君とご飯を食べるのは暇つぶし
「君とご飯を食べるのは暇つぶし」
と面と向かって言われた事がある。
それを言ったのは私が20代の頃勤めていた会社の男性上司。
全身をバーバリーで固め、身ぎれいな割にデスクの上は乱雑、
仕事中は無口だが、話をしだすと、私にとっては
とても興味深い変なことを言う人だった。
私はそれまで会った事がないタイプの人だった。
もう何十年も前の話だから具体的に思い出せないのだが
例えば、
人からもらったお菓子を食べて、後で平気で
「さっきありがとうね、あれまずかったよ」などと言う人だった。
そんな上司と、もう一人先輩とご飯に誘われて行ったらあの言葉である。
「君たちとご飯食べるのは暇つぶしですよ」。
当時の私は
「それってなんか私たちに失礼じゃないですか?」
って言い返してみたが、上司の反応は
「え?そんな事ないでしょ」
だった。
僕の暇つぶしに選ばれて喜ばしい事でしょと言うようなニュアンス。
『人生は死ぬまでの暇つぶし』という言葉があるが
だとすれば
何をやっても誰と会っても暇つぶしなのだ。
上司の暇つぶしに私と先輩は選ばれたし
私もその上司(と先輩)を暇つぶしに選んだという事。
当時この上司と先輩とは何度もご飯を食べたり
飲みに行ったりしたのだが
覚えている話はこれだけである。
なんとも悔しいが、
暇つぶしなんてこんなもんか。