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サッカー観戦でコロナ感染者集計

 統計の話題として、共同通信社の記事がとても興味深い。2021年8月21日(土)の記事だ。

英、満員観戦で6千人超感染 サッカー欧州選手権
 新型コロナウイルスの感染対策の効果を実証するため、英政府が大人数の観客の入場を認めた6~7月のサッカー欧州選手権で、観客計約6400人が感染したとみられる・・・同選手権のうち、ロンドンの競技場で開催し、6万人以上を収容した決勝、準決勝を含む計8試合分を集計した。感染者の多くは、イングランド代表がイタリア代表に屈した決勝の観客。

※ この大会の名称は「UEFA EURO 2020」という。当初は2020年に開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年から2021年に延期された。

 「6万人以上を収容した決勝、準決勝を含む計8試合分」の総観客数を仮に「8万人×8試合=64万人」としよう。そのうち「観客計約6400人が感染した」ということは、観客全体の約1%が感染したということだ。
 最後の一文「感染者の多くは、イングランド代表がイタリア代表に屈した決勝の観客」についても試算してみよう。まず、決勝戦の観客数を(先ほどと同じく)8万人としよう。次に「約6400人の感染者のうちの多くの人」を(過半数の)4千人としよう。そうすると、決勝戦の観客全体の5%が感染したことになる。
 ところで、仮にこの数字を採用するとして、「決勝戦で他の試合の約5倍の人が感染した」というわけではない。というのは、実際にはおそらく同じ人が何試合かを見に行っていたりするだろうからだ。決勝戦を観戦した人の中に、それ以前の試合で感染した人も含まれているだろう。
 駄洒落みたいだが、「カンセンしてカンセンした」(観戦して感染した)わけだ。これは記事に「新型コロナウイルスの感染対策の効果を実証するため」と書いているように、1つの社会実験である。
 教材にするにはもう少し細かいデータが欲しいところではあるが、記事のデータだけでもそれなりにいろいろ分かる。最近の日本のデータと比較したりすれば、そこから見えてくるものもあるだろう。

 次に私たちがアクセスしやすいデータを見てみよう。テレビでは「新規感染者数」を主に報道しているが、それだけだと見えないものがある。東京都の「新型コロナウィルス感染症対策サイト」(→ https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp )が分かりやすくてオススメだ。
 そのページの上の方にある「検査陽性者の状況」の表で「累計の陽性者数」から「死亡者数」と「退院等」の数を差し引けば「現在の罹患者数」が分かる。8月20日の数は「302,796−2,365−255,928=44,503」人である。入院・自宅療養などを合わせた人数だ。さらに東京都の人口1396万人をこの数で割ると、都民の「313人に一人がコロナに罹患中」という計算になる。(実際にやってみれば、いろんなことが見えてくる)
 他に気になったのは「その他 参考資料」というページに載っている「相談件数」だ。「新型コロナコールセンター」と「東京都発熱相談センター」の2つが載っているが、これらは先行指標のような気もするし、そこから潜在的な感染状況が見えるような気もする。

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※ 共同通信社の元の記事はこちら(↓)です。

《 英、満員観戦で6千人超感染 サッカー欧州選手権 》
 新型コロナウイルスの感染対策の効果を実証するため、英政府が大人数の観客の入場を認めた6~7月のサッカー欧州選手権で、観客計約6400人が感染したとみられることが、政府が20日に公表した調査報告書で明らかになった。調査した研究者らは、密接状態で「ウイルスがいかに容易に広がるかが示された」と指摘、注意を促している。
 10カ国11都市を会場とした同選手権のうち、ロンドンの競技場で開催し、6万人以上を収容した決勝、準決勝を含む計8試合分を集計した。感染者の多くは、イングランド代表がイタリア代表に屈した決勝の観客。
共同通信社 8月21日)
(→ https://nordot.app/801632294909493248

 他の報道機関からも出てきた。

《 英サッカー欧州選手権 観客6000人超が感染 》
 イギリス政府が先月行った新型コロナの実証実験で、サッカーの観客6000人以上の感染が明らかになりました。
 イギリス政府が20日に発表した報告書では、6月から7月にかけて行われたサッカーのヨーロッパ選手権で、観客の約6400人が試合を通じて新型コロナに感染したとみられるということです。
 政府の実証実験として入場時には陰性証明かワクチン接種証明の提示が必要でしたが、先月の準決勝と決勝は密な状況で大声で叫ぶ人も多く、こうしたことが感染拡大につながったと分析しています。
 感染者の多数がこの2試合に集中していて、報告書は「対策をしていても感染拡大のリスクを減らすことは難しい」と指摘しています。
テレ朝 news 8月21日)
(→ https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000226297.html

《 英国の競技場 ユーロ観戦で6400人感染か 》
 今年6月から開催されたサッカー・ヨーロッパ選手権で、およそ6400人の観客が新型コロナに感染したと分かりました。
 今年6月から7月に開催されたサッカー・ヨーロッパ選手権で、イギリス政府は、新型コロナの感染対策の効果を実証するため大人数の観客を認めました。保健当局が、20日、公表した調査報告書によりますと、ロンドンの競技場で行われたあわせて8試合の観客およそ35万人のうち、競技場とその周辺でおよそ6400人が感染したとみられ、このうち、地元イングランド代表が勝ち進んだ決勝戦で3404人が感染したとみられるということです。
 調査にあたった医師は、「密の状況では、ウイルスが簡単に拡大することを示している」としています。
TBS NEWS 8月22日)
(→ https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4342444.html

《 ユーロ2020決勝戦で3000人以上が新型コロナに感染 》
 サッカーの2020欧州選手権(ユーロ2020)で、新型コロナウイルスが拡散していたことが分かった。
 英国政府は21日(現地時間)、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されたユーロ2020の決勝戦と準決勝の2試合で、入場者の中から新型コロナウイルス感染症の感染者が5000人以上出たと明らかにした。
 7月11日、イングランドとイタリアの決勝戦では、入場者約6万4000人のうち2295人がすでに感染した状態で競技場に入り、3404人は試合中に感染したものと思われる。これに先立って行われたイングランドとデンマークの準決勝では、同規模の入場者のうち375人が感染した状態で競技場に入り、2092人が試合中に感染したものと見られる
 これは英国政府が、コロナ禍で大規模イベント開催の可能性をテストするために、37のスポーツ競技などを対象に実施したイベント研究プログラムの結果だ。研究チームはNHS検査・追跡システムのデータを分析し、試合後2日以内に感染した場合には、「すでに感染した状態」で、3~7日以内に感染した場合は「競技場で感染した」と判断した。
 他のイベントでは新型コロナの感染がはるかに少なかったことが分かった。2週間開催されたウィンブルドンテニス大会では、入場者30万人のうち299人はすでに感染しており、582人が試合中に感染したことが分かった。
 イングランド公衆衛生局(PHE)の関係者は、「ユーロ2020とイングランドの決勝進出が、公衆衛生に相当な危険をもたらした」と話した。ただし「ユーロ2020はイングランドが、55年ぶりに決勝に進出する特殊な状況だった」と線を引いた。
 今回の研究は、競技場の入場者だけを対象に行われたため、ユーロ2020と関連した感染事例はさらに多いものと見られる。
WoW! Korea 8月22日)
(→ http://www.wowkorea.jp/news/korea/2021/0822/10312080.html

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〜 新型コロナで確率・統計を学ぶ
▷ コロナ渦中の確率計算      
▷ サッカー観戦でコロナ感染者集計 
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