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器と芸術の狭間で聳動する「陶芸」|現代陶芸のすすめ―菊池コレクション―
土塊(つちくれ)を成形し、炎の中で焼き上げ、永遠の形を与える陶芸。生活の中で使われる主体的な役割と、芸術作品として鑑賞される客体的な側面を持つ陶芸は、その二面性によって時代や文化の中で多様な進化を遂げてきた。
そんな陶芸の可能性を深く掘り下げる展覧会、『現代陶芸のすすめ―菊池コレクション―』が、菊池寛実記念 智美術館で開幕した。この展覧会は、陶芸が持つ「器」としての機能性と、「オブジェ」としての芸術性の狭間に光を当て、観る者に新たな視点を提示する内容となっている。
菊池寛実記念 智美術館
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東京都港区の神谷町に位置する菊池寛実記念 智美術館。平日はオフィス街として賑わいを見せるこのエリアも、週末になると静寂に包まれる。その一角に佇む同美術館は、20世紀の日本の現代陶芸作品を中心に蒐集を行った菊池智(とも)氏によって設立された。館名は、彼の父である菊池寛実(かんじつ)の名を冠している。
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2024年9月からの臨時休館を経て、2025年1月18日に再開された同展覧会は、菊池智がアメリカのスミソニアン歴史博物館で行った展覧会『Japanese Ceramics Today(代日本陶芸展)』をルーツに持つ回顧展といえるものだそうだ。
器としての陶芸
展覧会は、陶芸の「実用性」と「非実用性」という対照的な視点から構成されている。前半では、器としての形態を保つ陶芸作品が展示され、後半ではアートとしての存在感を放つオブジェが紹介される。
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展覧会に来た人を最初に出迎える。富本憲吉(1886 - 1963)の《白磁八角共蓋飾壺》。眩く真っ白な白磁の肌に凛と入った縦の線と蓋を頂くこの陶芸は、中にモノを入れるという器の最初にして最大の、王道の特徴を受け継ぎながら、形、像としての素晴らしさを純化させたような作品だ。
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内側に内包するという器としての陶芸にスポットを当てた作品で構成されつつも、装飾や彩色、造形によってさまざまな顔を見せていた。
オブジェとしての陶芸、檻に入った作品《証言》
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「オブジェ」としての陶芸に焦点を当てた2つ目の部屋では、陶芸とは何かを考えさせるような非実用的な作品が並ぶ。
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その中でも特に印象に残ったのが、鯉江良二(1938 - 2020)の《証言》だ。細い銀棒で作られた鉄格子の隙間から、血のような光沢を放つ赤い液体がちらりと見える。その近くには荒削りの石が閉じ込められており、格子の中で何が起きているのかをじっくり見極めたくなる。
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正面(どこが正面なのかは謎だが)に近づいてみると、石がうっすらとこちらを見ているように感じられた。私の見間違いだろうと思ってはいるものの、どうしてもその石が笑っているように見えるのだ。
銀色に鈍く光る鉄格子、血のような赤い液体の艶やかさ、そしてその中で口角を上げて笑う石――その不気味さは圧倒的だった。同時に、これが展覧会の中で最も心に残る作品とだった。
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