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No.009 コンゴ民主共和国の女子柔道の未来:希望の種を蒔く


「正座!黙想!礼!」

日本語で始まったこの言葉は、コンゴ民主共和国の首都キンシャサに響き渡った。中村さんによる女子柔道選手向けのセミナーの開始を告げる言葉だった。この瞬間、参加者たちの目に輝きが宿り、新たな章の幕開けを感じさせた。

コンゴ民主共和国の柔道界、特に女子柔道にとって、このセミナーは画期的な出来事だった。これまで、女子選手が専門的な指導を受ける機会はほとんどなかった。そんな中、日本から来た中村さんによるセミナーは、まさに渇いた大地に降る恵みの雨のようだった。

政府関係者もこの機会の重要性を認識していた。
「素晴らしい取り組みです。ぜひ何度も来ていただきたい」という声が上がったのは、単なる外交辞令ではなく、真摯な要望だった。彼らは、この国の柔道、特に女子柔道の発展が、スポーツを通じた国の成長につながると確信していたのだ。

セミナーは2時間近く続いた。しかし、時間が経つにつれて参加者たちの熱意が冷めることはなかった。むしろ、その熱は増していった。中村さんが「疲れましたか?」と尋ねても、参加者たちの目は「まだまだやりたい」という思いで輝いていた。


セミナー後には、中村さんとの写真撮影を希望する長い列ができた。この光景は、コンゴ民主共和国における柔道の人気と、人々の向上心を如実に物語っていた。

男子柔道選手はオリンピックに出場するなど、一定の成果を上げている。しかし、女子選手を取り巻く環境は依然として厳しい。専門的な指導を受ける機会が限られているのは、その象徴と言える。そんな中で今回のセミナーは、コンゴ民主共和国の女子柔道界にとっても、指導者である中村さんにとっても、かけがえのない経験となった。

現地政府の高官はこのように言ってきた。「もちろん柔道着などのものの支援はありがたい。しかし、経験を還元して欲しい。」

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