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第一回くわだてとたくらみ賞発表

くわだてとたくらみ賞(以下、略してくわたく賞)とは、浜松市やその周辺でその前年に打たれた展示・イベント・ワークショップなどの企画をその意図・場所・日時・運営などさまざまな観点から総合的にかつ主観的に評価して1月中に勝手に表彰する企画賞である。アート・美術・芸能・演劇・文芸・詩歌・音楽・書道・彫刻・社会など企画のジャンルは問わない。そして企画賞なので個々の作品・展示物は評価しない。 

くわたく賞は、私自身が作品よりも企画の方が好きでより多くの人に企画そのものへ目を向けて欲しい、おもしろい企画がどんどん生まれていって欲しいといった思いから創設した。また小さいイベントは評価される機会も少ないし記録が風化・散逸する可能性が高いのでそれらの環境を整えたいというのもくわたく賞を設けた動機だ。なので賞状や賞金や賞品はないけれど、受賞者はどんどん受賞者を名乗ってくれたらいいと考える。

第一回くわたく賞は2024年の浜松市周辺で開催された展示・イベント・ワークショップを2025年1月に表彰する。もちろん、私の観測範囲でしか評価はできないので、もし異論や反論がある場合は各自で勝手に対抗する賞を設けて表彰して欲しい。その方が盛り上がると思うし、寧ろそうして欲しいな。やってくれたら次回のくわたく賞候補だ。


受賞一覧

くわだてとたくらみ賞: 詩幣

7月3日〜6日につじむらゆうじのHEART ART主催により浜松市鴨江アートセンターで開催されたインスタレーション展示。新紙幣発行の7月3日に、人々が持っている紙幣の価値への虚構を混乱させようとした意図と日時、さらに来場した人に詩幣を作らせそのうえ100枚ちかい万札を撒かせるという肝の座った運営を評価して授賞が決まった。 

詩幣

第一回は、くわだてよりたくらみに偏っている企画への授賞となった。また、詩幣は詩丼にも出店しており、形態を変え携帯できる展示という点も評価を上げた。それにしても、この詩幣を知ったイベンターはみんな「俺がやりたかったやつ!」と悔しがったのでは? 私は「やられちまった!」と思ったよ。

准賞: 他人の持寄

7月から夜の浜松駅バスターミナル地下広場で高林洋臣さんによってときどき開設される休憩スペース。たまに読書会や哲学カフェなど企画も持寄られる。浜松市の路上生活者が多く居合わせる場所で開催し続けた意図を評価して准賞となった。

他人の持寄

寒さに負けず12月も開催していたらくわたく賞正賞になったかもしれないが、私が主催でも寒さに負けていたと思う。くわたく賞がたくらみへ偏っているのでくわだてに近い他人の持寄を准賞にしてバランスをとったかたちになったが、私はたくらみの方が好みなのでそれで准賞はすごい。

佳作: 2人展NANN NANN

11月12日〜19日に浜松市中央区田町のMEI COFFEEで開催された彫刻家・竹内舞と書道家・伊熊麗奈の2人展。ジャンルの異なるアーティストが共作することで、ふたりのものの根源へ向けたまなざしを浮き上がらせた企画力を評価して佳作となった。

NANN NANN

まだくわだてだけれど、このふたりが何かをたくらんだら怖いとも思った。なので期待の佳作でもある。

候補

受賞には至らなかったけれど候補になったイベント・展示を挙げる。「E4展ピクニックのすゝめ」は公園と建築という組み合わせが良かった。「ポエデイ短詩」はポエデイ内企画、Xで募集した短詩を街頭へ放映するという暴挙で五行歌の投稿が多かった。West Goat Coffeeでの「川合絢也 陶器展」は陶器で動物の角を見立てたのが斬新だった。詩丼内の「合作俳句の会」は先例があるけれど盛り上がった。ほかに「ハママツクリエーターズフェスvol.1」「アドニスの庭、窓の外の幽霊」「プスプス市春の陣2024」「路上演劇祭Japan in 浜松」「ワークショップ ヤー!ヤー!ヤー!3」「ちいさな賢治祭in浜松2024」「こちらのなぞらえもの」などもあった。また、「このこどこのこ」「書くことのプラクティス」などは日程が合わず参加できなかった。

総評

2024年は企画の勉強も兼ねて精力的にイベントや展示を観て回った。そのためか、くわたく賞は全体的に文芸・アート・社会派と分野のばらけたラインナップになった。もちろん企画としてはふつうだなぁ〜と思っても作品を楽しんだ展示もある。あとから、くわだて賞とたくらみ賞と分ける手もあるなと思いついたけれど第一回なのでひとつにしたのはやむを得ないだろう。

それと、くわたく賞に入らなかったからといってなにも落ち込むことはない。単に私がその企画を知らないか観ていないかなのかもしれないし、そもそも個々の作品・展示物は評価対象にならない企画への賞なのだからあなたは作品や展示物で評価されるタイプのアーティストなのかもしれない。それに読書会やワークショップなどはくわたく賞として評価しにくい。他人の目をあまり気にせず、それぞれがそれぞれの得意な分野で活動していって欲しいと考えるよ。

そういえば、企(くわだ)てと企(たくらみ)みと読む漢字は企(つまだ)つとも読む。爪先立って自分を大きく見せることだ。

企者不立

『老子』

この企を含む企画というのは欺瞞そのものとも言える。しかし、その立ちくらみにも似た一瞬の、それでいて巧みな欺瞞によって快を与えるのがイベントであり展示であると私は信じる。

これからも鮮やかな詐術としての企画を期待する


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