ」って思ってしまったけどちゃんと見間違いだった。
・大の大人がなにしてんのシリーズ。取っ組み合いやダンスをやっていること自体も、それをしっかり絵にして出版してることも、その絵を大の大人達が真面目に見入ってるのもたのしい。
・ページの口の部分が汚れているのを見ると、これまでこの本に触れてきた人達のことを想像してしまう。
何百年も前の、でも確かに存在していた人達…このページの汚れやスレは、その人たちの存在の証明なのだな…とか…………まぁそこまで真面目なことは思わなかったですが。私と同じように、ワックワックしながら見ていたんだろうか。
・建物などの大きさを、よりリアルに伝えるためには「まるごと全部描かない」ということが大事らしい。ページを分割したり、はみ出してみたり…そうやって読者の想像力を働かせるそう。
この展示の会場構成を担当している方(「田根さん」と紹介されてました)が一番好きなのも、そういった建築物を収めた巻だとのこと。そういう企画側の愛をかんじる話が大好物です。いいぞ!もっとくれ!という気持ち。
・大人のチャンバラ。手がバッテンになっていて槍(??)を受け止め損ねてる下の画像、「あてっ!」って声が聞こえてきそうでかわいい。
2.たしか真ん中あたり
・「初摺」と「後摺」というのがあるらしい。説明を読む限り、現代でいう「初版」「第二版」と近しい意味合いのようだった。
ただ、この時代は絵を紙に摺っていたので、だんだん版画が削れていって、どんどん線がなくなっていってしまっていたらしい。不便やないかい。(そのせいで後摺ではわかりやすいように表現の補足が入っていたりするらしい)
逆に、後から「やっぱあれやめとこ」ってなって、修正されるものもあったようで、上の絵は女の人のおしりの着物の破れが修正されていた。いつの時代も人はセクシャルな問題に不安と慎重さと攻めの姿勢を持って取り組んでたんだな…こういうアホっぽさこそが人間臭くていいなと思う。
・そっほりーズとふっくらーズの対比と、別件でふざけ合うおじさんたち。
・怠惰の姿勢はいつの時代も一緒。
・「完結、の予定だったのです」
………だったのです????
※「おしまい」とは
・頭が長くなったりツボから呼ばれて飛び出てしてるのもなかなかのヘンテコ具合だけど、1枚目左上の「埋形」がヘンテコを通り越してもはや愛おしい。
あと3枚目がほぼ全員どっかしら変でツッコミの渋滞が起こってますね。すきです。
・ほんとに愛らしいんだけど、鼻と耳にヒモ引っ掛けてドヤ顔をするんじゃない。
・「お楽しみはこれからだ」の時点でワクワクが止まらないし、ページを跨ぐという表現がこの時代からあったんだという驚き。手塚治虫じゃん。
・かわいすぎる。今回の展示で一番すきかもしれない。江戸時代の踊ってみた。
実はこの展示の公式HPにアクセスすると、この踊り手が出迎えてくれるのでちょっと一回見てみて欲しい。
・あまりにも体を張った芸と、この時代に達磨(仏教界のわりと偉い人)でウケを狙いに行く攻めの姿勢。
・作者が亡くなってからも「どうにか一冊分揃え」て刊行する商い魂。業が深め。
・顔いかついのにギャルの構え。
・アリスの世界観の出口でパシャり。
3.出口あたり
・「初摺」はディレクターズカットのようなものらしい。その中でも試行錯誤があるのがアツい。あと1日200枚も摺るのキツ……。
・レア度SSRだって!?昔のものって、見てもどのくらいスゴいのかがいまいちよく分からないんだけど、これに関してはだいぶ価値が高いことがわかった。ヲタク心をよく押さえた説明の仕方をしてくださっていて、すごい。
・北斎先生がかなりのイケオジだった様子が書かれてた。
・出口でお見送りしてくれた人。ありがとうございました。
4.おまけ
・これは今回のグッズショップの説明書きなんですが、これを含め今回はとにかく企画運営さんたちの熱意やユーモアが特別に光る展示会でした。
「踊ってみた」とか「SSR」とか、浮世絵の展示会でそんなフレーズを目にしたことが今まであっただろうか?いや、ない!普段は使わないような反語だって躍り出てきちゃうもんよ。
今回の展示をより多くの人になじみを持って楽しんでほしいという気持ちがひしひしと伝わってくる最高の展示会でした。ごちそうさまでした。
こんな素人の私ですら、とっても気持ちよく100%で楽しめたんだから、きっと江戸時代や北斎のことをもっと知ってる人達は200%で楽しめるのだろうなぁ。
こういうときのために、勉強はしておくべきだったんだね。
To.10年前の自分
9/17までやっているらしいので、行ける時間や財力のある方は是非に!
服がない人は通販で買うべし!
書いてあることは全部、冗談とユーモアです!