石油の最後の1滴
「あと○○年で石油が無くなる」という話は、まるで信用できません。1つの理由は、産油国や石油会社が、自らの存亡に関わることをバカ正直に言うはずがないからです。もう1つの理由は、採掘技術と原油価格によって、採算が取れるラインが変わるからです。
ところで、石油を掘るための燃料は、石油です。地面から浅いところの掘りやすいものがなくなれば、さらに深くまで掘ることでまた石油が湧いてきます。条件が悪くなれば回収率が下がりますが、得られる量が投入する量より多いうちは、掘ることができます。
仮にいま現在 1 の石油を投入すれば 100 の石油が得られるとしましょう(回収率 99%)。この場合、正味の生産量は 99 です。さて、条件がこれより悪くなったら、人はどうするでしょうか。
・10 の石油を投入しなければ 100 の石油を得られないとなったら(回収率 90%)… → 11 の石油を投入すればいいんです。そうすれば 110 の石油が出てきて、99 の石油を確保できます。
・50 の石油を投入しなければ 100 の石油を得られないとなったら(回収率 50%)… → 99 の石油を投入すればいいんです。そうすれば 198 の石油が出てきて、99 の石油を確保できます。
こうすれば、必要量を確保することができてしまいます。資源が加速度的に減り、環境負荷が加速度的に増えますが、現行の経済システムに則った形で成立します。
理論的には、まだまだいけます。回収率が 10% になったら、891 の石油を投入すればいい。回収率が 1% になったら、9801 の石油を投入すればいい。どちらの場合も、99 の石油を確保できます。
原油価格はそれにどのように影響するでしょうか。採掘のコストが上がれば、原油価格は上昇します。けれども、原油価格が上昇すれば、それまで採算が合わなかったところでも採算が合うようになります。つまり、原油価格が上がれば上がるほど、石油がどんどん湧いてくるわけです。
買い手がいる限り、人類は石油を掘るでしょう。それが自由主義に則った現行の経済原則です。こうして、得られる量が投入する量と等しくなる(回収率ゼロ)まで、人類は石油を掘り続けるのです。
(付記)
※ 上の見出し写真は、ミャンマーの油田。詳しくは こちら をどうぞ。
地球温暖化を期待する人たち
石油などの化石燃料を燃やすと二酸化炭素が発生して地球温暖化につながります。それを避けるべく世界各国が一致して化石燃料の使用を控えようという動きがあります。でも、地球温暖化は悪いことばかりとは限りません。
考えてもみてください。気温が上がれば海水の蒸発量も増えて、降水量も増えます。二酸化炭素と気温と降水量が全部同時に増えるなら、農業にとってはとても良い条件ですね。
世界の環境問題は地球温暖化だけではありません。砂漠化が確実に進行していますし、このままでは将来必ず世界的な食糧危機がやってくるでしょう。地球温暖化はそれを一気に解決してくれる妙薬になるかもしれないのです。
地球温暖化をひそかに期待している人もいるはずです。北極圏の永久凍土が解ければメタンガスが大量発生して、そのまんま良質な燃料が得られます。北極海の氷が解ければ、ヨーロッパとアジアをむすぶ船便はこれまでよりずっと速く楽になります。
そうこうするうちに温暖化はさらに進むでしょうけれども、引き続いて南極大陸の氷が解ければ、大油田が見つかるかもしれません。そのうちきっと南極大陸は緑に覆われるでしょう。そのころには世界人口100億人を賄うだけの食糧増産を達成しているかもしれません。
そんなことを考えて、うまく立ち回ろうという人もきっと出てくることでしょう。あぁ、いやだいやだ。
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