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妻「この豚肉火通ってない、あげる!(^^)」



 それはある日の夕食で起こりました。その日はお互い疲れていたので、味付けされた状態で売っている豚肉を焼いたものがメインのおかずでした。適当に肉を焼いてサラダを用意して、夫婦でテレビを見ながら夕食を食べていました。いつもの平和な日常です。すると途中で突然妻が言ったのです。

「この豚肉火通ってない、あげる!(^^)」

 にこにこ笑っている妻がすっと差し出した皿の上には、中がまだやや赤い豚肉が置かれていました。私は深く考えずにぱくりとその火が通りきらない豚肉を口に運びました。そしてその後はまたテレビを眺めながらいつも通り食事をしました。

 次の日、仕事が終わり今日の夜ご飯は何かな、と空腹に頭を支配されながら帰路につくと、ふと妻に生焼けの豚肉を食べさせられたことを思い出しました。

は?


 いやいやまてまて、おかしいだろ。あまりにも自然で、あまりにも平然としていたものだから、その時その瞬間は何も考えずに対応してしまいました。でもよく考えてほしい。何故私は生焼け肉を食べたのか。何故妻は生焼け肉を、自分の食べたくないものを、夫に対してにこやかに差し出したのか。思い出すと怒りと懐疑の感情が沸々と腹の底から湧き上がってきました。

 家に帰ると妻はいつも通り私を迎えました。私はもやもやとした思いを腹の底に抱えながら、1度首を傾げてから、いつも通り部屋着に着替え食卓に着きました。「「いただきます」」と挨拶をして食事を始めましたがすぐに、「昨日なんで俺は生焼けの豚肉を食べさせられたんだ??」と呟いていました。妻の方を向くわけでもなくぽつりと放たれたその呟きは、食卓の上を漂っているかのようでした。妻は「ん?」と言ったあと少し間をおいて、ふふっと笑いました。私はもう一度、今度は妻の方を向いて「なんで生焼けの豚肉を俺に食べさせたの?」と質問しました。今度の私の言葉はちゃんと妻に向けられたものです。すると妻はにやりといたずらっ子の子どものように答えました。

私お腹痛いから


 「あーそう」と一瞬納得しそうになりましたが、よく考えると全然納得いきませんでした。だからなに?って感じ。生焼け肉を食わないのは勝手だけど俺が食う理由ないよね?

 きっと妻は私のことを残り物を全部平らげてくれるペットくらいに思っているのでしょう。外食していても食べ切れないものを渡してくるし。海鮮丼の米だけ渡されたこともあります(絶対に残しておけよ、おかずを)。私は食べ物を残してはいけないという信念を親に叩き込まれ過ぎて育った人間なので、妻の残した刺身の下に敷かれていた生臭くなっただけの米でも全部食べてしまうし、めちゃくちゃ太ってもいます。私と一緒に食事に行くと食べたいものとりあえず頼んでしまうらしいです。残っても食べてくれるから。

 何が言いたいのかと言うと、この記事を読んだ皆さんは、これから周りの太っている人に少しだけ優しくしてあげて下さいということです。環境によって生み出された悲しいデブは、世の中にたくさんいるはずです。私もその1人。だから私にも優しくするのです、約束ですよ。


とてもありがとうございます◎◎