少子高齢化は50年前からわかっていた
●「少子高齢化は50年前からわかっていた」
ご存じのように現在日本は深刻な少子化問題を抱
えています。
出生率は先進国では最悪のレベルであり、世界最
悪のスピードで高齢化社会を迎えつつあります。
この少子化については、「日本人のライフスタイ
ルが変わったから」と考えている人も多いようで
す。
確かに、ライフスタイルの変化によって晩婚化、
非婚化が進んだという面もあります。
しかし、晩婚化、非婚化というのは、女子教育の
進んだ先進国ではどこにでも見られるものです。
日本が先進国の中でもっとも少子化が進んでいる
理由にはなりません。
実は日本が先進国の中で少子化が進んだのは、
「政治の無策」という面も大きいのです。
というより、少子高齢化は人災だとさえいえるの
です。
今回から数回に分けて、いかにして日本の政治が
少子高齢化を招き寄せたのか追究したいと思いま
す。
実は日本では半世紀近く前から、「このままでは
少子高齢化になる」ということがわかっていました。
わかっていながら、有効な対策を講じてこなかっ
たのです。
今の日本はこのまま少子高齢化が進めば、どれ
ほど日本の企業が頑張ったところで、日本の衰
退は免れません。
その事実は、どんな楽観論者も否定できないは
ずです。
そして、少子高齢化というのは、今、何も手を
打たなければ、必ず進んでいきます。
つまり、今、何も手を打たなければ、日本は必
ず衰退するのです。
南海トラフ地震の場合は、もしかしたら、この
数十年のうちには起きないかもしれませんし、
もしかしたら100年くらい起きないかもしれ
ません。
しかし、少子高齢化は、南海トラフ地震のよう
な不確定な要素はまったくありません。
このままいけば、必ず避けられないものなので
す。
厚生労働省の発表では、2022年の出生数は
80万人を割りこみ79万9728人でした。
出生数が80万人を下回るのは1899年の統
計開始以来、初めてのことです。
1970年代には200万人を超えていたこと
もあったので、この落ち込み方は凄まじいもの
があります。
●なぜ日本だけが少子高齢化になったのか?
しかし、この問題は日本だけのものではありま
せんでした。
欧米では、日本よりもかなり早くから少子高齢
化の傾向が見られていました。
日本の少子化というのは1970年代後半から
始まりましたが、欧米ではそのときにはすでに
かなり深刻な少子化となっていたのです。
そして1975年くらいまでは、欧米の方が日
本よりも出生率は低かったのです。
つまり、40年以上前から少子高齢化というの
は、先進国共通の悩みだったのです。
が、その後の40年が、日本と欧米ではまった
く違うのです。
半世紀前、日本よりもはるかに深刻な少子化とな
っていたヨーロッパ諸国は、この50年の間、様
々な子育て対策を行い、現在、出生率は持ち直し
つつあります。
しかし、日本はむしろ子育て世代にもっともダメ
ージのある政策ばかりを講じたのです。
たとえば、大学の授業料はこの50年の間に、
12倍にも高騰しています。
また平成元年に導入され、たびたび税率が上げら
れてきた消費税は、子育て世代にもっともダメー
ジが大きい税金なのです。
収入における消費割合が一番大きいのが子育て世
代だからです。
国はこの50年の間、子育てがしにくくなるよう
な政策ばかりを講じてきたのです。
現在、日本政府は「少子化対策」に力を入れてよ
うとしていますが、まだ全然問題解決にはなって
いないレベルです。
半世紀前は、父親一人が働いていれば、どこの家
庭でも子供二人くらいは育てることができました。
しかし、現在は、夫婦共働きであっても、子供
一人を育てるので精いっぱいという家庭が多い
です。
日本はいったいなぜそういう国になったのでし
ょうか?
●ほかの先進国は少子化対策にお金をかけた
この半世紀の間、欧米諸国は子育て環境を整える
ことなどで、少子化の進行を食い止めてきました。
下のデータは、先進主要国の家族関係の社会支出
のGDP比です。
家族関係社会支出とは児童手当や就学前児童への
給付、各種社会保障、社会福祉などへの支出のこ
とです。
先進主要国の家族関係社会支出(GDP比)
日本 1,29%
アメリカ 0,65%
ドイツ 2,28%
フランス 2,96%
スウェーデン 3,54%
イギリス 3,57%
国立社会保障・人口問題研究所「社会費用統計」
より
これを見ると、日本はヨーロッパ主要国に比べ
て、かなり低いことがわかるはずです。
ヨーロッパ主要国は少子化を食い止めるために
政府がそれなりにお金と労力をかけているので
す。
欧米諸国のほとんどは、1970年代の出生率
のレベルを維持してきました。
だから、現在では日本ほど深刻な少子高齢化に
はなっていないのです。
1975年の時点で、日本の出生率はまだ2を
少し上回っていました。
フランスは日本より若干高いくらいでしたが、
イギリスもアメリカもドイツも日本より低く、
すでに出生率が2を下回っていたのです。
しかし、フランス、イギリス、アメリカは、
大きく出生率が下がることはなく、現在は出生
率は2に近くになっています。
一方、日本は70年代から急激に出生率が下が
り続け、現在は1,4を切っています。
もちろん、出生率が2に近いのと、1,4以下
とでは、少子高齢化のスピードがまったく違っ
てきます。
この記事は、私の有料メルマガ「本音で役立つ税金情報」の記事
の一部から転載しました