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女川で、世界的なタンパク源となる二枚貝の事業を立ち上げる! by しょうすけ
はじめまして!女川町の地域おこし協力隊の、長谷川翔亮(しょうすけ)と申します!
出身は千葉県で、直近はアメリカで植物工場をやっている会社でデータ分析などをやっていました。そんな自分がさまざまなきっかけで、二枚貝、特にトリガイの種苗生産事業(養殖事業者が育てるためのトリガイの稚貝、いわば種を生産する事業)を立ち上げたいと思うようになります。二枚貝はとてつもなく環境に優しいタンパク源であり、その中でもトリガイという二枚貝は、世界的なタンパク源になっていくポテンシャルがあると信じています。
ただ、その話はすごく長くなってしまうので、また別の記事でじっくり説明しようと思います(笑)。
今回は、簡単な自己紹介と、地域おこし協力隊に着目した経緯、その中でも女川にやってきた理由をお話していきます!
自己紹介
1994年生まれの30歳で、千葉県の千葉市出身です!出身は千葉県ですが、父親の仕事の関係で幼少期に合計5年半を海外で過ごす、いわゆる帰国子女として育ちました。
何かしらの形で環境分野に携わりたい、と思った学生時代
大学はアメリカの大学に進学し、環境学を中心に勉強していました。環境学というのは歴史が浅い領域ですが、人間を取り巻く環境と人間・生態系への影響について、いろんな学問を駆使しながらアプローチする分野です。自分自身も自然環境や、その中での人間社会について考えるのが好きですし、卒業後も環境分野に携わりたい!と思って社会人生活をスタートしました。
民間の力に気づいた新卒時代
2017年に社会人になってからは、最初は大きな総合商社に入りました。ただ文化的に合わない部分があって、すぐに辞めてしまいます。
そんな中、Uber Eats というフードデリバリーサービスが日本で拡大しようとしており、Uber Eats の拡大に携わることになりました。結果として4年弱在籍し、入社時は社員数が20人くらいでしたけど、200人くらいまで拡大するのを見届けることになります。
自分の仕事は、「配達パートナー」と呼ばれる皆さまを様々な手段で獲得し、Uber Eats の拡大をサポートするというものでした。当時、日に日に黒い配達用バッグを背負った配達パートナーの方が増えていく様を見て、民間が社会を変える力は本当にすごいし、何よりめちゃくちゃ速いというのを実感しました。
これは直前の商社の仕事との対比もありました。商社では政府系の案件が多かったのですが、政府や大企業が絡むプロジェクトはとにかくゆっくり進みます。また、人々の利益が噛み合っていない状態でトップダウンに物事を進めるには、とてつもない調整労力を伴います。Uber Eats がみるみる日本の都市に浸透していって人々の生活に定着していった様とは、正反対です。
こんな正反対の環境を経験する中で、民間、それも新興企業(スタートアップ)の力に注目していくことになります。
本当にやりたいことを突き詰めていったら、自分でやるしかない!
その後、環境に優しい新たな農業(植物工場)を実践している Oishii という会社に入りました。ここでは技術開発や工場立ち上げなど貴重な経験をさせて頂きましたし、またどこかで詳しくお話しようと思います。
しかしこのタイミングで、色々な気づきがあり(また別記事で!)、二枚貝、それもトリガイの種苗生産をやりたいと考えるようになります。
ただ、自分のやりたいようなことを実践している既存の会社は、全く存在しません。自分のやりたいことが明確にある中で、違うことをやっている組織に入ってしまうと、自分のやりたいことを妥協する必要が出てきます。
それなら、自分で民間事業を立ち上げよう!自分でトリガイの種苗生産事業を立ち上げよう!と思ったわけです。民間の力を生かしてスピーディーにやりたいことをやって、社会を変えていこう!そう考えました。
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地域おこし協力隊に至るまで
と言っても、自分の事業を立ち上げる、いわば会社を作るというのは、自分にとって未知の領域でした。真っ先に考えたのが資金繰りです。
資金繰りをどうしようか
自分のやりたい!と思ったことには、拠点の整備、研究機材、そして拡大の際には人件費・光熱費と、多くのお金を必要とします。さらに言うと、自分自身は今まで雇われの身、いわばサラリーマンしか経験していません。自分自身の目先の生計をどう立てていくかも、解明する必要があります。
そんな中で、事業の資金繰りの手段を考えていきます。一般的に、事業の資金繰りには以下のような手段が存在します。
自分で出す=自己資金
誰かに出してもらう(返済義務あり)=銀行融資など
誰かに出してもらう(返済義務なし)=株式出資など
もらう=助成金など
資金繰りの手段を模索する中で、自分が持っているもの・持っていないものも整理しました。
持っているもの
事業に対する熱意
データ分析など、技術開発を進めるスキル
その他、今までの仕事経験から得たスキル
持っていないもの
資金
技術
漁業権
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「自己資金」と「融資」は難しい!
資金繰りの手段で、真っ先に除外したのが「自己資金」でした。そんなにお金を持っているわけではないですし笑、社会性を持った事業、世界的な拡張性も持った事業なので、その他の手段があると判断しました。
次に除外したのが「融資」でした。自分は現在、技術を持っているわけではありません。すなわち、すぐに事業展開できる商材があるわけではありません。また、トリガイを初めとした二枚貝の種苗生産技術は、都道府県の水産センターや少数の民間企業など持っている人はいるものの、非常にクローズドで守られた技術となっています。すなわち、自分で頑張って技術開発しなければなりません。
技術開発にいつ目処が立つかは分かりませんし、もしかしたら一生目処が立たない可能性だってあります。そう考えると、将来的な返済義務が生じる手段は、除外しなければなりません。
ライフテーマとしてのトリガイ事業だからこそ、「出資」もNG!
突然話が変わるようですが、皆さんは以下のようなデータを見たことはありますか?
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これは某大手コンサルティング会社が集計した、産業別の、企業の利益の平均値を示しています。すなわち、右の方にある産業ほど儲かり、左の方にある産業ほど儲かりません。
これを見るとよく分かるのですが、産業別の利益は本当に不均衡です。そして、右端に青で示したソフトウェア産業はめちゃくちゃ収益性が高く、真ん中に赤で示した食の産業は、まあ普通かなといった程度です。
世の中のお金は偏在していますし、本当に世の中にとって大事なものは、最も儲かるものとは限りません。それが上のデータによく表れています。
利益のほとんどは一部の産業が生み出しているので、儲けるならそのビッグウェーブに乗るのが一番良いでしょう。
だが自分としては、それに抗いたい。自分自身にとっての理想は億万長者になることではなく、ボロボロの服を着ていたとしても、自分のやっていることに100%の情熱・誇りを持てていること。その矛先が、自分にとってのトリガイ事業です。いわば一つのライフテーマの中でトリガイ、二枚貝、それを取り巻く水産業に至っています。
ここで「出資」の話に戻るのですが・・・一つのこだわりとして、自分自身が100%の経営権を持った状態で事業を立ち上げたいと、考えるようになりました。経営権を持たれた状態だと、本当に大事だと思うことに取り組めない可能性があります。
例えば、自分自身が経営権を持っていない状態で起業した場合、株を持っている人、例えば投資家に経営方針を合わせないといけなくなる可能性があります。本当にやりたいのはトリガイ稚貝を生産しながら品種改良を進めていくことであっても、「養殖向けのAIを活用したソフトウェアの方が、事業として儲かりやすい」といった議論が出てきてしまうかもしれません。
そう考えると、事業の資金繰りに出資は不適ではないか、という考えに至りました。少なくとも、もっと先の手段だと考えるようになったわけです。
「助成金」探しの旅から出てきた、地域おこし協力隊制度!
もちろん助成金と言っても色々とありますが、その中で自分が至ったのが、地域おこし協力隊制度でした。
自分のやろうとしていることは、ITのようにどこでもできるわけではなく、研究・生産拠点となる物理的な拠点が必要です。研究拠点では海水と電気を用いるため、漁港の一角など海辺の場所である必要があります。さらに、トリガイの種苗が作れるようになった暁には養殖事業者に販売していく必要があります。今後を見据えると、どこかしらで漁業権も取得する必要があります。
いわば、自分自身が特定の海辺の地域に根差す必要があるわけです。
地域おこし協力隊制度は、特定の地域に根差してミッションを実現しようとする人を応援する制度です。ミッションを実現するための活動費と、ミッションの実現までにかかる数年間の生活費を支給して頂けます。活動費は適用できる対象が幅広く、%や割合補助ではないため、すごく使いやすい。自分にとって地域おこし協力隊は、活用しない手はないと言っていいほどありがたい制度でした。
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女川に至るまで
地域おこし協力隊制度に着目したのはいいですが、この制度は市町村によって運用方法の違いもあるものの、日本全国で活用できます。ここからは、どのような経緯で女川の地域おこし協力隊になったのか、説明していきます!
2014年の、女川とのファーストコンタクト
自分が女川に初めてやってきたのは2024年、ではなくて、2014年1月に遡ります。環境学の教授と被災地を周遊した際に女川に立ち寄り、その悲惨な光景を目に焼き付けました。
そんな女川ですが、現在は駅前の商業エリアが海へ一直線につながる、綺麗な町並みを形成しています。そんな復興ストーリーに、女川の魅力が詰まっています。
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震災復興から続く、若い人が活躍しやすい文化
女川は復興の際に、「還暦以上は口を出すな!」を徹底して、これから町の主役となる若い人たちがまちづくりを引っ張りました。
この文化は、今でも生きています。女川に来たときの自分の第一印象は、「(地方都市なのに)なんか若い人が目立つぞ!?」というものでした。移住してからもその印象は変わらず、女川では移住者含む若い人が各方面にて、イキイキと活動している印象を受けます。
不文律やしきたりがない、オープンな社会
女川はリアス式海岸の入江部分を形成しており、海と山々に囲まれた、隔絶された地形です。しかし、その歴史を辿ると、隔絶された村コミュニティ!のような社会とは正反対の歴史が浮かび上がってきます。
女川は、良質な漁港を求めて人が集まり、100年ほどで成長してきた移民の町です。さらに直近は、震災という非常に不運な出来事がありましたが、それをきっかけに復興ボランティアの皆さんの流入など、外部とのさらなる交流が産まれました。
このような歴史ゆえに、女川には不文律やしきたりのようなものが無く、すごくオープンな社会が形成されています。変化が常であり、ものの考え方が柔軟で、多様性を受け入れる土壌があります。
いわば若い人が、地域のしがらみや人間関係にブレーキをかけられることなく、様々な活動ができる場所。女川の良さは、そんなところにあると思っています。
三陸海岸の玄関口という、女川の絶好の立地!
自分のやりたい事業にとっても、女川の立地は最高です。
トリガイは28℃以上の水温に弱く、昨今の海水温上昇により、今後の日本での養殖基地は東北以北になることが見込まれます。すなわち、自分自身も北日本に拠点を構える必要がありました。
東北地方の三陸海岸は、瀬戸内海に次ぐ屈指の水産養殖地域です。女川町は三陸海岸の最南端にあたり、三陸海岸の各市町村に行くにも、仙台や東京へ行くにも、すごく便利な場所です。
極めつけに女川は、自分のよく知っているサマースクールが毎年開催されており、知り合いもいました。このように、女川に来るには十分すぎるほどの理由があって、女川で地域おこし協力隊に着任しました!
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最後に
今回の記事では、自分の簡単な自己紹介と、地域おこし協力隊、そして女川町に至る経緯が中心になってしまいました。今後、なぜ二枚貝なのか、トリガイなのかといった部分を、お話できたらと思います!
今後とも、よろしくお願いします!