六本木クロッシングで自分だけの共感を
六本木ヒルズの森美術館で開催中の『六本木クロッシング2019展:つないでみる』は、鑑賞者を拒否しながらも、一方で無条件に受け入れる、支離滅裂な展覧会でした。
3年に一度の「六本木クロッシング」展
「六本木クロッシング」とは森美術館が日本の現代アートシーンを定点観測的に総監してきた展覧会のこと。2004年の開催以来、3年に一度続けてシリーズ展です。
第6回目の開催となる同展は森美術館の3人のキュレーターが共同でキュレーションを行うという、初の試みを実施。複数の人物がキュレーションしたとあって、良く言えば多彩な作品郡、悪く言えばまとまりのない展覧会、という印象を受けました。
「まとまりのない」というネガティブな言い方をしましたが、現代をテーマにした同展のコンセプトには合っているように思います。
さまざまな個人の在り方や生き方が認められつつある現代では、「わかりやすさ」は浅く広い共感しか得られません。
一方で、誰かにとっての「何を伝えたいのかわからない」「意味不明」「難しい」という突き放すかのような感情は、別の誰かにとっては、直感的に言葉では表現し難い、共感を呼び起こすのではないかと個人的に考えています。
『六本木クロッシング2019展:つないでみる』では、広く浅い共感ではなく、特定の個人に訴えるかのような、作品が多くありました。
※以下の項目では、特定の作品を例に挙げて、ワタシ個人の“共感体験”をお伝えしようと思います。作品のネタバレを含んでいるので、先入観なく観たいという人は、来館後に読んで頂ければ幸いです。
人の不在が醸し出す、不穏な人間関係
私が『六本木クロッシング2019展:つないでみる』で直感的に共感したのが、佐藤雅晴氏の《calling》です。
《calling》はある風景の中で、スマホや電話などの着信音だけが鳴り響いている様子を映した映像作品です。
画面には人も動物もおらず、ただ電話の着信音が鳴り響くのみ。
ダイニングや電車の中といった日常的な風景から、お祭りの出店が並ぶお祭り景色、はたまた苔が生えるほどに放置されたバスの中など、実に様々な景色の中で、電話が鳴ります。
電話が鳴るということは、かける人がいる。
にもかかわらず、その着信の受取手は全く描かれないばかりか、人の気配すら感じない。人と人とを結ぶ「つながり」の象徴である電話がただ1つ描かれていることが、人同士の繋がりの希薄さを感じさせます。
そして、突如として世界から人間がいなくなったかのようなファンタジー感が、人と人とがつながる理由を哲学的に考えさせるようです。
……
ここで自分が書いたものを一旦読み返してみましたが、自分が何を伝えたいのか、よくわかりません(笑)。
でもワタシはこの作品を観た瞬間、「あぁ、人間は結局ひとり。だからこそ、繋がりを求めずにはいられない」と直感的に感じました。
まったく根拠のない共感、作り手の意図からしても的外れな意見かもしれません。それでも“腑に落ちる”という感覚を体験し、暗い部屋の中、私は電話が鳴り響く様をただ見つめていました。
現代アートがもつ不気味さ
現代アートと一括りにするべきではないですが、表面的な美や技術的な均整を求めない現代アートには、いつも不気味さを感じてしまいます。
自分では理解しがたい感情、瞬時に理解できる美を持たない作品郡の中に身を置くと、胸ヤケを起こしたかのような満腹感に私はいつも襲われます。
六本木クロッシングでは、どこからどう見ても、説明を読んでみても、「なんだか難しい」と、拒否してしまう作品が少なくありませんでした(むしろほとんどの作品がそうだったかも)。
私は佐藤雅晴氏の《calling》に強く惹かれましたが、別の誰かは、また別の誰かが作った、別の何かに惹かれるのではないのか。
感情的な共感でも、ルックス的な良さでも、ただ好みが似ている、どんなことでも何でもいい。
ほかの作品にこんな風に感じたよという感想があれば、良ければコメントを。アナタの共感体験を共有させてください(^^)
小難しいこと考えずに作品を観るだけでも楽しいよ
急にポップな物言いになってしまったんですが。
小難しいこと考えずに、見るのではなく、非日常を楽しむつもりで展覧会に行ってみるのも良いと思います。
理解が難しい作品もありましたが、
飯川雄大氏によるピンクの巨大猫《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》や、竹川宣彰氏による猫のオリンピックなど、見るだけで癒される作品なども。
また大型作品も多いので、見るというよりかは、自分がアーティストたちの領域に入り込むという感覚で、作品を感じることができます。
しかもほとんどが写真撮影可能で、夜の10時まで開館しているというのも、来館ハードルが下がるポイント。
六本木に行った際はぜひ、お立ち寄りあれ。
『六本木クロッシング2019展:つないでみる』
2019年2月9日(土)~5月26日(日)
¥ 一般 1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳~中学生)600円、
シニア(65歳以上)1,500円
森美術館
〠 六本木ヒルズ森タワー53階
★ 10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)