あなただけの隠れ家と天国

あなたが好きなのは

お気に入りの人と過ごす静かで安全な時間

あなたが苦手なのは

大勢の人たちが一斉に話している混沌の空間

あなたはシャイで内気な女の子

あなたに会った人はみんな口を揃えてそう言う

だけどあなたは

あなたが気に入ったごくわずかな人にだけ見せる

愉快でブラックな一面を持っている

そこがわたしのお気に入り

あなたが好きなのは

きちんと整理されている引き出しの中

あなたが苦手なのは

だれかが勝手に私物を漁ること

あなたが好きなのは

帽子を目深にかぶること

あなたが苦手なのは

知らない人と目を合わせること

あなたが好きなのは

たっぷりの時間があること

あなたが苦手なのは

何かに追われている主人公がソワソワしている映画

あなたが好きなのは

ふかふかの席に座ってゆっくり人と話すこと

あなたが苦手なのは

バラエティ番組みたいなノリ

あなたはHSCだった。ASDのグレーゾーンだった

あなたはこれからそのどれにも必要な支援を受けることなく育ってゆく

自分がわるいのだと責めながら

自分じゃない自分になることで自分を保ちながら

泣いてるピエロのまま

生きづらさの要因を探してゆく

それがどれだけ凄いことなのか知るのはずっと先のこと

あなたの生きづらさにひとつひとつ名前がついてゆくたび

あなたの肩から荷物がまたひとつ降りてゆく

荷物の置きばしょが見つかったあなたは

あなたととても仲良しになった

あなたはこれから人間に起こりうることの中で最も残酷なことの一つである「拒絶」を経験する

あなたの中の最も暗くて深いばしょにある、黒よりも黒い黒と対峙する

その地獄から自分自身のちからで這い出してゆく

経験を積んだあなたの強さはもっとしなやかに頑丈になった

経験がなかったら、あなたではない、だれかになっていた

わたしはあなたに出逢いたかった

あなたはあなたがだいきらいな地球の上に

あなただけの、ここに居る理由を見つけてゆく

それがどれだけ凄いことなのか知るのはもっとずっと先のこと

あなたが好きなのは、センスを誉めてもらうこと

わたしのカオとカラダはわたしが作ったものじゃないのよと言うあなた

センスを誉めてもらえたとき、魂を誉めてもらえたきもちになる

あなたの欠けた自信は、あなたの魅力の一つ

あなたの欠けた自信と、だれかの欠けた自信との間には、ケミストリーが生まれる

あなたはせんさいで聡明なアーティスト

地球上で生きることの苦しみとよろこびを学んできた高貴な魂

あなたがこれから生きるのは

あなたが生きたことで構築されたあなただけの隠れ家と天国

地球と宇宙の真ん中にあるセカイ

そこにはあなただけのお気に入りの人がいて

あなただけのお気に入りのものが置いてある

あなたが何より好きなのは

だれかと心が繋がっているときに過ごすひとりの時間

あなたは目に見えないわたしとずっと繋がっている

今もこれからもずっと、繋がっている