世の中の増減は率で変わる
【問】文中の括弧〔ア,イ,ウ,エ〕から適当な方を選び、括弧〔オ,カ〕に適当な式を入れて、文章を完成させてください。
この問題を実際に高校3年の定期試験で出したところ、[ア]〜[エ]はよく出来ていました、
けれども、最後の2つ[オ]と[カ]がダメでしたね。説明しましょう。
①: 最初の r 年で R 倍 ⇔ R=aʳ … ①’ ⇔ r=logₐR … ①’’
②: 続く s 年で S 倍 ⇔ S=aˢ … ②’ ⇔ s=logₐS … ②’’
③: (r+s) 年で RS 倍 ⇔ RS=aʳ⁺ˢ … ③’ ⇔ r+s=logₐRS … ③’’
ここまでは問題文にほぼ書いてあります。
さて、③を「r , s を使わずに R , S で表す」ためには、③’’ に ①’’ と ②’’ を代入すれば、
ご存知の公式「logₐR+logₐS=logₐRS」が出てきます。このとき両辺は「時間」(年数)を表します。( logₐR は「量がR倍になるのに要する時間」です)
また、③を「R , S を使わずに r , s で表す」ためには、③’ に ①’ と ②’ を代入すれば、
ご存知の公式「aʳaˢ=aʳ⁺ˢ」が出てきます。このとき両辺は「量」(何倍か)を表します。以上から、
です。どちらも数学Ⅱの教科書に出てくる基本的な公式・法則です。
[カ]について「そりゃそうだ」としっくりくる人が多いでしょう。
さて、[オ]はどうでしょうか。実は[オ]と[カ]は全く同じもの、単なる書き換えなんですね。ですから[カ]が「当然だ」と思えるなら、[オ]も「そりゃそうだ、当然だ」と思いたいものです。
それはそうと、問題文を読めば、《答え》上のように決まります。他にはあり得ません。
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ついでながら、もう1つの指数法則 (aʳ)ᵗ=aʳᵗ … ④ についても、これを機械的に対数に書き換えることで別の対数公式(法則)を導くことができます。④ の右肩部分 rt を指数部分と読み取って、rt=logₐ(aʳ)ᵗ 。次に r を R で置き換えれば、公式 logₐRᵗ=t logₐR の完成です。
さらについでながら、対数を使う上であと1つ知っておきたい公式は、底変換公式です。等式 R=aʳ(⇔ r=logₐR)の両辺の底を x とする対数をとると、
logₓR=logₓaʳ=r logₓa ⇔ r=logₓR/logₓa ⇔ logₐR=logₓR/logₓa
が導かれます。最後の式を見ると、左辺の底 a だったものが、右辺の底 x の対数に書き換えられました。
以上まとめると、
となります。指数・対数で知っておくべき公式は以上ですべてです。指数が使えるなら、対数に慣れればきっと大丈夫です。
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〜 指数で変わるものを対数で見る 〜
▷ 指数の拡張 ▷ 世の中の増減は率で変わる
▷ 原子から宇宙までを1つの数直線に表してみよう
▷ eってなに? ▷ e^iπ+1=0 を腑に落とす