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鳥好きに贈るクリスマス・プレゼント【読書感想】川上和人「鳥肉以上、鳥学未満。」

川上和人「鳥肉以上、鳥学未満。」 岩波書店

鳥の、主に骨格、ときどき筋肉。解剖学的見地からの面白い読み物を多数生み出してくれる、「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」で鳥好きの間でお馴染みの鳥類学者。
今回も、そりゃもう、本のタイトルからして期待大です。

さっそく

目次にずらりとならぶ、名言格言の鳥ネタ・パロディ。
もうこれだけで面白い。
続いては鳥の図解。
まずは素人の読者への解説サービス。本書に出てくる鳥のパーツの名称をここで学んでおいてね、という心遣い。
これはまたご親切にどうも、って。ちょっと待って
筋肉図の注釈が
「せせり」
「ボンジリ」
臓器図は
「ハツ」
「レバー」
ああ、焼き鳥屋のメニューの・・・・・・。

確実に笑わせにきてるよね!?


骨、肉、皮・・・

笑いの洗礼を受けたところで、内容に移ります。
それぞれの部位からみる、鳥の肉体構造のすごさ。すべては飛翔のため。
進化の妙味を余すところなく賞味解説してくれる。
解説がチキンレッグやらサラダチキンを例に出すものだから、どうにもこうにも美味しそう。
目の前にローストチキンがチラチラ見える。
食卓の鳥類学。
もちろん随所にネタが仕込まれていて、読者を飽きさせない。
よくこれだけネタが出てくるものだなあ、と。妙な感心をしてしまう。
学者の頭の中には知識が詰まっているものと思っていたけれど。
本当はオモチャとガラクタでいっぱいなのかも。
まさかローストチキンと同じにバターライスじゃあるまいな?


文章だけという制約

鳥というのはカラフルで見映えの良い生き物だけど、本書は残念なことに白黒。文がメインのため写真も図も少なめで、紹介される珍しい鳥の姿が載っていないのは残念でした。
まあそこはスマホ片手に検索で補おう。
羽ばたき回数世界一で登場したキダカヒメマイコドリなんか、動画で一見の価値ありです。

と、動画を見ながら気づいたのが。
図も絵も使わずに、文章だけで骨や羽の形態、形質もろもろを説明する困難さ。
学術論文なら専門用語で済むんだろうけど。この本は一般向け。
鳥好き読者ばかりが読む想定といえど、叉骨と言われてぱっと思い出せる人ばかりとは限らない。
それを分かりやすくイメージしやすく、かつ笑いも取れる文章で語るとは。
恐るべし、鳥類学者。

学術書っぽく仮説を展開する箇所では、新しい単位の考案も面白いです。
「牛、豚、鳥の美味しさを比較するにあたり、鶏肉1円あたりの美味しさを1トリとする」
「世のマッチョの、マッチョさを表すマッチョ指数を、二の腕の幅÷長さ×100で示す」
どうです。 何それ?? でしょう?
普段、学術論文で無味乾燥な文章ばかり書いている反動なのか。
あるいは鳥類学者はみんなこうなのか。
真面目なフリしたふざけた内容。
こういう遊びって好きだわあ。

食卓で学ぶ鳥類学

どこを読んでも面白くて美味しそう。
進化の奥深さに感動しつつ、食材への感謝を込めて。
クリスマスの食卓には絶対、フライドチキンの隣にこの本を添えたい。

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