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僕と戀(2)

僕にとつて最も「初戀」に近いエピソードは、小學3年生の頃に少年團の活動で一緖になつた他校の同學年の女の子との事かもしれない。

僕が入つてゐた少年團はボーイスカウトに近い物で、夏休みには他校の團員も一緖にキャンプの活動があつた。
彼女とはその2泊3日ほどを一緖に過ごした間柄だつた。
可愛くて、面白くて、冗談のノリが合つて、繪もうまくて、瘦せてゐて、何なら名前もすごく可愛く思へて、とにかく大好きだつた。
キャンプの間は何時も二人でべつたり行動してゐた。かう言ふのは此の年頃の女子特有の物だと思ふ。
明るくて屈託のない子だつたから、身體の距離も近くて當然のやうに觸れたり、彼女は僕の肩にもたれ掛かつたりして來て、さう云ふ時に僕は少しドキドキして居た。
けれども僕は、そもそも他人からのボディタッチに身構へ過ぎる處があるから、その所爲だと思つて居たけど、今となつては戀愛感情と半々かも知れないと思ふ。當時は携帶もメールもなく、連絡先の交換などもしない儘だつた。
此の短い閒に彼女が僕のメモ帳に書いた幾つかの落書きを、僕は何年も大切に取つて置いて居た。彼女の繪が何だか好きだつたのだ。
僕の密かな宝物だった。

彼女とはその後も確か2、3回程、會ふ機會があつた。
僕はすごく仲良くなつたつもりで居たけど、後に彼女と同じ學校に通つて居る共通の知人に「あなたのこと、同性愛みたいで氣持ち惡いつて言つてたよ」と言はれて居たと知り、さういふ氣持ちを持つてたつてことバレてたんだ?と、氣持ち惡いと言はれた事より、そちらの方がショックだつた。

でもそんな事を言はれてゐても尚、今も思ひ出の中の彼女は可愛くて輝いて居てその名前も少し特別に感じるのだから、やつぱりあれは戀だつたんぢやないのかなと思ふ。

亦、此の頃は川村かをりのオールナイトニッポンを聞いて居たものだから、女の子が女の子を好きになつたり心がときめくのつてアリなんだなあと衝擊と共に受け入れて居たから、此の子に對する自分の中の仄かな戀心を否定する事なく居られたのだと思ふ。

子供の頃だし特に言語化はして居なかつたけれど、僕は男の子も好きに成るし、女の子だつて場合によつては心がときめく、そんな風に思つてゐた。

それから小學校、中學校は本當の意味で好きな男の子は居なかつた。
小學校の時、良いなと思ふ男の子はゐたけれど「クラスで一番面白くて、聰明な男子」と云ふ僕の中で最も評價に値すると思ふ男子を「好きな人」のポジションに置いてあると云ふだけの事だつた。

ちなみに僕の初キスの相手はギャルである。高校1年生の時にギャルの友達の家に行つたら「キスなんて大したもんぢやないよ」と唇を奪はれたのだつた。その時彼女はレモン味のジュースを飮んでをり、初キスの味は本當にレモンの味がした。

ギャルに無理やり唇を奪はれる內氣な靑年なんて、設定だけみれば何て美味しいと思ひませんか。あの時のギャルの友達には迚も感謝してゐます。ありがたうございました。

ひとまづこれで終はりです。3があれば今までの「戀」心を振り返りたいと思ひます。

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幾島溫
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