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京都のお茶屋さんで遊んでいた頃の話。
昭和2か3年頃だったと思う。
僕は仕事で京都に行く事があった。
その頃お茶屋さんにいる女の子2人と仲良くなった。
舞妓さんと芸妓さんの姉妹だった。本当の姉妹かははっきりしないけど、姉妹のように寄り添って仲良くしている二人だった。
最初は僕の仕事先の年長の偉い人に連れて行かれた場所だった。けれどあの二人ともう少し話がしてみたくて二人のことが忘れられずに、二度目は一人で思い切ってそのお店ののれんをくぐった。
相当意を決して行ったらしい。
僕にしては珍しく、その二人には恋愛や性的な気持ちはなくて、友人としてお話しするのがすごく楽しかった。
特に芸妓のお姉さんに仕事の話や人生の相談をしたりして「なるほどなあ……」と唸っていた。
この3人で居る時は何時も楽しく、よく飲んでよく食べたらしい。
今の感覚で言えば、友達の家で宅飲みをしている時の雰囲気だ。
いつも川沿いのお店だった。
窓の外を流れる川が大きかったから、恐らく高瀬川ではなく鴨川だろう。
お酒をたくさん飲んだ僕は、舞妓の妹さんに膝枕をしてもらって、芸妓のお姉さんの三味線と歌を聴きながら上機嫌で「君は声が良いから歌手になるといい。東京に出てきたらなんとでもなるよ」と言っていた。
僕には水揚げなんかは無理だけど、別の人生がある可能性を教えたかったのだ。
三人で遊ぶようになって3回目か4回目の時、お姉さんの方が別のお座敷で三味線を弾かなくてはならないと、席を外していた。
僕と舞妓の妹ちゃんが二人きりになって、何時もと少し違う静かな空気が流れる。
僕はその頃、プロポーズまでした恋人との結婚が親の反対でダメになって、寂くて仕方がなかった。
そんな僕を彼女が可哀想、慰めてあげると云う。
彼女は僕のことが好きらしかった。職業上、僕と結ばれることはないと分かってると言うような、控えめな態度だった。
彼女が僕の首に手を回して身を寄せる。
そうして僕はなし崩し的に彼女を抱いていく。
多分僕は彼女たちの元に来ているお客さんとは性質が違っていたし、優しく感じたんだと思う。
畳の上に横になって彼女の着物をはだけさせ、肌を可愛がって唇で慈しみ……そうしていざと脚を開かせると、彼女は「いいよ」とはにかむように微笑んだ。
彼女の中に滑り込むと僕の胸に様々なことが去来した。
かつての恋人とこんな風にしていたこと、彼女といた日々、当時の宿、空気、彼女のはにかんだ表情、初めての時のこと……。
目の前の彼女の胸は控えめだ。けれども僕の恋人はこの子の身体よりもっと胸が平坦だった。
ああ、この子も彼女と同じ17歳なのか。
そう思うと僕は何か切なくてたまらなくなって、泣き出してしまった。
どうしたの、と言われたけれど、ごめんね、ごめんね、と云うことしか出来なくて、行為はその儘途中で終わった。
僕は暫くの間、涙が止まらなかった。
僕の涙がすっかり落ち着いた頃、姉が戻ってきて、僕らは何もなかったかのように、何時も通りお酒を飲んだ。
その次もあと1回くらい、普通に三人で楽しくお話をしたと思う。
5回目か6回目にお店に行くと、二人はもう居なかった。
他の店に移ったらしかった。そうなるとお金持ちでもなくツテがあるわけでもない僕はどうにも出来ない。
そこで二人と僕の関わりは終わった。
此れは僕の感覚と友人Sちゃん、Mちゃんの感覚、それと少しだけ霊感の知人に見てもらったことを補足してまとめています。
不思議と三人とも同じ感覚を持っていて、色々と一致していたり、エピソードを確かめるうちに涙が出てきたりしたから、ああこれ本当に昔3人で会ったことあるね、という話になった。
三人で初めて飲んだのが京都の鴨川の川床で、二次会で行ったスタバも川床。壁を隔てた隣の店では舞妓さんを呼んだおじさんたちが食事会をしていた。
その後は祇園の八坂神社に近くでSちゃんと二人で3次会をし、僕が泊まったのは祇園のずれの方だった。
何かと過去のことを示唆する偶然が重なった旅だった。
*
あの頃、僕は勇気を出してお店に入って、お金をたくさん払わないと二人とお話も出来なかったけど、今は時間さえあれば好きなだけ遊べるし本当に幸せだと思う。
そうしてみんな、人生いろいろな事があったけど此処まで生きてきて、それで再会出来たんだから本当によかったなあと思う。
あの頃と違って僕らは自由だと思うと、今がとてもありがたく感じるのだった。
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