統計の話題として、共同通信社の記事がとても興味深い。2021年8月21日(土)の記事だ。
※ この大会の名称は「UEFA EURO 2020」という。当初は2020年に開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年から2021年に延期された。
「6万人以上を収容した決勝、準決勝を含む計8試合分」の総観客数を仮に「8万人×8試合=64万人」としよう。そのうち「観客計約6400人が感染した」ということは、観客全体の約1%が感染したということだ。
最後の一文「感染者の多くは、イングランド代表がイタリア代表に屈した決勝の観客」についても試算してみよう。まず、決勝戦の観客数を(先ほどと同じく)8万人としよう。次に「約6400人の感染者のうちの多くの人」を(過半数の)4千人としよう。そうすると、決勝戦の観客全体の5%が感染したことになる。
ところで、仮にこの数字を採用するとして、「決勝戦で他の試合の約5倍の人が感染した」というわけではない。というのは、実際にはおそらく同じ人が何試合かを見に行っていたりするだろうからだ。決勝戦を観戦した人の中に、それ以前の試合で感染した人も含まれているだろう。
駄洒落みたいだが、「カンセンしてカンセンした」(観戦して感染した)わけだ。これは記事に「新型コロナウイルスの感染対策の効果を実証するため」と書いているように、1つの社会実験である。
教材にするにはもう少し細かいデータが欲しいところではあるが、記事のデータだけでもそれなりにいろいろ分かる。最近の日本のデータと比較したりすれば、そこから見えてくるものもあるだろう。
次に私たちがアクセスしやすいデータを見てみよう。テレビでは「新規感染者数」を主に報道しているが、それだけだと見えないものがある。東京都の「新型コロナウィルス感染症対策サイト」(→ https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp )が分かりやすくてオススメだ。
そのページの上の方にある「検査陽性者の状況」の表で「累計の陽性者数」から「死亡者数」と「退院等」の数を差し引けば「現在の罹患者数」が分かる。8月20日の数は「302,796−2,365−255,928=44,503」人である。入院・自宅療養などを合わせた人数だ。さらに東京都の人口1396万人をこの数で割ると、都民の「313人に一人がコロナに罹患中」という計算になる。(実際にやってみれば、いろんなことが見えてくる)
他に気になったのは「その他 参考資料」というページに載っている「相談件数」だ。「新型コロナコールセンター」と「東京都発熱相談センター」の2つが載っているが、これらは先行指標のような気もするし、そこから潜在的な感染状況が見えるような気もする。
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※ 共同通信社の元の記事はこちら(↓)です。
他の報道機関からも出てきた。
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