古事記の中の「海彦・山彦」の物語は、次の通りである。
この話は、昔話「浦島太郎」にちょっと似ている。けれども、だいぶ違う。浦島太郎も山彦も竜宮城に行ったが、職業が違う。浦島太郎は漁師で、山彦は猟師。漁師の海彦は竜宮城には行っていない。
乙姫(豊玉姫)にもらった土産(玉手箱)の役割もだいぶ違う。というより、むしろ真逆だ。浦島太郎はそれによっておじいさんになってしまったが、山彦はそれを使って海彦をやっつけた。浦島太郎にとってはろくなものではなかったが、山彦にとっては素晴らしい武器だった。
いや、女が手渡したものを武器と考え、その武器が誰を標的にしたものかという目線で見ると、それぞれの物語の本質が見えてくる。
乙姫が手渡した玉手箱が攻撃する相手は、竜宮城にやってきた浦島太郎その人だった。
一方、豊玉姫が手渡した土産が攻撃する相手は、綿津見神の宮にやってきた山彦ではなくて、山彦に嫌がらせする海彦だった。
そうすると、次のような解釈が見えてくる。
海彦・山彦の話は大和政権のプロパガンダだ。
浦島伝説にかこつけて、暗にそういうことが言いたかったんだろうなぁと私は思うのだ。
※ 「因幡のしろうさぎ」にも同じテーマが隠されている。
└→ 「因幡のしろうさぎは何色か」
一方の浦島太郎の話は、不倫話と受け取るとしっくりくる。