
思惟かねの一口ニュース解説【技術面/7月】 「神戸製鋼モータ鉄心の新製法」「3Dプリンターの家!?」「磁石不要の新モーター」「衝撃波で飛ぶロケットエンジン」
この記事は、私、思惟かねのニュース解説ツイートのアーカイブです。気になるニュースを5ツイート程度の一口サイズで深堀り解説します!
◆神戸製鋼、EVモーター2割軽く 新鋼材開発
神戸製鋼、EVモーター2割軽く 新鋼材開発https://t.co/wmtXIH5kdY
— 思惟かね(オモイカネ)📕🔔 (@omoi0kane) July 2, 2021
モータは銅線とそれを巻く鉄心(コア)から成ります。この鉄心は「磁気は通すが電気は通さない」という相反する要件を満たすため、実はかなり技術の必要な分野。
この鉄心を線状の鋼材で作る新技術を神戸製鋼が発表しました。
一般的に鉄心は下の写真からも見てわかるように、薄鋼板を積層して作られていて、この層間を絶縁することで、透磁性と絶縁性を両立しています。
今回の神戸製鋼の技術は、六角断面の細鉄線を絶縁加工して依り合わせ、鉄心を形成するものだそうで、形状の自由化と軽量化が可能になります。こうした自由形状が重要になるのが、従来のラジアル型に比べ薄型・高出力が期待できるアキシャル型モータです。この形式のモータが普及すれば、今回の技術は大きな需要が見込めるでしょう。
また同様の技術として、住友金属も絶縁した鉄粉を圧縮成形し鉄心を形成する技術を実用化しています。各社が次世代型モーターの基礎技術開発にしのぎを削っていますね。
◆3Dプリンターの家は300万円24時間で建つ
3Dプリンターの家は300万円24時間で建つ https://t.co/Ivl87bi1II
— 思惟かね(オモイカネ)📕🔔 (@omoi0kane) July 26, 2021
家を丸ごと「印刷」してしまうというのは驚きです。
が、実は3Dプリンターの大物への応用は世界中で進んでいて、既に30m×6.7m×3mサイズが作れる装置があり、ロケットを丸ごと3DPで作るスタートアップ企業まであったりします。
もっとも、建物は安全性が求められるため、国によって定められた様々な規定を満たさないといけないので、3Dプリンターの強みである造形の自由さとは相性が悪いのが最大のネックでしょう。自由に作れても、いちいち規制に合致するか確認が必要では魅力が半減ですからね。
どこまで法律と折り合いを付けられるかが一つの鍵になるでしょうが、家というものの新たな可能性を広げる技術ですね!
【参考】
個人的には大臣認定だとある程度パターン化された間取りの組み合わせになりそうな予感👀
— 住場みやこ@ch.385【バーチャル建築コンサルタント/流浪のゲーセン民/学術系メスガキV】 (@vtuber_ch385) July 26, 2021
低コストには違いないので、認定受けれるといいなあ😌 https://t.co/B8FKqcdM44
◆独MAHLEが磁石レスで高効率、メンテナンスフリーのモーターを開発
独MAHLEが磁石レスで高効率、メンテナンスフリーのモーターを開発https://t.co/DVznQzCEqH
— 思惟かね(オモイカネ)📕🔔 (@omoi0kane) July 29, 2021
通常コイルと永久磁石により回転力を生み出すところ、永久磁石を非接触給電の電磁石で置き換えたユニークなモータが登場!
永久磁石のレアアースが不要で安価な上、高回転でも高効率運転が可能です。(1/X)
現在EVなどで主流のブラシレスDCモータ(BLDC)は、固定されたステータに流す電流を制御し磁界を「回転」させ、これがロータの永久磁石と引き合うことで回転する仕組みです。
しかしこの永久磁石にはネオジムなどの偏在性が強いレアアースが必要で、入手性、高コストが課題となっていました。また一方で、この永久磁石を電磁石で置き換えた電磁石モータは、回転するロータに給電するための接点が必要なため、これが摩耗してしまう問題がありました。
それを「非接触給電」で解決したのが今回のポイントです。これにより接点の摩耗を回避しつつ、レアアースを必要とせず製造ができます。
さらにこのモーターには、それ以外にもメリットがあります。それが高回転での効率の良さ。
BLDCモータでは、回転数が高くなってくると永久磁石の回転によりコイルに生じる起電力が回転を妨げてしまうため、あえて追加の電流を流して不要な磁界を打ち消す制御を行います(弱め界磁制御)。このため高回転では効率が低下してしまいます。
今回のMAHLE社のモータは、あくまで推測ですが、オンオフ可能な電磁石を活かし、直接邪魔な磁界だけをオフして効率を向上しているのではないでしょうか。こうすれば通常BLDCでは効率が劣る高回転でも高効率が維持できます。
いずれにせよ、これは高回転まで幅広い回転数を使うEVでは、航続距離を伸ばす上でかなり有利な特性となるでしょう!
開発元のMAHLE社は2.5年後の量産を目指し、メーカへ提供を始めているとのことです。
【参考】
BLDCの弱め界磁制御(日経XTECH)
◆推力は衝撃波 世界初の宇宙実証 ロケットエンジン 軽量化実現へ期待
推力は衝撃波 世界初の宇宙実証 ロケットエンジン 軽量化実現へ期待https://t.co/NnFq5EZ39i
— 思惟かね(オモイカネ)📕🔔 (@omoi0kane) July 30, 2021
ロケットの最も複雑な部品の一つであるターボポンプ。これを必要とせず、高効率と軽量化を両立できる「パルスデトネーションエンジン」の世界初の宇宙実証機をJAXAが打ち上げ成功しました!(1/7)
パルスデトネーションエンジン(PDE)とは、超音速で衝撃波を生じながら燃焼が起こる「爆轟」を利用するロケットエンジンです。
通常のロケットエンジンはターボポンプによって燃料を加圧して燃焼室内へ噴射し、一定圧力下で燃焼を行います(Braytonサイクル)。
しかしPDEはこのターボポンプを用いることなく、代わりに爆轟による瞬間的な高圧力を…いわば圧力の「波」をうまくとらえて燃焼を行うのが特徴です。
こちらは筑波大学とJAXAのPDEの試験機ですが、細長く尾を引く大きな燃焼室が特徴的ですね。さて、このPDEはどんな原理で動作するのでしょうか?
PDEの動作サイクルは以下のようになります。
まず燃焼室の閉端(下図左)で爆轟が起こると、爆轟による高圧の燃焼がたちまち超音速で伝播します。この時生じる圧力波は開端(図右)で反射して戻りますが、この過程で先程まで高圧だった燃焼室内は一時的に低圧になります。
ここに燃料を注入、再び爆轟を起こし高圧で燃焼させる…PDEはこれを繰り返すことで動作します。
通常のロケットエンジンは、熱効率を高めるために燃焼室の圧力を高めると、その分高圧で燃料を送り込まなければなりません。
しかし燃焼室の圧力に「満ち引き」があるPDEは、そうした機構を必要とせず、爆轟を利用した高圧により高効率の燃焼を実現できるのです。
複雑で精密なターボポンプを省略できれば、ロケットは最大30%も軽量化できるそうです。
もっとも超音速の燃焼の「満ち引き」に合わせた燃料の噴射・点火は至難の業。事実PDEの考案は1950年代に遡るも、実現には至らず、スパコンの進化による数値流体力学計算(解析技術)の発展により、今日ようやく実現しつつある技術なのです。
またこの爆轟を燃焼室の長手方向ではなく、回転方向に伝播させて燃焼するロータリデトネーションエンジン(RDE)という方式も研究されています。
昨年には米の研究チームが水素燃料によるRDEの研究を公表。20万fpsのカメラで爆轟が伝播し回転する様を捉えています。
RDEによる初飛行は2025年が目標とのこと。
PDEやRDEのようなエンジン技術は、今後ロケットをはじめ、ジェットエンジンや発電用のタービンへの応用も研究されています。
こうした爆轟を利用したエンジンが「爆発的」にロケットの常識を書き換える日が来るかもしれませんね!
【参考】
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