社会的ジレンマの数々
下表の a , b , c , d には 1 , 2 , 3 , 4 のうちの異なる数が1つずつ入ります。次のゲームを利得表で表して、ゲームの解を求めてください。ただし、プレーヤーはどちらも対等で、両者は同じ考えで行動します。また、お互いに連絡を取り合うこともなく各自で自分の利得を高めるような行動を採ります。
では、立て続けに3問いきます。
これらの問題では、両者がそれぞれの選択をした場合の利得の大小関係を解答者自らが判断して、始めに利得表を作ってください。文章をよく読めば、大小関係は一意に決まるはずです。次に自分で作った利得表からこれらの問題を同時ゲームとして捉えたときのゲームの解を求めてください。
なお、それが終わったら次に同じテーマを時間差ゲームとして考えてみましょう。そのために、まず先ほどの3題をゲームの木で表して、時間差ゲームの解を求めてください。ただし、このゲームではプレーヤー2者は互いに対等なので、先手と後手を入れ替える必要はありません。また、同時ゲームとして解いたときの解と時間差ゲームとして解いたときの解を比較して、考察してください。
では《解説・解答》です。
同時ゲームで解いてみる
(1) 解は1つに決まります。両者が軍縮する場合に合計利得は最も多くなるのですが、それは解ではありません。相手国が軍縮するなら、自国は軍拡で行く方が得です。また、相手が軍拡を選ぶ場合は、自国が軍縮したら大損してしまいます。
相手の選択に関わらず自国は軍拡を選んだ方が有利なのです。だから軍拡競争は止まらない、これがゲームの解です。
両者が軍縮を選ぶのが理想のように見えますが、その状態は、相手を裏切りたいという誘惑と、相手にいつ裏切られるかもしれないという恐れをお互いに抱いている状態ですから、不安定なのです。ましてや相手のことが信頼できなければ、軍拡を続けるしかないということでしょう。
(2) 両者ともマンモスを狙った場合の利得が一番多くなるのですが、相手がマンモスを狙ってくれる保証はありません。片方がウサギを追いかけてしまった場合は、もう一人もウサギを追いかけざるをえなくなります。そうしなければ自分の取り分はゼロになってしまうからです。だから「一人がマンモスを狙い、一人がウサギを狙う」という選択肢は無いのです。
同時ゲームの解き方に従って解を求めても、解は2つあります。2人がともにウサギを無視できるか否かによって異なる結果になるということでしょう。
(3) これも解は2つあります。片方が経済優先で突き進んだ場合、もう片方は環境優先で行くしかなくなります。そうじゃないと、人類滅亡という最悪の結果になりますから。でも、相手が環境優先でいくなら、自国は経済優先でいく方がお得です。
2つの解のどちらかに落ち着いた場合、双方にとって選択を変えると利得が減少します。つまり、両者ともそこから動く理由が無いのです。2つの解のうちどちらに落ち着くにせよ、そこから動かなくなるということでしょう。
ここに挙げた3つの問題はいずれもゲーム理論の有名問題で、元ネタは
(1) 囚人のジレンマ
(2) シカ狩りゲーム
(3) チキン(弱虫)ゲーム
です。
時間差ゲームで解いてみる
下の左表は同時ゲームとして解いたときの解、右図は時間差ゲームとして解いたときの解です。
(1) 左右の解がぴったり一致した。時間差を設けても何も変わらない。つまり、相手の動きを探っても、こちらの考えを示しても結果は同じということだ。ということは、「両国が話し合っても交渉しても無駄」ということになるのだろうか?
(2) 同時ゲームでは解が2つあったのに、時間差ゲームでは解が1つに絞られた。しかも、両者にとって最も望ましい解に。「両者が順番を守り、かつ合理的な判断をするならば、衝動的な行動を取るはずがない」ということか?
(3) この問題でも同時ゲームでは解が2つあったのに、時間差ゲームでは解が1つに絞られた。A国とB国の対称性を考えると、「先手必勝」ということになる。先に自分が強硬に出れば、相手は譲歩せざるをえなくなる。逆に、のんびりしていると相手に先を越されて、ひどい目に合う?
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〜 ゲーム理論 練習帳 〜
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▷ サンプル問題
▷ ゲームを変える + 社会的ジレンマの数々 + ベストな配分を探れ
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